2026.10.12

AI

人材派遣業界のAI活用事例!マッチングや契約業務を効率化する方法

「コーディネーターが書類と連絡に追われて、スタッフのフォローまで手が回らない」
「登録スタッフの個人情報を、生成AIに入力してよいのか分からない」

AIエージェント導入支援

こんなお悩みはありませんか。

AIを使えば楽になりそうだと分かっていても、派遣先とスタッフの対応に追われる毎日では、どの業務から試すかを考える時間も取りにくいですよね。

この記事では、マッチングから契約更新までの派遣業務でAIを使える場面と、派遣法を守って導入する手順を、事例とあわせてわかりやすく解説します。

自社のどの業務をAIに置き換えられるかの見立ては、malnaのAIエージェント構築支援で、業務の棚卸しと診断から無料でご相談いただけます。

人材派遣業界でAI活用が求められる背景

人材派遣のAI活用とは、派遣会社の募集、マッチング、就業中のフォロー、契約更新といった業務の一部を、生成AIやAIエージェントに任せることです。

AI活用が求められる背景には、コーディネーター1人が受け持つ業務の幅が広いことと、生成AIを仕事で使う人が増えていることがあります。

人材派遣とは、派遣会社が雇用した労働者を、派遣先の企業の指揮命令のもとで働かせる仕組みのことです。

派遣会社のコーディネーターは、派遣先から受けた求人の要件を聞き取り、登録スタッフの中から候補を探して、仕事を紹介します。

就業が決まった後も、就業条件の明示、問い合わせへの返答、評価の共有、契約更新の確認と、スタッフ1人との連絡が長く続きます。

人材紹介は、求職者が紹介先の企業に雇われた時点で、紹介会社の主な業務が終わります。

人材派遣は、派遣会社がスタッフを雇用し続けるため、就業が続く間の事務とやり取りが多くなります。

比べる点 人材派遣 人材紹介
スタッフを雇用する会社 派遣会社 紹介先の企業
成約後の主な業務 就業中のフォロー、契約更新 入社で主な業務が終わる
AIを使える業務の例 問い合わせ対応、抵触日の確認 求人票、推薦文の作成

一方で、生成AIを仕事で使う人は増えています。

生成AIとは、指示の文章に応じて、文章や画像などを作るAIのことです。

パーソル総合研究所が2026年2月に公表した調査では、全国の就業者のうち、生成AIを業務で使っている人は32.4%と推計されています。

同じ調査で、生成AIを使っているタスクの所要時間は、使わないときと比べて平均16.7%、週あたり26.4分短くなっていました。

ただし、生成AIの利用者のうち、業務時間が実際に減った人は約25.4%でした。

項目 調査結果
生成AIを業務で使う人の割合 就業者の32.4%(推計約1,840万人)
生成AIを使うタスクの所要時間の変化 平均16.7%短縮(週26.4分)
調査の時期 2025年10月
本調査の対象 正規雇用者3,000人
業務時間が減った利用者の割合 約25.4%

16.7%は、業務全体ではなく、生成AIを使ったタスクだけを比べた数字です。

派遣会社に置き換えると、求人票の下書きや連絡文の作成のように、生成AIを使うと決めた作業の時間が短くなる、と読むのが正確です。

求人の要件の聞き取りや、スタッフとの面談のように、人と話す時間までがそのまま減るわけではありません。

使う作業を決めて時間を測らないと、AIを入れても業務時間が減ったかどうかを確かめられません。

参考:「生成AIとはたらき方に関する実態調査」を発表 生成AIの活用で業務時間は平均16.7%削減|パーソル総合研究所

マッチングから契約更新までのAI活用場面

人材派遣の業務でAIを使える場面は、コーディネーターの業務の流れに沿って、次の6つに分けられます。

  • マッチングに使う求人要件とスキルシートを、項目をそろえた形に書き出す
  • 求職者への案件紹介と連絡文を、条件に合わせて下書きする
  • 就業条件の明示と就業開始前の案内文を、契約の内容から下書きする
  • 派遣スタッフからの問い合わせに、社内の規程をもとに一次回答する
  • 派遣先の評価とフォロー面談の記録を、要点に分けて残す
  • 契約更新と抵触日の確認を、期限の一覧から漏れなく進める

どの場面でも、AIが作るのは下書きや一覧であり、送る判断と最終確認はコーディネーターが行います。

場面 AIに任せる作業 人が判断すること
求人要件とスキルシート 項目ごとの書き出し 要件の優先順位
案件紹介と連絡文 文面の下書き 紹介する案件の選定
就業条件の明示 案内文の下書き 契約内容との一致
問い合わせ対応 規程にもとづく一次回答 個別の事情への返答
評価とフォロー面談 記録の要約 改善の方針
契約更新と抵触日 期限の一覧化 更新するかどうか

マッチングに使う求人要件とスキルシートの整理

マッチングの作業時間を短くするには、求人要件とスキルシートを、同じ項目で書き出すことから始めます。

派遣先から聞き取った求人の要件は、電話のメモやメールの文面のまま残りやすく、担当者ごとに書き方が違います。

生成AIに聞き取りのメモを渡すと、業務の内容、必要な経験、使うソフト、勤務時間、就業場所といった項目ごとに書き出せます。

登録スタッフの面談記録も同じ項目で書き出すと、求人とスタッフの条件を項目ごとに見比べられます。

項目 求人要件で書く内容 スキルシートで書く内容
業務の内容 担当する作業と量 経験した作業と期間
使うソフト 求められるソフトと使い方 使えるソフトと使った場面
勤務時間 始業と終業の時刻、残業の有無 働ける曜日と時間帯
就業場所 最寄り駅と通勤の条件 通勤できる範囲

項目の名前を求人とスキルシートでそろえておくと、AIに照合させたときに、条件に合う点と合わない点を項目ごとに出せます。

書き出した結果は、聞き取った内容と違う点がないかを、担当者が元のメモと見比べて直します。

AIの役割は候補を広く拾うことであり、スタッフを不採用にする判断には使いません。

候補の中から誰に声をかけるかは、本人の希望や通勤の事情まで知っているコーディネーターが決めます。

求職者への案件紹介と連絡文の下書き

求職者への案件紹介は、条件を伝える文面を毎回一から書くため、生成AIで下書きを作ると時間を短くできる作業です。

求人要件の項目と、紹介する相手の希望条件をAIに渡し、合う点と確認する点を分けた紹介文を下書きさせます。

面談日程の調整や、書類の提出の依頼のように、決まった内容を伝える連絡文も、ひな形を作っておけば下書きを任せられます。

送る前には、時給、勤務時間、就業場所の数字が求人要件と一致しているかを、担当者が確かめます。

連絡が遅れると、求職者がほかの派遣会社の仕事に決めてしまう場合があるため、下書きの速さは紹介の機会を逃さないことにつながります。

就業条件の明示と就業開始前の案内

就業条件の明示は、労働者派遣法34条で、派遣会社が派遣を始める前に派遣スタッフへ行うと決められている手続きです。

明示する事項には、業務の内容、就業場所、派遣期間、始業と終業の時刻、抵触日などが含まれます。

生成AIは、派遣契約の内容をもとに、スタッフ向けの案内文や、初日の持ち物と集合場所を伝える文面の下書きに使えます。

明示する事項は派遣契約の内容と一致させるため、AIが作った文面は契約書と1項目ずつ照合します。

就業条件明示書の様式や交付の方法は、社内で決めている手順を変えずに使います。

参考:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律|e-Gov法令検索

派遣スタッフからの問い合わせ対応

派遣スタッフからの問い合わせには、給与の支払日、有給休暇の申請方法、書類の提出先など、社内の規程を見れば答えられる質問が含まれます。

社内の規程や手続きの資料を読み込ませたAIのチャットを用意すると、営業時間外でもスタッフが自分で答えを調べられます。

問い合わせの例 AIの扱い
給与の支払日を知りたい 規程をもとに答える
有給休暇の申請方法を知りたい 手続きの手順を答える
書類の提出先を知りたい 提出先と期限を答える
職場で困っていることを相談したい 答えずに担当者へつなぐ
次の契約を続けたくない 答えずに担当者へつなぐ

AIが答える範囲は、規程に書いてある手続きに限ります。

職場の人間関係や体調、契約の継続に関わる相談は、AIが答えずに担当のコーディネーターへつなぐ設定にします。

規程に載っていない質問や、改定の途中の手続きを聞かれたときも、AIは答えずに担当の窓口と受付時間を示します。

規程を改めたときは、AIに読み込ませた資料も同じ日に入れ直し、古い手続きを答えないようにします。

派遣先の評価とフォロー面談の記録

派遣先からの評価とフォロー面談の記録は、スタッフの定着と、次の仕事の紹介に使う情報です。

派遣先の担当者は人事評価に慣れているとは限らず、評価の意図を文章でスタッフに伝えにくい場合があります。

フォロー面談の記録も、担当者ごとに書き方が違うと、担当が替わったときに経緯を追えません。

生成AIに面談のメモを渡すと、仕事の状況、困っていること、派遣先に伝えること、次回までの対応に分けた記録を下書きできます。

評価や記録の下書きは、スタッフ本人の言葉と違う表現がないかを、面談した担当者が読み直してから保存します。

契約更新と抵触日の確認

契約更新と抵触日の確認は、期限を1件でも見落とすと派遣を続けられなくなる、間違いが許されない業務です。

抵触日とは、派遣を受け入れられる期間の上限を超える最初の日のことです。

労働者派遣法では、派遣先の同じ事業所で派遣を受け入れられる期間は原則3年で、同じスタッフを同じ組織単位に派遣できる期間も3年が上限です。

無期雇用の派遣スタッフなど、期間の制限がかからない例外もあります。

例外に当たるかは、雇用契約と派遣契約の記録で担当者が判断し、AIには判定させません。

派遣先は、新しい派遣契約を結ぶ前に、事業所単位の期間制限に抵触する最初の日を、派遣会社に通知しなければなりません。

通知がない場合、派遣会社は派遣契約を結べません。

期間の制限 単位 期間
派遣先の事業所単位 派遣先の事業所ごとの業務 原則3年
個人単位 同じスタッフと同じ組織単位 3年

派遣先は、過半数労働組合などから意見を聴く手続きを取れば、事業所単位の派遣可能期間を延長できます。

延長した場合、派遣先は新しい抵触日を派遣会社に通知するため、通知を受けた日付で一覧を直します。

AIは、契約の一覧から、更新の確認が近い契約と、抵触日が近い契約を抜き出し、週ごとの確認リストを作る作業に使えます。

抵触日は、派遣先から通知された日付と契約の記録を正とし、AIの出力だけで判断しません。

更新するかどうかは、スタッフの希望と派遣先の意向を聞いたうえで、コーディネーターが決めます。

参考:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律|e-Gov法令検索

マッチングから契約更新までのAI活用場面

AIエージェントで自動化できる業務の範囲

AIエージェントとは、指示を受けて、複数の作業を順番に進めるAIの仕組みのことです。

文章を1回作って終わる生成AIと違い、問い合わせの受付から担当者への振り分け、日程の調整までを、1つの流れとして進められます。

派遣会社で自動化しやすいのは、手順が決まっていて、人が判断する箇所が少ない業務です。

例として、登録希望者からの問い合わせを自動化する流れを示します。

順番 AIエージェントが行う作業 人が確認する箇所
1 問い合わせの内容を読み、登録希望か仕事の相談かを分ける 分け方の基準を決める
2 希望の職種と地域から、担当の営業所を決める 振り分けの結果を週ごとに見直す
3 担当者の空き時間から、面談の候補日を送る 面談の前日に予定を確かめる
4 面談の内容を、スキルシートの項目に書き出す 面談した担当者が内容を直す

自動化する範囲を決めるときは、人が確認する箇所を先に決めてから、AIエージェントに任せる作業を決めます。

スタッフの採否、紹介する案件の選定、契約の更新のように、人の生活に関わる判断は、AIエージェントの作業に入れません。

AIエージェントは、給与の計算や契約の管理に使う既存のシステムとつなぐと、作業を進められる範囲が増えます。

ただし、つなぐシステムが増えるほど、AIが読み書きできる個人情報も増えるため、アクセスできる範囲と記録の残し方を、構築の前に決めます。

AIエージェントに与える権限は、閲覧だけ、下書きの作成まで、送信まで、システムの更新までの4段階に分けて決めます。

最初は閲覧と下書きの作成までに限り、送信やシステムの更新は担当者が行います。

AIエージェントが行った作業は、誰の依頼で、どの情報を読み、何を送ったかを記録に残します。

記録があれば、スタッフから問い合わせを受けたときに、AIがどう対応したかを担当者があとから確かめられます。

最初は、AIエージェントが作った返信を担当者が承認してから送る形で始め、間違いが少ないと確かめた作業から、承認を外していきます。

AIを導入するメリット

AIを導入するメリットは、派遣会社の業務のうち、文章を書く作業と、期限を追う作業にかかる時間を短くできることです。

主なメリットは、次の3つです。

  • コーディネーターの事務時間を減らし、スタッフや派遣先と話す時間に回せる
  • 求職者への連絡を早くし、紹介の機会を逃しにくくなる
  • 担当者による品質の差を小さくし、引き継ぎを楽にできる

どのメリットも、導入の前後で同じ数字を測らないと、効果があったかを判断できません。

メリット 測る数字
事務時間の削減 1件の書類作成にかかる時間
連絡の早さ 応募から最初の連絡までの時間
品質の差の縮小 書類の差し戻しの回数

コーディネーターの事務時間の削減

AIで減らせる事務時間は、求人票、連絡文、面談記録、案内文のように、毎日くり返し書く文章にかかる時間です。

1件ごとの時間は数分でも、担当するスタッフと派遣先の数をかけると、1か月分を合計すると、まとまった時間になります。

減った時間は、スタッフのフォロー面談や、派遣先への訪問のように、人が話すことで成果が出る業務に回せます。

効果を確かめるには、導入前に、1件の書類作成にかかる時間を数日分記録しておきます。

求職者への連絡の早さ

求職者への連絡の早さは、応募から最初の連絡までの時間で測ります。

派遣の仕事を探す人は、複数の派遣会社に登録している場合があり、先に連絡した会社の仕事に決めることがあります。

応募の受付を知らせる通知と面談の候補日だけを自動で送るようにすると、営業時間外の応募にも翌朝を待たずに返信できます。

求人の条件を伝える連絡文は、AIで下書きを早く用意し、時給や勤務時間の数字を担当者が確かめてから送ります。

担当者による品質の差の縮小

担当者による品質の差は、スキルシートや面談記録の書き方が人によって違うことから生まれます。

AIに同じ項目で書き出させると、誰が担当しても、必要な項目が抜けない記録になります。

記録の書き方がそろうと、担当者が休んだときや異動したときも、別の担当者が経緯を読んで対応できます。

効果は、上長や営業事務からの差し戻しの回数が、導入前より減ったかで確かめます。

AIエージェント導入支援

人材派遣会社のAI活用事例

人材派遣会社のAI活用事例として、各社が公表している3つの取り組みを紹介します。

  • スタッフサービスは、事務職派遣スタッフからの問い合わせにAIチャットボットで答える
  • パーソルテンプスタッフは、派遣先が書く評価コメントの作成を生成AIで支える
  • パーソルテンプスタッフは、派遣スタッフ向けに生成AIの研修を提供する

3つの事例では、問い合わせ、評価、研修と、AIを使う業務がそれぞれ違います。

会社 AIを使う業務 公表の時期
スタッフサービス 派遣スタッフからの問い合わせ対応 2021年7月
パーソルテンプスタッフ 派遣先の評価コメントの作成支援 2024年12月
パーソルテンプスタッフ 派遣スタッフ向けの生成AI研修 2024年11月

スタッフサービスの問い合わせ対応

スタッフサービスは、事務職派遣スタッフからの問い合わせ対応に、ユーザーローカルのAIチャットボットを導入しました。

導入前は、問い合わせの内容ごとに担当部署が分かれていて、スタッフにとって問い合わせ先が分かりにくい状態でした。

電話での対応は営業時間内に限られ、マイページからのメールにも、時間帯によってはすぐに返信できない状況がありました。

2021年7月の発表によると、対象は派遣登録済みのスタッフ約61.5万人(2021年3月時点)です。

スタッフの数が多い派遣会社ほど、規程で答えられる質問をAIが受けると、担当者が電話とメールで答える件数を減らせると考えられます。

参考:スタッフサービス、事務職派遣スタッフからの問い合わせ対応としてユーザーローカルのAIチャットボットを導入|ユーザーローカル

パーソルテンプスタッフの評価コメント作成支援

パーソルテンプスタッフは、派遣先向けのサービス「T-PLA」に、生成AIのコメント作成機能のベータ版を、2024年10月から搭載しました。

派遣先の担当者が入力した評価やコメントの内容をもとに、派遣スタッフへのコメントの文面を生成AIが作ります。

生成したコメントは派遣先の担当者が編集や削除ができ、保存する前に担当者が最終確認を行います。

同社は背景として、派遣先から「評価の意図をうまく伝えることが難しい」という声があったことを挙げています。

AIが文章を作り、評価の中身は人が決めて確認する分担は、自社でAIを使うときにも応用できます。

参考:派遣先企業向け「T-PLA」生成AIを活用したコメント生成アシスト機能ベータ版を搭載|パーソルテンプスタッフ

派遣スタッフ向けの生成AI研修

パーソルテンプスタッフは、日本マイクロソフトのデジタル人材育成プログラムを、2024年11月下旬から派遣スタッフ向けに提供すると発表しました。

研修では、Microsoftの生成AIツール「Microsoft Copilot」の基礎知識と活用方法を、オンラインで学べます。

対象は、2024年11月から就業中のスタッフ、2025年4月からは登録スタッフにも広げる予定と発表されました。

同社は発表の時点で、2026年3月末までに登録スタッフ1万人の受講を目指すとしていました。

生成AIを使えるスタッフが増えると、生成AIの経験を求める派遣先の求人に紹介できる人が増えると考えられます。

参考:パーソルテンプスタッフ、日本マイクロソフトのデジタル人材育成プログラム「Code; Without Barriers in Japan」を11月より提供開始|パーソルテンプスタッフ

関連記事:人材紹介会社のAI活用方法!求人票や面談メモの作成を効率化

人材派遣会社のAI活用事例

派遣法と個人情報で守る注意点

派遣会社がAIを使うときに守る点は、個人情報の扱い、派遣先へ渡す情報、募集原稿の表示、出力の確認の4つです。

  • 個人情報を入力する前に、利用目的とAIサービスの扱いを確かめる
  • 派遣先へ渡す候補者情報が、特定目的行為にならないようにする
  • 人材派遣の募集原稿を、職業安定法の的確表示に沿って書く
  • 生成AIの出力を、送る前に人が確かめる工程を決める

法令の当てはめが自社で判断できない場面は、社会保険労務士や弁護士に確認してから運用を決めます。

個人情報を入力する前の確認

労働者派遣法24条の3では、派遣会社が労働者の個人情報を集め、保管し、使うときは、業務の目的の達成に必要な範囲内で行うことが求められています。

24条の3は、派遣会社が守る労働者派遣法上の決まりです。

これとは別に、個人情報保護委員会は、2023年6月の注意喚起で、事業者が生成AIに個人情報を含む指示を入力する場合の注意点を示しました。

1つ目は、個人情報保護法にもとづき、入力が、特定した利用目的を達成するために必要な範囲内であることを確かめることです。

2つ目は、本人の同意なく個人データを入力する場合に、AIサービスの提供者が個人データを機械学習に使わないことなどを確かめることです。

確かめること 例
利用目的の範囲 登録時に示した利用目的に、AIでの書類作成が含まれるか
学習への利用 入力した内容がAIの学習に使われない契約や設定か
入力する項目 氏名や連絡先を外しても作業ができるか
閲覧できる人 AIの入力履歴を、担当者以外が見られないか

氏名、住所、電話番号を外しても作業できる場合は、外したうえで入力します。

氏名を外しても、勤め先の社名、職歴、資格を組み合わせると本人が分かる場合があるため、作業に使わない項目は入力しません。

参考:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律|e-Gov法令検索

参考:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について|個人情報保護委員会

派遣先へ渡す候補者情報と特定目的行為

特定目的行為とは、派遣先が、派遣される労働者を自分で選ぶことを目的として行う行為のことです。

労働者派遣法26条6項は、紹介予定派遣を除き、派遣先が特定目的行為をしないよう努めることを求めています。

厚生労働省の「派遣先が講ずべき措置に関する指針」は、派遣の前の面接、履歴書の送付、若年者に限ることなどを、行わない行為として挙げています。

AIで作ったスキルシートや候補者の一覧を派遣先に渡す場面でも、派遣先が人を選ぶための資料にならないようにします。

派遣先に伝えるのは、業務に必要なスキルを満たしているかであり、氏名や年齢、顔写真のように個人を選べる情報は渡しません。

AIの出力に、年齢や性別のような項目が自動で入っていないかも、渡す前に確かめます。

派遣先から、事前の面接や履歴書の送付など、人を選ぶための資料を求められた場合は応じず、指針の内容を説明します。

参考:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律|e-Gov法令検索

参考:派遣先が講ずべき措置に関する指針|厚生労働省

人材派遣の募集原稿で守る表示のルール

派遣会社が派遣スタッフを募集する原稿は、職業安定法の「労働者の募集」に当たり、募集情報の的確な表示が求められます。

職業安定法5条の4では、広告などで募集の情報を出すときに、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないと決められています。

募集を行う者は、募集の情報を正確で最新の内容に保つことも求められます。

生成AIで募集原稿を下書きすると、実際より高い時給や、決まっていない勤務条件を、読みやすい言い回しで書き足す場合があります。

AIの下書きは、時給、勤務時間、就業場所、仕事の内容を、派遣先から受けた求人の要件と1項目ずつ見比べてから掲載します。

募集が終わった仕事の原稿は、掲載を止めるか、内容を新しくします。

派遣スタッフの募集をMeta広告で配信する場合は、採用広告の作り方と表現のルールも確認しておきます。

参考:職業安定法|e-Gov法令検索

参考:令和4年職業安定法の改正について|厚生労働省

生成AIの出力を人が確かめる工程

生成AIは、もっともらしい文章の中に、事実と違う数字や、入力していない条件を入れることがあります。

派遣会社の書類では、時給や日付の間違いがスタッフの生活に直結するため、出力を確かめる工程を作業の手順に入れておきます。

確かめる人、確かめる項目、確かめた記録の残し方を、書類の種類ごとに決めます。

書類 確かめる項目 確かめる人
募集原稿 時給、勤務時間、就業場所 担当のコーディネーター
就業条件の案内文 契約書と同じ内容か 担当者と営業事務
面談記録 本人の言葉と食い違いがないか 面談した担当者
派遣先への資料 個人を選べる情報がないか 担当の営業

確かめる項目を決めておくと、AIを使い始めたばかりの担当者でも、同じ基準で出力を直せます。

AI導入を進める4つの手順

AI導入は、対象業務を決めてから社内に広げるまで、次の4つの手順で進めます。

  • 対象業務の棚卸しで、AIに向く作業と向かない作業を分ける
  • 入力してよい情報のルール作りで、個人情報の扱いを決める
  • 1業務での試行と効果の測定で、作業時間と修正の回数を比べる
  • 社内研修による使い方の統一で、担当者ごとの差をなくす

手順を飛ばして全社に一度に広げると、個人情報の扱いが担当者ごとにばらばらになりやすくなります。

対象業務の棚卸し

対象業務の棚卸しとは、コーディネーターと営業事務の1週間の業務を書き出し、AIに向く作業を選ぶことです。

業務ごとに、1件にかかる時間、1週間の件数、扱う個人情報の種類を書き出します。

AIに向くのは、件数が多く、書く内容の型が決まっていて、扱う個人情報を減らせる作業です。

求人票、連絡文、面談記録、問い合わせへの一次回答が、最初の候補になりやすい作業です。

採否の判断や、トラブルの相談への返答のように、人の判断が中心の業務は、棚卸しの段階で対象から外します。

入力してよい情報のルール作り

入力してよい情報のルールは、使うAIサービスと、入力してよい項目を書いた一覧として社内に配ります。

使うAIサービスは、入力した内容を学習に使わない契約や設定のものに限ります。

入力してよい項目と、入力しない項目を、書類の種類ごとに決めます。

区分 項目の例
入力してよい 職種、経験年数、使えるソフト、希望の勤務時間
外して入力する 氏名、住所、電話番号、メールアドレス
入力しない 健康状態、家族の事情、本人が話した悩みの詳細

ルールは、登録時にスタッフへ示している個人情報の利用目的と、食い違いがないかを確かめてから決めます。

1業務での試行と効果の測定

試行は、1つの業務と1つの営業所に限って、1か月ほど行います。

試行の前に、1件の作業時間、修正の回数、ミスの件数を、AIを使わない状態で記録しておきます。

試行中は、AIの出力を直した箇所と理由を記録し、指示の文面やひな形を直します。

測る数字 記録の仕方
1件の作業時間 書き始めから送るまでの分数
修正の回数 AIの下書きを直した箇所の数
ミスの件数 送った後に訂正した件数
使った人の数 試行の期間にAIを使った担当者の数

試行の後に、同じ数字を比べ、作業時間が短くなり、ミスが増えていないことを確かめてから、ほかの業務や営業所に広げます。

社内研修による使い方の統一

社内研修は、AIの使い方を担当者ごとに任せず、同じ手順で使えるようにするために行います。

研修では、入力してよい情報のルール、ひな形の使い方、出力を確かめる項目を、実際の書類を使って練習します。

コーディネーター、営業、営業事務では使う書類が違うため、研修の練習問題も役割ごとに分けます。

役割 練習する書類
コーディネーター スキルシート、案件紹介の連絡文、面談記録
営業 求人要件の聞き取りメモ、派遣先への報告
営業事務 就業条件の案内文、契約更新の確認リスト

使い方が人によって違うままだと、AIを使う人と使わない人の間で、書類の品質の差が残ります。

ひな形やルールを直したときは、研修の資料も同じ日に直し、全員が新しい手順で使えるようにします。

関連記事:採用業務に生成AIを活用する方法!使える場面と導入時の注意点

AI導入を進める4つの手順

社内で進める範囲と外部の支援を使う場面

業務の棚卸し、入力ルールの作成、1業務での試行は、派遣会社の中で進められます。

外部の支援を使うのは、次のような場面です。

  • 問い合わせの受付から日程調整まで、複数の業務をつないで自動化したい場面
  • 既存の基幹システムとAIをつなぎ、アクセスできる範囲を設計したい場面
  • 営業所が多く、全員の使い方を研修でそろえたい場面
  • 個人情報の扱いを含めた、AIの利用ポリシーを作りたい場面

複数の業務をつなぐ自動化や、既存のシステムとの連携は、個人情報が流れる経路の設計が欠かせないため、社内だけで進めると時間がかかる場合があります。

社内で進められる範囲から始め、試行で効果が見えた業務を広げる段階で、外部の支援を考えます。

コーディネーター全員が同じ手順でAIを使える状態にする研修は、malnaのAI導入支援サービスでご相談いただけます。

試行で効果が見えた業務を、問い合わせから日程調整までつないで自動化する段階では、お問い合わせからご連絡いただけます。

AIを使える人材が社内にいない場合

業務ごとの使い方は見えた。

でも、派遣先とスタッフの対応に追われながら、最初のひな形と入力ルールを作る人が社内にいない。

試行の段取りが決まっていても、日々の連絡を受け持つコーディネーターが兼務で進めるには、時間が足りない場合があります。

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malnaブログ編集部

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