採用業務に生成AIを活用するとどう変わる?

「採用業務を効率化したい」「応募者体験を向上させたい」。そんな課題を抱える採用担当者は多いのではないでしょうか?

私自身、数か月前までは生成AIについて「業務効率化につながるのかもしれないけれど、利用するハードルが高くて手を出しづらいな」と思っていました。しかし日々の業務に追われ、「このままでは長期的な戦略を考える時間が取れない」と感じていた中で、試しにChatGPTで簡単なメール返信を作成してみました。

予想以上に的確な文章が生成され、「これは使える」と感じたのがきっかけで活用範囲を広げてみたところ、驚くほど採用業務の効率が大きく向上しました。

この記事では、「生成AIって何ができるの?」という状態からスタートした私の実体験をもとに、採用業務の課題解決法、効果的な活用方法、そして導入の具体的ステップを解説します。

企業の採用業務における課題

採用担当者は日々、さまざまな課題に直面していますよね。例えば、多数の応募者の中から最適な人材を見極める難しさ、限られた時間内での膨大な問い合わせ対応、選考プロセスの効率化、応募者体験の向上などが挙げられると思います。

これらの課題を解決するためのツールとして、生成AIが注目を集めています。

少し前のデータにはなりますが、Thinkings株式会社が実施したアンケート(2023)によると、人事・採用担当者の80%以上が生成AI技術の導入に関心を示しており、56.5%が「実際に活用したことがある」と回答しています。AIを活用した採用活動の場面では「適性検査」31.9%、「求人票の作成」26.5%、「採用の企画」29.2%と幅広いシーンでの生成AI活用が進んでいることが分かります。

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生成AIが活用できる採用業務

採用活動を大きく区切ると、概ね次のようなフェーズとなります。

  1. 戦略・計画フェーズ
    • 採用戦略の立案と人材要件の定義
  2. 採用マーケティングフェーズ
    • 求人情報の公開と候補者獲得
  3. 選考フェーズ
    • 書類選考、面接、適性検査
    • 候補者対応(問い合わせ、日程調整等)
  4. 内定・オンボーディングフェーズ
    • 結果通知と内定者フォロー

採用業務は多くの企業で重要かつ工数のかかる業務です。最近注目を集める生成AIは、この採用業務の各段階で大きな力になります。これらの採用プロセスの各フェーズでの生成AI活用法と簡潔な事例を紹介します。

戦略・計画フェーズでの生成AI活用

採用戦略の立案

採用戦略を考える際の「頼れる相談相手」として活用できます。「中途採用を強化すべきか、新卒採用に注力すべきか」「エンジニア採用の効果的なアプローチは?」など、採用戦略の壁打ち相手として活用できます。複数の視点からのアイデアや質問を投げかけてくれるため、自分一人では気づかなかった発想が生まれやすくなります。

人材要件の定義

人材要件を具体的に言語化する際に活用できます。「うちの会社に合う人ってどんな人?」「この部署で活躍する人材の特徴は?」などの質問に対して、壁打ち相手として多様な視点から回答してくれます。さらに、業界データや社内の成功事例から活躍人材の特性やスキルセットなどの客観的な分析も教えてくれるため、主観と客観の両面から理想の人材像を明確にするパートナーになります。

採用マーケティングフェーズでの生成AI活用

求人票の作成

必要なスキルや業務内容を明確に記載しつつ、企業の魅力や職場環境も伝わる求人を短時間で生成できます。また、応募者層に合わせた表現の調整も簡単です。さらに文章だけでなく、画像生成も生成AIを用いて行うことができます。求人票で用いる社内の雰囲気を伝えるイメージ画像などを簡単に作成できます。専門的なデザインスキルがなくても、イメージを言葉で伝えるだけで、魅力的なビジュアルが生成可能です。

自社採用サイトの構築

専門的なコーディング知識がなくても、「こんな採用サイトを作りたい」という要望を伝えるだけで、HTMLやCSSのコードを生成してくれます。また、魅力的な採用ページのコンテンツ作成、社員インタビューの要約、FAQ作成なども素早く行えます。チャットボット機能を追加すれば、訪問者からの質問に24時間対応することも可能です。

選考フェーズでの生成AI活用

書類審査の実施

応募書類の要約や重要ポイントの抽出、職務経歴のまとめなどを素早く行い、採用担当者の確認作業をサポートしてくれます。また、「この経歴からどんな質問ができるか」「どんな強みが読み取れるか」といった視点も提供してくれるため、人間による最終判断の質も向上します。膨大な応募書類に圧倒されることなく、一人ひとりの候補者をしっかり評価できるようになります。

メッセージ対応(候補者・エージェント対応)

候補者やエージェントからの問い合わせに対する返信文の作成、選考プロセスの進捗状況の通知、次のステップの案内など、日々発生する多くのメッセージ対応に使えます。特に定型的な内容でも、相手ごとにパーソナライズされた丁寧な文面を素早く作成できるため、コミュニケーションの質を落とさずに業務効率を高められます。生成AIを初めて利用する際には、メッセージ対応が最も取り組みやすいかもしれません。私自身も、生成AIを活用する場面で最も多いのは、メッセージ対応の際です。

面接の実施

候補者の経歴を事前に分析し、「この経験についてもっと掘り下げるには何を聞くべきか」という具体的な質問案を提案してくれます。また面接後には、議事録の要約や採用基準に基づく評価ポイントの整理も手伝ってくれるため、より効率的かつ一貫性のある面接が可能になります。

内定・オンボーディングフェーズでの生成AI活用

結果の通知

内定通知では候補者の長所や面接での印象的な発言を取り入れた温かみのある文面を、不採用通知では候補者の強みを認めつつも丁寧に説明する文面を作成してくれます。内定者への入社案内や次のステップの説明なども簡単に作成可能です。

内定者フォロー

内定者からのよくある質問(入社手続き、研修内容、配属先など)に対する回答を準備したり、入社までのスケジュールや準備事項をわかりやすくまとめたりする作業を効率化できます。内定者一人ひとりに合わせた情報提供も容易になります。

生成AI活用のポイント

生成AIを採用業務に取り入れる際のポイントは以下の3つです。

  • まずは小さく始める
    全プロセスを一度に変えるのではなく、特に負担の大きい業務から試してみましょう。
  • 人間の判断を大切に
    AIはあくまで補助ツール。最終決定は人間が行うべきです。
  • 定期的に見直す
    AIの回答や分析結果を定期的にチェックし、必要に応じて調整しましょう。

生成AIは、採用担当者の負担を減らしながら、候補者へのサービス品質を高める強力なパートナーになります。テクノロジーの進化により、今後ますます使いやすく、効果的なツールになっていくでしょう。

生成AI導入のリスクと注意点

生成AIを採用業務に導入する際は、メリットだけでなく、起こり得るリスクと対策についても理解しておくことが重要です。

情報の正確性とバイアスへの対策

リスク

  • 生成AIは時に「もっともらしい間違い」を生成することがある
  • 学習データに含まれるバイアスが結果に反映される可能性がある
  • 採用基準に関わる重要な判断に影響を与えるリスクがある

対策

  • AIが生成した内容は必ず人間が確認するという二重チェック体制を構築する
  • 採用担当者向けにAIの特性と限界に関する研修を実施する
  • 定期的にAIの出力内容を監査し、バイアスや誤りがないか確認する

セキュリティ対策とプライバシー保護

リスク

  • 候補者の個人情報や機密情報が適切に保護されない可能性
  • AIサービス提供企業によるデータの取り扱いの問題
  • 法規制(個人情報保護法、GDPR等)への対応が不十分になるリスク

対策

  • 個人情報を含むデータを扱う場合は、企業向けセキュリティ機能が整備されたツールを選定する
  • データの匿名化や要約化により、必要最小限の情報のみをAIに入力する
  • 社内のセキュリティポリシーに沿った利用ガイドラインを策定する

AIと人間の適切な役割分担

AIに適した業務

  • 定型的な文書作成(返信メール、通知文など)
  • 大量データからの情報抽出と要約
  • 初期スクリーニングのサポート
  • 繰り返し発生する質問への回答

人間が担うべき業務

  • 最終的な採用判断
  • 候補者との関係構築とコミュニケーション
  • 創造性や人間性の評価
  • 企業文化へのフィットの判断

生成AIは人間の代替ではなく、人間の能力を拡張するツールです。採用業務においては、AIと人間が互いの強みを活かし合うハイブリッドな体制を構築することで、より効率的かつ質の高い採用活動を実現できます。

生成AI導入・活用のステップ(ロードマップ)

生成AIを採用業務に効果的に取り入れるには、段階的なアプローチが重要です。以下に、初めて生成AIを導入する企業でも実践しやすい基本的なステップをご紹介します。

STEP1: どの業務に導入するか特定する

実施事項

  • 現在の採用業務を棚卸し、各業務の所要時間と頻度を整理する
  • 「反復的な作業」「パターン化された業務」に印をつける
  • 特に工数がかかっている業務を優先候補として抽出する

具体例

パナソニックコネクト社では、採用担当者の業務分析を行い、候補者への初期対応や面接日程調整といった定型業務に最も時間がかかっていることが判明。この部分に生成AIを導入することで、1人あたり週約5時間の時間創出に成功しました。

STEP2: 適切なツールを選定する

実施事項

  • 社内のセキュリティガイドラインを確認し、要件を整理する
  • 個人情報の取り扱いに対応したビジネス向けツールを検討する
  • 初期コストと運用コストを試算し、投資対効果を検討する

具体例

リクルートでは、検証フェーズで各担当者がChatGPTビジネスプランを利用し効果を確認した後、企業全体でChatGPT Enterpriseを導入。社内データの保護と全社での活用基盤を整備しました。

主要な生成AIツール比較

  • ChatGPT(OpenAI)
    個人向けPlus版は月額2,980円。法人向けEnterprise版は1ユーザーあたり月額3,000〜5,000円程度(年間契約、ボリュームディスカウントあり)。汎用性が高く導入しやすい。
  • Claude(Anthropic)
    個人向けPro版は月額2,000円程度。法人向けはBusiness版(1ユーザーあたり月額3,500円程度)とEnterprise版(要問合せ)あり。セキュリティと倫理面に配慮した設計で、長文処理に強み。
  • Microsoft Copilot for Business
    Microsoft 365と統合されており、1ユーザーあたり月額3,000円程度。社内文書と連携した活用が可能。Microsoft 365のライセンス費用(E3/E5)も別途必要。
  • Gemini(Google)
    Gemini Advanced個人版は月額2,000円程度。法人向けGemini for Workspaceは1ユーザーあたり月額2,500円程度から。Google Workspaceとの連携が強みで、データ分析と連携しやすい。

STEP3: 小規模で試験導入し効果を検証する

実施事項

  • 特定の採用区分(例:「営業職の中途採用」「特定部門の採用」)に限定して導入する
  • 具体的な成果指標(KPI)を3〜5項目設定し、導入前後で測定する
  • 1〜3ヶ月の期間で効果と課題を明確化する
  • 効果が確認できた場合は段階的に他の採用区分や業務へ拡大する

具体例

ソフトバンクでは、デジタル部門の中途採用プロセスに限定して生成AIを導入。「候補者への初期返信時間」「採用担当者の業務時間」「候補者からの評価」を指標として設定し、効果を定量的に測定しました。返信時間が12時間から3時間に短縮され、担当者の残業も週5時間減少したことで、全社展開の判断材料となりました。

導入の実践ポイント

  • 段階的に始める
    いきなり全業務を変えず、まずは単純な業務から始めましょう。例えば「面接日程の調整メール」や「書類選考結果の通知文」など、定型的でかつ時間のかかる業務から試すのがおすすめです。
  • 確認プロセスを忘れずに
    生成AIが作成した文章は、必ず人間が内容を確認してから使用しましょう。特に個人情報を含む内容や重要な判断に関わる場合は、十分な確認が必要です。
  • 役割分担を明確に
    生成AIは「下書き作成」「情報の要約」などを担当し、人間は「最終確認」「候補者との関係構築」を担当するという役割分担を決めておきましょう。

生成AIは特別な専門知識がなくても活用できるビジネスツールです。小さく始めて、効果を確認しながら徐々に活用範囲を広げていくことが成功の秘訣です。

まとめ

本記事では、採用業務における生成AIの活用方法を紹介しました。採用戦略の立案から内定者フォローまで、各フェーズでAIを効果的に取り入れることで、業務効率化と採用品質の向上を同時に実現できることがわかります。

私自身の経験から、生成AIによって採用業務は大幅に効率化できると実感しています。今後は生成AIをうまく活用できる採用担当者・企業とそうでない企業との間で、生産性や採用成果に大きな差が生まれてくるでしょう。

導入のポイントは、まずは小さく始め、効果を確認しながら段階的に拡大していくことです。セキュリティ対策と人間による最終判断も忘れずに行いましょう。

なお、今回紹介した活用法はあくまで一部に過ぎません。生成AIの可能性は日々広がっていますので、みなさんもぜひ様々な使い方を調べつつ試してみてください。テクノロジーを味方につけながら、より戦略的な採用活動を実現していきましょう。

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参考:

企業研究で見るべき4つのポイント

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著者情報

malnaブログ編集部

writermalnaブログ編集部 webマーケター / データアナリスト
Facebook・InstagramをはじめとするSNS広告からSEO対策など、マーケティングに関する様々な情報を発信しています。

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