2026.09.21
TikTok広告の事例20選|動画の出どころ別に公式公表値と指標の定義を解説
「TikTok広告 事例」で検索すると、バズった、再生数が伸びた、という話がたくさん出てきます。ただ、そこに並ぶ数字がどの指標を指しているのか、何と比べた数字なのかまで書かれているものは意外と少ないのが実情です。
目次
TikTok広告がやや厄介なのは、動画そのものが最大の変数になる点にあります。入札やターゲティングを詰める前に、どんな動画を、誰が作って、どこから持ってきたのかで結果が大きく変わります。それなのに事例記事の多くは、動画の出どころに触れずに数字だけを並べています。
本記事では、TikTok for Businessの公式事例ページとTikTok自身が公表した受賞発表に載っている20件を、動画をどこから持ってきたかという軸で並べ直しました。あわせて、TikTokの指標が他媒体とどう違うのかも公式ヘルプの定義から確認していきます。
自社で動画を作れるか不安な段階の方、すでに配信していて数字の読み方に迷っている方に向けた内容です。
動画を何本作るかより先に、何を成果として数えるのかを決めておきたい。そう感じている広告担当の方に向けて、malnaはTikTok向けのクリエイティブ設計と計測の整備を支援しています。相談の入口はお問い合わせフォームです。
TikTok広告の事例は動画の出どころで読み解けます
TikTok広告の事例とは、どんな動画を誰が作り、どの配信メニューに乗せた結果として何の数値が動いたのかを追える記録です。他媒体の事例と読み方が変わるのは、成果を左右する最大の変数が入札設計ではなくおすすめフィードに流れる動画そのものだからです。まずTikTokが公式に示している動画の要件を押さえ、そのうえで20件をどう並べたのかを示します。
公式が示している動画クリエイティブの推奨要件
TikTokは運用型広告向けのクリエイティブ要件を公式ヘルプで公開しています。撮影の解像度から冒頭の3秒と6秒で何を見せるかまで数値で示されているため、事例のクリエイティブを読むときの基準になります。
主な推奨内容は次のとおりです。いずれもTikTok広告マネージャーのヘルプに記載されている内容を整理したものです。
| 項目 | 公式の推奨内容 |
|---|---|
| 解像度 | 720P以上での撮影を徹底する |
| 画面比率 | 9:16の縦型に設定する |
| サウンド | サウンド・音楽の使用を基本に含める |
| つかみ | 最初の6秒間で優先的に示す |
| 訴求点 | 最初の3秒間で紹介する |
| テキスト | 1秒で10〜20文字の表示を推奨する |
| 本数 | 広告セットごとに3〜5点、キャンペーンごとの広告セットも3〜5点 |
| 更新方法 | 新しい広告セットを作るのではなく、既存の広告セットに新しいクリエイティブを追加する |
配信面ごとの推奨秒数も別ページに示されています。オークション形式のインフィード広告では21〜34秒が推奨される長さとされ、Spark Ads以外の動画広告の仕様は縦型9:16で540×960ピクセル以上、動画長は最大10分、ファイルサイズは500MB以下と定められています。
この一覧を頭に入れておくと、後述する事例のクリエイティブ設計が公式の推奨とどう重なっているかを確認しながら読み進められます。
参考:パフォーマンス広告向けのクリエイティブベストプラクティス
広告メニューの呼び方は公式の表記に合わせる必要があります
TikTok広告のメニュー名は、公式が使っている表記と一般の記事で使われている表記がずれています。事例を横断して読むときは、公式事例ページやヘルプに出てくる名称を基準にしたほうが混乱が少なくなります。
本記事の20件に出てくるメニュー名を、公式ページの表記のまま整理しました。
| 公式表記 | 位置づけ |
|---|---|
| Spark Ads | オーガニック投稿を広告として配信するネイティブ広告フォーマット |
| インフィード広告 | おすすめフィードの動画と動画の間に表示される広告 |
| ブランドオークション | 動画視聴数やリーチを目的に置く枠 |
| パフォーマンスオークション | Webサイトのコンバージョン数やアプリプロモーションを目的に置く枠 |
| オークション広告 | リーチ、トラフィック、コミュニティインタラクション、リード生成などを目的に選ぶ運用型の枠 |
| スマートパフォーマンスキャンペーン(SPC) | 手動入力を最小限にして機械学習で最適化するソリューション |
| Smart+ | 運用型広告を最適化するパフォーマンスソリューション |
| ダイナミック広告 | 複数のクリエイティブの組み合わせを一括検証して配信する仕組み |
| TikTok Pulse | プレミアム枠に配信するブランディング向けメニュー |
| Product GMV MaxとLive GMV Max | TikTok Shopの商品またはLIVEに対して流通総額の最大化を狙う仕組み |
| TopView | アプリを開いた際に他の動画より前に表示される動画広告 |
| Branded Effect | ブランド要素を含むエフェクトをユーザーが使える形で提供する仕組み |
TopViewは「ユーザーがTikTokを開いた際に表示される動画広告」で、3秒間の動画テイクオーバーからネイティブなインフィード動画体験へ移行する仕様だと公式ヘルプに書かれています。一般の事例記事でよく見る起動画面広告という表記は、公式ヘルプの見出しには出てきません。
参考:TopViewについて
この記事の20件を動画の出どころで並べた理由
本記事が事例を業種別ではなく動画の出どころで並べているのは、自社で再現するときに最初に決めるのが「その動画をどこから持ってくるか」だからです。業種が同じでも、既存投稿を転用する場合と新規に共創する場合では、必要な体制も期間もまるで違います。
20件の内訳は次のとおりです。数値は公式ページに書かれている表記のまま載せており、桁や単位をそろえる書き換えも複数期間の足し込みもしていません。
| 事例 | 動画の出どころ | 主なメニュー | 公表された代表的な数値 |
|---|---|---|---|
| CREA jewelry | 既存のオーガニック投稿 | Spark Ads | CVR44%増 |
| TANP | 既存のオーガニック投稿 | Spark Ads | CVR67%向上 |
| 昭和産業 | クリエイターの投稿 | Spark Ads | 他媒体比でCPV72%低い |
| 江崎グリコ | 当事者との共創 | ブランドオークション | 売上前年比107.8% |
| 大塚製薬 | 当事者との共創 | ブランドオークション他 | 総再生1,872万回 |
| Netflix | クリエイターとの共創 | ブランドオークション | 数値非公表 |
| 株式会社I-ne | クリエイターとの共創 | ブランドオークション | 発売2か月で100万個 |
| メルカリ | 内製の量産 | パフォーマンスオークション | 新会員登録CPA75%改善 |
| ビズリーチ | 内製の量産 | オークション広告 | 数値非公表 |
| Techouse | 内製+配信対象の絞り込み | インフィード広告 | CVR18.8% |
| クラスター | 機械への委任 | SPC | CVR78%上昇 |
| クリエイターズ・アカデミー | 機械への委任 | SPC | CPA52%削減 |
| レバレジーズ | 機械への委任 | Smart+ | CTR147%増 |
| WEGO | 機械への委任 | ダイナミック広告 | CVR2.1倍 |
| 王子製薬 | 導線の作り替え | GMV Max | 対前月比GMV4,593%増 |
| GastroduceJapan | 導線の作り替え | Product GMV Max | 対前月比GMV7,900%増 |
| 三井住友カード | 導線の作り替え | オークション広告 | ブランドリフト4指標で有意 |
| アース製薬 | 導線の作り替え | オークション広告 | フォロワー増加率231% |
| マイナビ | 配信枠の使い分け | Brand Consideration他 | 検討層1,454%増 |
| Com2uS Japan | 配信枠の使い分け | TikTok Pulse他 | 課金ユーザー27%増 |
一覧にすると、同じSpark Adsでも比較対象がインフィード広告になっているものと非Spark Adsキャンペーンになっているものがあり、そのまま並べて優劣を語れないことがわかります。個別の中身を見ていくと、その違いがさらにはっきりします。
関連記事:【2024年最新】TikTok広告の費用と種類を解説

既存のオーガニック投稿を広告に転用したTikTok広告の事例3社
Spark Adsは、すでに投稿してあるオーガニック動画をそのまま広告として配信できるネイティブ広告フォーマットです。公式ヘルプによれば、オーガニック投稿から得た視聴数・コメント・シェア・いいね・フォローのすべてが元の投稿に帰属し、最大10分までの動画を使えて動画比・解像度・ファイル形式・ビットレートの制限もありません。新しく撮る前に手元の投稿を洗い直す価値があるかどうか、3社の公表値から見ていきます。
CREA jewelry
CREA jewelryは、反応の良かった自社投稿をSpark Adsに回すことで、同時期のインフィード広告よりコンバージョン率を44%高めた事例です。金属アレルギーのある顧客も含めたすべての女性向けにジュエリーを販売するオンラインショップで、2022年後半にオーディエンス拡大を目的としてTikTokアカウントを開設しました。
検証の設計が明快です。Spark Adsと、同じおすすめフィードに出るもののプロフィールには投稿されないインフィード広告を、2週間並走させて比べています。日予算を固定して最小単価入札を使い、視聴数とエンゲージメントが高い動画を選んで自動ターゲティングに任せる形です。結果はコンバージョン率44%増、CPA26%減、コンバージョン数35.8%増、インプレッション58.8万超でした。比較対象が同時期の別フォーマットである点が、この数値の読みやすさにつながっています。
参考:ジュエリー小売店がTikTokのSpark Adsを使用してコンバージョン率の向上とインプレッション数の増加を達成
TANP
TANPは、既存ユーザーを配信対象から除外した状態でSpark Adsを検証し、コンバージョン率を67%向上させた事例です。日本最大級のオンラインギフト専門ショップで、アプリインストールを増やす最適な設定を探していた段階にありました。
工夫は2点あります。1つはカスタムオーディエンスの使い方で、過去にアプリをインストールした既存ユーザー最大5万3,000人を除外し、新規だけに費用を投じました。もう1つはクリエイティブの幅で、季節のおすすめギフト、開封動画、商品紹介、1日のVlogといった複数のスタイルを用意しています。同時期に実施した2週間の非Spark Adsキャンペーンとの比較で、コンバージョン率67%向上、CPA39%低下、インプレッション30.8万超という結果でした。
参考:オンラインギフト専門ショップがSpark Adsテストキャンペーンを実施し、67%のコンバージョン率上昇を達成
昭和産業株式会社
昭和産業は、自社ではなくクリエイターが投稿した動画をSpark Adsで増幅し、他媒体と比べた視聴単価を72%下げた事例です。天ぷら粉やホットケーキミックスを手がける食品メーカーで、保護者と子どもが一緒に楽しむホットケーキという切り口でキャンペーンを組みました。
公表されている数値のうち、確かに読み取れるのはインプレッション250万超と、他プラットフォームのベンチマークと比べたコストパービューが72%低いという2点です。動画視聴数については、ページ上部のハイライトが9万7,000超、本文が97万超と同じページ内で表記が食い違っているため、ここでは動画視聴数を引用しません。公式ページであっても数値の扱いには確認が要る一例として押さえておきたいところです。
Spark Adsは、広告に回せるオーガニック投稿がすでにあるかどうかが前提条件になります。アカウント運用と広告をつなげたい場合の土台づくりは、次の記事で扱っています。
関連記事:【2025年最新版】成功事例10選付き!ビジネスTikTokアカウント運用マニュアルと実践ノウハウ
自社にどの型が向くかは、いま手元にある素材の量で決まります。撮り溜めた動画と出演できる人の棚卸しを、malnaとご一緒に進められます。
当事者やクリエイターと共創して動画を作ったTikTok広告の事例4社
共創型のクリエイティブとは、広告主が単独で制作するのではなく、商品の使い手やクリエイターと一緒に動画を作る進め方です。4社はいずれもTikTok Ad Awards 2025 Japanで表彰されており、TikTok自身が成果と制作過程の両方を公表しています。台本をどこまで手放したかという観点で読むと、それぞれの判断が見えてきます。
江崎グリコ株式会社
江崎グリコは、台本なしで高校生と動画を共創し、セブンティーンアイスの売上を前年比107.8%まで伸ばした事例です。バラエティ豊かなフレーバーを友達それぞれの好みを尊重するきっかけとして描き、自動販売機を友達との時間を提供する場所として印象づける狙いを置きました。
着眼点は、SNSで情報が溢れる中で自分らしさに悩む高校生のインサイトです。キラキラした一面だけではない等身大の高校生を肯定する動画を目指し、徹底した共創にこだわっています。起爆剤として人気クリエイターのティザー動画と、高校生と同じフォーマットの別CMも制作しました。公表値は1985年の発売開始以来で過去最高となる売上前年比107.8%、参加高校生への調査でNPSスコアがプロジェクト前後で86ポイント上昇、広告認知率が自社過去実績比で約244%です。
大塚製薬株式会社
大塚製薬は、吹奏楽の全13パートを主役にした演奏動画を作り、総再生数1,872万回を記録した事例です。受験生応援で知られるカロリーメイトが、卒業という節目にも寄り添う姿勢を伝えるブランディング施策として実施しました。
クリエイティブの設計が細かいところまで詰められています。縦型を活かして画面下部に実際の楽譜を表示し、1分を超える動画でも没入感を保つ作りにしました。各楽器あるあるを盛り込むことで共感とコメントを誘発する意図も置いています。広告として配信したのは13本すべてではなく5本で、演奏人口の多い楽器と珍しい楽器に絞り、認知拡大の入口として使いました。公表値は総再生1,872万回、平均300コメント、保存4,450件、フォロワー約4倍、平均視聴時間約2倍、楽譜のダウンロード159,741件です。
Netflix
Netflixは、作品紹介系のクリエイターをあえて起用しないという選択によって、シリーズ「三体」のエンゲージメント率を通常より高い水準に引き上げた事例です。複雑な作品というハードルに対し、原作小説のコアファン以外も巻き込んでライト層の興味を喚起する目標を置いていました。
起用したのは、宇宙、物理、SF、ミステリーといった作品テーマと親和性がありつつ、映画紹介とは距離のあるクリエイターです。映画紹介系はやらされ感が出やすいという判断から避けたと明記されています。プロモーション感のなさと意外性のあるコラボをフックに好奇心を喚起する設計です。ただし、この事例で公表されているのはエンゲージメント率が通常よりはるかに高い数値を記録したという記述までで、具体的な数値は示されていません。
参考:成功事例:Netflix|Netflixシリーズ「三体」
株式会社I-ne
I-neは、アイドル6名が同時に寝落ちするTikTok LIVEを軸に、発売2か月で累計販売100万個を突破した事例です。新商品のYOLU ドリーミングバスタブレットについて、企業発信ではなく消費者のポジティブな発話を生み出すことを重視しました。
配信設計に思い切りがあります。ライブ後の23時30分からTikTok LIVEを実施し、全員パジャマ姿で就寝前の空気感を演出しました。6名同時配信かつ同時寝落ちという、あえて不親切な設計にすることでファン同士の情報共有を促しています。TikTok上の反応をリアルタイムで観察しながら配信時間や投稿導線を調整した点も公表されています。公表値は合計発話数21,200投稿以上、発売2か月で販売数100万個突破、TikTok再生回数740万回です。この施策はTikTok Ad Awards 2025 Japanのグランプリに選ばれました。
参考:成功事例:株式会社I-ne|YOLU ドリーミングバスタブレット
参考:2024年の広告実績を表彰する「TikTok Ad Awards 2025 Japan」全5部門の部門賞とグランプリを発表
関連記事:伸びるTikTok動画とは?5つの要素から徹底分析
広告感を消した動画を内製で回したTikTok広告の事例3社
内製型のクリエイティブ運用とは、外部に制作を委ねず社内で動画を作り、反応を見ながら短い周期で差し替えていく進め方です。3社に共通するのは、広告らしさをどう消すかを言語化してから量産に入っている点です。公式が推奨する広告セットあたり3〜5点というクリエイティブ本数の考え方とも重なります。
株式会社メルカリ
メルカリは、Z世代に響く広告の型を4つに整理してから量産に入り、新会員登録のCPAを75%改善した事例です。Z世代という新たなユーザー層を十分に開拓できていない課題に対し、メルカリ×GenZプロジェクトを立ち上げました。
出発点は調査です。GenZが思う好意的な広告と苦手な広告それぞれの理由を調べ、与えるべき印象をネタ系やシュールなおもしろ、おしゃれなトレンド情報、共感できるあるあるコンテンツ、生活に役立つアイデアの4種に分類しました。検証の結果おもしろ系が勝ち傾向だと判明したため、リズム系やコント系の演出を優先度高く投入しています。公表値は、配信金額を446%増やしながら新会員登録CPAを75%改善、18〜24歳のCV割合がプロジェクト前後で112%増加という内容です。
株式会社ビズリーチ
ビズリーチは、UGC風の動画を内製化して高速でPDCAを回し、転職市場でのユーザー獲得を拡大した事例です。新たなターゲット層へのリーチ拡大と会員獲得効率の改善という2つの課題を同時に抱えていました。
使ったメニューはオークション広告のリード生成目的です。メッセージ設計とTikTokのプラットフォーム特性を活かして配信を効率化したと記載されています。注目したいのは、クリエイティブを外注せず内製化した点で、これが検証サイクルの速さにつながったと読めます。一方で、この事例ページには具体的な数値が掲載されていません。成果が定性的な記述にとどまる事例も公式ページには存在するため、数字を探しにいく前に何が公表されているかを確認する必要があります。
株式会社Techouse
Techouseは、インフィード広告に配信対象の絞り込みを組み合わせ、求人応募のコンバージョン率18.8%を達成した事例です。工場と製造業に特化した求人サイトのジョブハウス工場で、若年層を含む新規ユーザーへのリーチと応募数増加を狙っていました。
配信の中身は2段構えです。おすすめフィードの動画と動画の間に60秒の広告を流すインフィード広告で接点を作り、フィード内の他の投稿と同じようにユーザーの反応、コメント、共有を許可しました。そのうえでカスタムオーディエンスと類似オーディエンスを使い、過去30日以内に自社サイトを訪問した18歳から44歳を配信対象に設定しています。1か月のキャンペーンでインプレッション36万8,000超、クリック1,500超、コンバージョン率18.8%という結果でした。
参考:日本の求人サイトが、TikTok広告で戦略的なオーディエンスターゲティングを活用し、工場・製造業職種の応募において高いコンバージョン率を達成
クリエイティブの組み合わせを自動最適化に委ねたTikTok広告の事例4社
自動最適化型のソリューションとは、入稿した複数のクリエイティブとテキストの組み合わせを機械学習が検証し、成果の出る組み合わせに配信を寄せていく仕組みです。TikTokにはスマートパフォーマンスキャンペーン、Smart+、ダイナミック広告といった名称の異なるメニューがあり、公表されている比較対象もそれぞれ違います。人が手を入れる範囲をどこまで狭めたかという観点で4社を見ていきます。
クラスター株式会社
クラスターは、動画29本と広告テキスト5種を入稿して機械学習に任せ、コンバージョン率を78%上昇させた事例です。最大10万人が同時に利用できるメタバースプラットフォームclusterを運営し、Z世代へのリーチ向上とアプリインストールの拡大を目指していました。
選んだのはスマートパフォーマンスキャンペーンです。配信する国や地域とマーケティング目的の選択、予算設定、クリエイティブ素材のアップロードだけでキャンペーンを始められる仕組みで、目的にアプリインストールを設定しました。ここで効いたのが運用姿勢で、学習期間をスムーズに終えるため頻繁な設定変更を避ける判断をしています。過去に同社が実施した非SPCキャンペーンとの比較で、コンバージョン率78%上昇、クリック率18%上昇、インストール単価26%減少、インプレッション13万6,000超、コンバージョン数31%増加でした。
参考:日本のメタバースプラットフォーム「cluster」、TikTok広告のスマートパフォーマンスキャンペーンでCVRが78%上昇
クリエイターズ・アカデミー
クリエイターズ・アカデミーは、キャンペーン設定にかけていた時間をクリエイティブ制作に振り替え、新規ユーザー獲得のCPAを52%削減した事例です。手描きアニメーション制作やシナリオ作成のコースを提供するクリエイター育成会社で、ブランド認知の向上と適切なオーディエンスとのエンゲージメントを求めていました。
導入したのはスマートパフォーマンスキャンペーンで、複数のクリエイティブとテキストを自動的にマッチングさせてオークション入札を行う形です。手動設定の時間を削ったことで、より多くの時間を広告コンテンツの制作に回せるようになったと記載されています。過去に実施した非SPCキャンペーンとの比較でCPA52%削減、コンバージョン率4.5%、インプレッション20万8,000以上。加えて、他の広告配信プラットフォームのキャンペーンと比べて68%低いCPAを記録しました。
参考:TikTok広告のスマートパフォーマンスキャンペーンを活用し、クリエイター育成企業が新規ユーザー獲得CPAを52%削減
レバレジーズ株式会社
レバレジーズは、同じ訴求内容で自動最適化と手動設定を同時に配信して比べ、クリック率147%増という差を確認した事例です。医療分野のサービスであるレバクリについて、Smart+のCost Capと手動設定のキャンペーンを並走させました。
この事例の価値は検証の組み方にあります。訴求内容をそろえ、同じ期間に配信したうえで比較しているため、差分をクリエイティブではなく配信ロジックの違いとして読めます。使ったメニューはオークション広告のWebサイトのコンバージョン数目的で、Smart+はTikTok運用型広告を最適化するパフォーマンスソリューションだと注記されています。公表値は、Manual Campaign(最大配信入札)と比べてクリック率147%増、CPA34%減です。同条件での並走比較という形は、自社で検証するときにも真似しやすい設計といえます。
WEGO
WEGOは、ダイナミック広告と計測環境の整備を組み合わせ、コンバージョン率を2.1倍に上げた事例です。競争の激しいファッション業種で、ターゲットオーディエンスを惹きつけるクリエイティブ作成に苦心していました。
打ち手は2つに分かれます。1つはダイナミック広告の活用で、入稿した複数のクリエイティブ、広告テキスト、CTAボタンから自動生成された組み合わせを継続的に評価させ、クリエイティブ摩耗を防ぎました。もう1つは計測で、Shopify向けのTikTok Pixelを設置して在庫、顧客、売上データを連携し、支払い完了だけでなくページ閲覧やカートへの追加といったマイクロイベントに注力する方針を立てています。過去のベンチマークと比べて直帰率10%低下、ページセッション数1.5倍、コンバージョン率2.1倍という結果でした。
参考:ファッション小売企業が、TikTok広告を活用して、ウェブサイトでのページ内セッション数とマイクロコンバージョン数を増加
自動最適化に寄せる場合も、寄せた結果を読むには学習の仕組みへの理解が必要になります。おすすめフィードの挙動については次の記事で整理しています。
関連記事:TikTokアルゴリズムの基礎から運用ポイント徹底解説
動画を何本用意して何を機械に任せるかという配分は、検証の期間と指標の定義から設計します。手元の素材で何から試せるかを整理したいときは、malnaへお知らせください。
動画の先にある導線と配信枠を変えたTikTok広告の事例6社
動画の中身ではなく、視聴した人が次に進む先や広告が出る枠を変えることで成果を動かした事例も公表されています。TikTok Shopの購買導線、アプリ内で完結する応募キャンペーン、プレミアム枠への配信などが該当します。6社の公表値を並べると、伸び率の大きさが導線の作り替えによるものだと読み取れます。
王子製薬株式会社
王子製薬は、TikTok Shopの導入とGMV Maxの活用によって、流通総額を対前月比で4,593%増やした事例です。自社EC以外の販路拡大と若年層へのリーチを目的に、Z世代を含む幅広い世代が使うTikTokに着目しました。
進め方の軸は、短尺動画の商品訴求力とシームレスな購買体験を組み合わせる点にあります。Shop機能と広告を掛け合わせ、リアルタイムでの販促を実施しました。海外市場でのライブコマースの成功事例を背景に、国内で先行して取り組むことで先駆的なポジションを確立する狙いも公表されています。使ったメニューはProduct GMV Max、Live GMV Max、オークション広告のコミュニティインタラクション(フォロー)です。公表値は対前月比のGMV成長率4,593%増と、TikTok Shop広告経由のROAS4.2倍でした。
GastroduceJapan株式会社
GastroduceJapanは、クリエイター動画と自社制作動画をProduct GMV Maxに集約し、流通総額を対前月比で7,900%増やした事例です。下町バームクーヘンの販路拡大と若年層へのリーチを目的にTikTok Shopを導入しました。
特徴は着手の早さです。食品ジャンルのセラーの中でいち早くGMV Maxを活用し、Shop機能と広告配信を組み合わせて販促を実施しています。素材面では、これまでの自社制作ショート動画とクリエイター動画を組み合わせ、広告用アフィリエイトクリエイティブを活用しました。公表値はGMV成長率が対前月比7,900%増、GMV MaxのROIが1,500%、単月の広告経由売上が900万円超です。対前月比という比較の起点が置かれているため、伸び率の大きさは基準月の水準にも左右されると読む必要があります。
参考:成功事例:GastroduceJapan株式会社|下町バームクーヘン
三井住友カード株式会社
三井住友カードは、TikTok内で完結するインスタントウィンキャンペーンによって、ブランドリフト調査の4指標すべてで有意なリフトを確認した事例です。若年層や初めてクレジットカードを持つ層の新規会員獲得を目的に実施しました。
使った仕組みはFanSpot byGMO for TikTokで、TikTokから離脱せずに応募が完結する設計です。広告側はオークション広告のWebサイトのコンバージョン数目的、リーチ目的、コミュニティインタラクションを組み合わせています。成果として社名検索数とフォロワー数の増加が挙げられ、ブランドリフト調査では広告認知、キーワード想起、ブランド想起、意向の4指標すべてで有意なリフトが確認されました。なお、ページ上部の数値ハイライトは後述のマイナビの事例ページと同一の表示になっており、どちらの実績かをページ上で判別できないため、本記事では数値の引用を控えます。
参考:成功事例:三井住友カード株式会社|三井住友カード(NL)
アース製薬株式会社
アース製薬は、製品紹介中心の動画から応募型のキャンペーン設計へ切り替え、フォロワー増加率231%を記録した事例です。バブルーンの使用者層を拡大したいという狙いから、若年層の利用が多いTikTokで商品の魅力とブランド価値を伝えようとしていました。
出発点は失敗の振り返りです。過去は製品紹介が中心で広告色が強い内容になり、視聴率が伸び悩んでいたと明記されています。そこでインスタントウィンを使ったプレゼントキャンペーンを実施し、オークション広告のリーチ、コミュニティインタラクション(フォロー、TikTokページ訪問)、トラフィック(クリック)を組み合わせました。公表値はフォロワー増加率231%、プラットフォーム平均値と比べたいいね数4.7万、キャンペーン参加数1,939件です。フォロワー数は応募数以上に増え、2倍以上になったとも記載されています。
株式会社マイナビ
マイナビは、目的の異なる3つのメニューを同時に配信し、検討層のユーザー数を1,454%増やした事例です。マイナビバイトの潜在層と検討層に同時にアプローチする狙いで設計されました。
配信したのはPerformance AuctionのTraffic目的と、Brand Considerationの通常配信およびTraffic最適化です。複数のメニューを並行させることで、Brand ConsiderationのTraffic最適化で単価を抑えながら検討層を獲得し、同時に潜在層にもアプローチできたと記載されています。さらにBrand Considerationの通常配信では、潜在層から検討層への移行単価を下げられたという記述もあります。公表値はConsideration Userが11,328から164,718へ増加(1,454%UP)、Awareness Userが277,754から1,864,691へ増加(671%UP)です。実数が併記されているため、自社の規模と照らし合わせやすい事例といえます。
株式会社Com2uS Japan
Com2uS Japanは、プレミアム枠でのブランディングと獲得型の配信を並走させ、課金ユーザー数を27%増やした事例です。日本プロ野球機構の公式ライセンスを取得した新作ゲームのプロ野球RISINGを、2025年3月にリーグ開幕シーズンに合わせてリリースしました。
構成は認知と獲得の2階建てです。認知側ではTikTok Pulseを使って高品質なゲーム内トレーラーを配信し、日本市場のベンチマークと比べて広告想起率2.2倍、タイトル認知度3.4倍という結果を得ています。獲得側ではファネルの段階に合わせてメッセージを変え、WBC優勝監督を起用した広告でインストール単価を市場平均より60%以上削減しました。効果は課金フェーズまで波及し、課金ユーザーの増加率27%、広告接触者の課金率48.1%、アプリ内課金率42%が公表されています。なおTikTok Pulseは日本ではβ版テスト中(2025年7月時点)との注記が付いています。
参考:成功事例:株式会社Com2uS Japan|プロ野球RISING

TikTok広告の事例の数値をそのまま自社の見込みに使えない理由
TikTok広告の公表値を自社の見込み数値に転用できないのは、指標の定義がTikTok独自であり、比較の起点も事例ごとに異なるためです。倍率の大きさに目を奪われる前に、その数字が何を分母にした値なのかを確認する必要があります。公式ヘルプの定義に沿って、つまずきやすい3点を整理します。
コンバージョン率の分母はインプレッションです
TikTok広告マネージャーのコンバージョン率は、公式ヘルプで「すべてのインプレッションに対してのコンバージョン発生率」と定義されています。クリックを分母に置く一般的なコンバージョン率とは計算の土台が違います。
同じヘルプページには、クリックを分母にする指標が「コンバージョン率(CVR、クリック)」として別に用意されており、こちらは「すべての誘導先クリックに対してのコンバージョン発生率」と定義されています。つまり同じCVRという略称でも、どちらを指しているかで水準がまるで変わります。事例ページに出てくるCVRの数値を他媒体の管理画面の数値と並べても、意味のある比較にはなりません。社内資料に転記するときは、どちらの定義のCVRなのかを併記しておくと後の混乱を避けられます。
参考:Basic Data Reporting Metrics
動画視聴の指標は複数あり、どれを指すかで数字が変わります
動画の見られ方を表す指標は1つではなく、TikTokの公式ヘルプには到達点の違う複数の指標が定義されています。事例の再生数や視聴数を読むときは、どの指標なのかを特定する必要があります。
公式ヘルプに記載されている主な定義は次のとおりです。
| 指標 | 公式の定義 |
|---|---|
| 動画の再生完了数 | 動画が100%(最後まで)再生された回数 |
| 動画の25%再生数 | 動画の長さの25%以上が再生された回数 |
| 動画の50%再生数 | 動画の長さの50%以上が再生された回数 |
| 動画の75%再生数 | 動画の長さの75%以上が再生された回数 |
| 6秒フォーカス視聴数 | 動画が6秒以上(6秒以下の動画の場合は最後まで)視聴された回数 |
| 平均視聴時間(1人あたり) | 1ユーザーあたりの動画の平均再生時間(リピート視聴の時間を含む) |
| 動画視聴1回あたりの平均視聴時間 | 動画再生1回あたりの平均再生時間(リピート視聴の時間を含む) |
同じ再生数という言葉でも、25%再生を数えているのか最後まで見られた回数を数えているのかで桁が変わります。カロリーメイトの総再生1,872万回のような大きな数値も、どの定義かを確認せずに自社の目標に置き換えると危うい使い方になります。
参考:Video Play Reporting Metrics
比較の起点は事例ごとに違います
公表されている改善率は、何と比べた数値かが事例ごとに異なります。同じ何パーセント改善という表記でも、比較の相手が別フォーマットなのか、過去の自社キャンペーンなのか、他媒体なのかで受け取り方は変わります。
本記事で扱った事例の比較の起点を整理すると、次のようになります。
| 事例 | 比較の起点 |
|---|---|
| CREA jewelry | 2週間同時期に実施したインフィード広告キャンペーン |
| TANP | 同時期に実施した2週間の非Spark Adsキャンペーン |
| 昭和産業 | 他プラットフォームのベンチマーク |
| クラスター | 過去に同社で実施した非SPCキャンペーン |
| クリエイターズ・アカデミー | 過去に同社で実施した非SPCキャンペーン、および他プラットフォーム |
| レバレジーズ | 同時期に同じ訴求で配信した手動設定キャンペーン |
| WEGO | 過去のベンチマーク |
| メルカリ | GenZプロジェクト前後 |
| 江崎グリコ | 前年、および自社過去実績 |
| GastroduceJapanと王子製薬 | 対前月 |
| Com2uS Japan | 日本市場のベンチマーク、および市場平均 |
| アース製薬 | プラットフォーム平均値 |
さらに、公式ページ内でも表記が揺れることがあります。昭和産業の事例は同一ページ内で動画視聴数の桁が異なり、三井住友カードとマイナビの事例ページには同じ数値ハイライトが表示されていました。公式だからそのまま使えるという前提を置かず、詳細セクションの記述と突き合わせて読む姿勢が要ります。

よくある質問
TikTok広告の事例を調べたあとに残りやすい疑問を5つ整理しました。数値の使い方、メニュー名の混乱、オーガニック投稿がない場合の進め方、動画の長さ、他媒体との比較という順で扱います。回答はTikTokが公表した範囲の情報にとどめています。
TikTok広告の事例の数値をそのまま自社の目標に使えますか
そのままでは使えません。20件の比較の起点は別フォーマット、過去の自社キャンペーン、他媒体、前月、前年とばらついており、横に並べる前提が成り立たないためです。事例から借りるのは動画の作り方と検証の組み方にとどめ、目標の水準は自社の実測値から置いてください。
TikTok広告のメニュー名が記事によって違うのはなぜですか
TikTokがメニューの名称と提供形態を更新しているためです。公式事例ページではブランドオークション、パフォーマンスオークション、オークション広告、Spark Ads、スマートパフォーマンスキャンペーン、Smart+、GMV Maxといった表記が使われています。一般の記事で見かける起動画面広告のような呼び方は公式ヘルプの見出しには出てこないため、公式表記で確認するのが確実です。
オーガニック投稿がない状態でもSpark Adsの事例のような成果は狙えますか
Spark Adsはオーガニック投稿を広告として配信する仕組みのため、配信できる投稿がない状態では使えません。TANPやCREA jewelryは反応の良かった自社投稿を選んで広告に回しており、昭和産業はクリエイターの投稿を使っています。自社投稿がない場合は、まずアカウントで反応を確かめる工程か、クリエイターとの制作を先に置く必要があります。
TikTok広告の動画は何秒くらいが推奨されていますか
公式ヘルプでは、オークション形式のインフィード広告について21〜34秒が推奨される長さとされています。あわせて、つかみは最初の6秒間で優先的に示す、訴求点は最初の3秒間で紹介する、テキストは1秒で10〜20文字の表示を推奨するという指針も示されています。Spark Ads以外の動画広告の仕様上の上限は10分です。
TikTok広告の事例のコンバージョン率を他の媒体と比べてよいですか
そのまま並べると誤読につながります。TikTok広告マネージャーのコンバージョン率は、公式ヘルプで「すべてのインプレッションに対してのコンバージョン発生率」と定義されており、クリックを分母にする指標は別に用意されているためです。比較したい場合は、どちらの定義の数値なのかをそろえてから並べてください。
まとめ
TikTok広告の事例を自社に引き寄せる作業は、動画をどこから持ってくるかを決めるところから始まります。ここで並べた20件は、企業名も使ったメニューも公式ページを開いて確かめられる状態にあり、社内で出どころを問われても答えられます。
20件を動画の出どころで並べ直すと、打ち手の順番が見えてきます。既存のオーガニック投稿を転用する道、当事者やクリエイターと共創する道、内製で量産して回す道、組み合わせを機械に委ねる道、動画の先の導線と配信枠を変える道です。自社にどの素材と体制があるかで、入れる順番は変わります。
もう一方の論点は数値の読み方でした。TikTokのコンバージョン率はインプレッションを分母に置き、動画視聴の指標は到達点ごとに複数あり、比較の起点は事例ごとに異なります。公式ページの中でも表記が食い違う箇所があった以上、分母が何かを書き添えないまま数値を社内に回さないことが実務では欠かせません。
まずは手元の動画を1本開いて、冒頭3秒で何を見せているか、尺が21〜34秒に収まっているかを確かめてみてください。そのうえで検証の組み方や指標の定義まで踏み込みたくなったら、malnaまで声をかけてください。
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