2026.09.10
医療現場の生成AI活用とは|非臨床3領域の事例と踏み込めない一線
医療機関でも生成AIの活用を検討する動きが広がっていますが、何から手をつければよいのか迷う担当者は少なくありません。診断や治療そのものにAIを使えるのかどうかが曖昧なまま検討を始めると、後から法令に触れる可能性が見つかり、計画をやり直すことになりかねません。
目次
実際には、医療機関が生成AIを導入する際にまず着手しているのは、診療記録や院内文書の作成といった非臨床の周辺業務です。診断・治療の主体を医師に残したまま、その手前にある記録や事務作業の負担を減らす設計が主流になっています。本記事では、公式発表や学会発表で確認できた非臨床領域の活用事例と、医師法・薬機法・医療広告ガイドラインという踏み込めない一線を整理します。医療機関でAI活用の検討を任された担当者の方が、着手する順序と、専門家に確認すべき論点を切り分けられる状態を目指します。
生成AIの活用を検討する組織から、どの業務から着手すればよいか整理しきれないという相談を受けることがあります。法令・ガイドラインへの適合可否は専門家の確認が必要ですが、業務設計や進め方の整理について話してみたい場合は、お問い合わせから相談することもひとつの方法です。
医療分野の生成AI活用を検討する前に知っておきたい前提
医療分野における生成AI活用とは、診断や治療の主体を医師に保持したまま、記録作成や院内文書、患者対応の周辺業務に生成AIを組み込むことです。診療そのものを代替する使い方ではありません。
厚生労働省医政局医事課長は2018年12月19日付の通知(医政医発1219第1号)で、人工知能を用いた診断・治療支援プログラムを利用する場合でも、診療の主体は医師であり、医師が最終的な判断の責任を負うことを示しました。この通知は生成AI登場以前の人工知能診断支援プログラムを念頭に置いたものであり、生成AIを名指しした内容ではありません。ただし、AIが提示するのは情報整理や仮説形成を助ける支援情報であり、判断そのものを引き取る立場ではないという考え方は、生成AIの活用を検討するうえでも出発点になります。
参考:医師法17条とAI|大阪公立大学大学院医学研究科人工知能学
医療AIプラットフォーム技術研究組合は2024年10月2日、医療機関・薬局等における生成AI活用のユースケースとリスク対策を整理した「医療・ヘルスケア分野における生成AI利用ガイドライン」第2版を公表しました。情報漏えいや不正確な情報の生成といったリスクへの対策例を、実際のユースケースごとに示している点が特徴です。業界団体による整理が公表されていること自体が、非臨床業務からの活用がすでに実務段階に入っていることを示しています。
参考:医療・ヘルスケア分野における生成AI利用ガイドラインを策定|医療AIプラットフォーム技術研究組合
こうした前提を踏まえると、医療機関が最初に検討すべきは、患者情報を直接扱わない業務か、扱うとしても最終判断を医師が担保できる業務かを見極めることです。この記事は、医療機関でAI活用の検討を任された事務局担当者や情報システム部門の方を主な読者として想定しています。ここでいう非臨床とは、患者情報を一切扱わないという意味ではなく、診断・治療の判断そのものをAIに委ねない業務という意味で使っています。この点を踏まえたうえで、実際に活用が進んでいる3つの領域を具体的に見ていきます。
医療分野で生成AIの活用が進む3つの非臨床領域

非臨床領域での生成AI活用は、記録作成の支援、患者対応の効率化、院内文書や研修教材の作成という3つの領域に整理できます。いずれも診断・治療の判断そのものではなく、その前後にある事務的な負担を軽くする使い方です。
生成AI協会理事が監修する業界解説記事では、医療機関の事務・運営業務を文書作成、会議記録、問い合わせ対応、請求周辺事務、院内ナレッジ検索、職員教育の6領域に分け、患者情報を含まない業務から段階的に生成AIを適用する進め方が紹介されています。本記事で扱う3領域は、この整理と重なる部分を中心に、公表事例で裏付けが取れたものに絞り込んでいます。
参考:医療の生成AI活用|事務・運営業務の適用マップと規制の整理|FD-X
領域1:診療記録・カルテ関連文書の作成支援
診察や看護記録の音声を生成AIが要約し、下書きとして提示する使い方です。最終的な確認と確定は、診療記録なら医師、看護記録なら看護師というように、記録の性質に応じて担当者が行うことが前提になります。
医師の診療記録や看護記録は、患者ごとに毎回作成する定型性の高い文書でありながら、内容は診察のたびに変わるため自動化が難しいとされてきました。生成AIが会話の音声を認識し、SOAP形式などの様式に沿って下書きを作成することで、記載者はゼロから文章を組み立てるのではなく、下書きの確認と修正に作業を切り替えられます。作成そのものをAIに任せるのではなく、確認と確定の工程を人に残す設計が、この領域で共通しています。
領域2:問診・患者対応の効率化
患者がスマートフォンやタブレットで事前に症状を入力し、その内容を医療者向けに整理する使い方です。診察前の情報収集を効率化する位置づけにとどまり、生成AIが症状の解釈や診断の代替を行うものではありません。
問診の場面では、患者が来院前に症状や経過を入力し、生成AIがそれを医療者が読みやすい形に整理します。これにより、医師や看護師が問診に費やす時間の一部を診察そのものに振り向けられます。ここでも判断の主体は医師であり、AIが整理した情報はあくまで参考情報として扱われます。
領域3:院内文書・研修教材の作成支援
議事録や院内向けの説明資料、研修教材の草案を生成AIに作成させる使い方です。患者情報を含まない業務のため、他の2領域より確認すべき法令・指針の範囲が狭く、比較的着手しやすい領域とされています。
会議の議事録作成や、院内向けの案内文書、新人向けの研修教材の草案作成は、患者の個人情報を扱わずに完結できる業務です。厚生労働省の調査研究でも、患者情報を含まない業務から着手し、体制が整ってから患者情報を扱う事務に進むという順序が実務上の判断として挙げられています。最初の一歩として選ばれやすいのは、このためです。
3つの領域を整理すると、患者情報との関わり方の深さに違いがあることが分かります。
| 領域 | 主な業務 | 患者情報の関与 | 確認すべき担当者 |
| 診療記録・カルテ関連文書の作成支援 | 診察・看護記録の音声要約、退院サマリの下書き作成 | 直接関与する | 医師・看護師(内容の確認と確定) |
| 問診・患者対応の効率化 | 事前問診の入力内容整理、来院前の情報収集 | 直接関与する | 医師・看護師(診察前の確認) |
| 院内文書・研修教材の作成支援 | 会議の議事録、院内案内文書、研修教材の草案 | 関与しない、または限定的 | 事務局・研修担当者 |
患者情報に直接関わる領域1・2は、後述する医師法・薬機法・医療広告ガイドラインとの関係を確認したうえで導入する必要があります。一方、領域3は患者情報を扱わずに完結できるため、最初の着手先として選ばれやすい領域です。
医療機関における生成AI活用事例
医療機関における生成AI活用事例は、記録業務の効率化を目的としたものが公式発表や学会発表で確認できます。ここでは3件を1事例ずつ取り上げます。いずれも診断・治療そのものではなく、記録という非臨床業務が対象です。
JCHO北海道病院|音声認識と電子カルテ連携によるカルテ下書きの実証
JCHO北海道病院は、株式会社プレシジョン、株式会社シーエスアイ、NTTドコモビジネス株式会社と共同で、診察室の会話から生成AIによるカルテ下書き作成、電子カルテ連携までを院内で完結させる実証を開始したと2026年1月19日に発表しました。厚生労働省の「ICT機器を活用した勤務環境改善の先駆的取組をおこなうモデル医療機関調査支援事業」に採択された取り組みです。
仕組みは、スマートフォンを診察室の音声入力端末として使い、院内のセキュアな環境で音声をテキスト化したうえで、オンプレミス環境の生成AIがSOAP形式のカルテ下書きを作成し、電子カルテシステムに連携するというものです。医師の長時間労働の要因としてカルテ入力を中心とした記録業務が挙げられており、その負担軽減を狙いとしています。
この事例の成立条件は、音声データを院内のセキュアな環境で処理し、外部に出さない構成を取っている点にあります。患者情報を扱う以上、どこでデータを処理し、どこに保存するかという設計が、導入可否を左右する論点になります。
参考:厚生労働省事業に採択、JCHO北海道病院でAIカルテ下書き実証開始
浦添総合病院|退院サマリ作成を最大30分超から5分以内へ短縮
浦添総合病院は、Ubie株式会社が提供する「ユビーメディカルナビ 生成AI」を沖縄県で初めて導入したと2024年10月22日に発表しました。看護師による記録業務の負担軽減を目的に、退院サマリ作成の効率化から運用を始めています。
導入は2病棟からのスモールスタートで、3か月目には全病棟での運用に拡大し、月間約250件の退院サマリ作成に活用されるまでになりました。従来は最大30分以上かかっていた退院サマリの作成が、生成AI導入後は5分以内に短縮されたとプレスリリースで公表されています。
成立条件として読み取れるのは、全病棟への一括導入ではなく、2病棟から始めて効果と運用上の課題を確認したうえで拡大した進め方です。今後は音声認識機能を使った患者面談記録やカンファレンス議事録の作成にも活用範囲を広げる方針だとしています。
参考:浦添総合病院、「ユビーメディカルナビ 生成AI」を沖縄県で初導入|Ubie株式会社
恵寿総合病院|退院時看護サマリの作成時間を42.5%削減した実証研究
社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院は、退院時看護サマリの作成業務にUbieの生成AIを活用した実証研究の成果を、2024年9月28日・29日開催の第65回全日本病院学会in京都で発表しました。
2023年12月から実施した実証では、生成AIを使わない場合の平均作成時間が12分20秒だったのに対し、生成AIを使った場合は7分5秒となり、42.5%の入力時間短縮が確認されています。あわせて、作成にあたる看護師の心理的負担も27.2%軽減したと報告されました。在院日数が6日以上の患者のサマリ作成に限定したサブ解析では、業務時間の低減効果が46.6%まで高まったことも示されています。
この事例が他の2件と異なるのは、削減時間だけでなく心理的負担という主観的な指標も学会発表という形で検証されている点です。数値の裏付けが記録として残っていることが、この取り組みの再現性を高めています。
参考:恵寿総合病院、退院時看護サマリ作成業務に生成AIを適用した業務効率化の有用性を確認|Ubie株式会社
3件に共通するのは、記録作成という定型業務を対象にし、最終的な確認と確定を人が担う設計を維持している点です。本記事で取り上げた3事例では、診断や治療の判断そのものに生成AIを使ったという発表は確認できませんでした。
なお、ここで示した削減時間・削減率はいずれも単一の医療機関における実証や学会発表の公表値です。対象件数や測定条件がそれぞれ異なるため、他の医療機関で同じ水準の効果が再現されることを保証するものではありません。導入を検討する際は、自院の業務量や運用体制と照らして参考情報として扱う必要があります。
医療分野の生成AI活用で踏み込めない法令・ガイドラインの一線

医療分野の生成AI活用には、医師法・薬機法・医療広告ガイドラインという3つの法令・指針が関わります。医師法と薬機法は生成AIが診断・治療の判断主体になることを認めておらず、医療広告ガイドラインは生成AIが作成した文章の表現面を規制する立場です。事前にどこに一線があるかを把握しておく必要があります。
| 法令・指針 | 規定している内容 | 生成AI活用での注意点 |
| 医師法第17条 | 医業(医師の医学的判断・技術で人体に危害を及ぼしうる行為)は医師でなければ行えない | 厚生労働省の通知により、AIを用いた診断・治療支援でも判断の主体と最終責任は医師にあるとされている |
| 薬機法(プログラム医療機器規制) | 診断・治療を目的とするプログラムは医療機器としての承認・認証等の対象になりうる | 診断や治療効果を目的として設計・提供する生成AIは、プログラム医療機器規制の対象になるかどうかの確認が必要になる |
| 医療広告ガイドライン | 医療機関の広告・ウェブサイトにおける虚偽広告・誇大広告・比較優良広告等を禁止する | 生成AIが作成した文章を医療機関の広告やサイトに使う場合、効果効能を断定する表現や根拠のない数値表現が紛れ込んでいないかの確認が必要になる |
医師法第17条との関係で押さえておきたいのは、AIのスコアやフラグだけをもとに確認の対象から外すような運用は、医師の医学的判断を経ない医業が成立していると評価される懸念がある点です。診断・治療に関わる記録であれば医師が、看護記録であれば看護師が、生成AIの下書きを最終確認する工程を省略しないことが、この一線を守る前提になります。
薬機法との関係では、記録作成や院内文書の下書き作成のように、診断・治療そのものを目的としない使い方であれば、プログラム医療機器規制に直接抵触する可能性は低いと整理されています。ただし、生成AIの出力を診断や治療方針の決定に直接用いる設計に発展させる場合は、規制の対象になるかどうかを個別に確認する必要があります。
医療広告ガイドラインとの関係では、生成AIが作成した文章をそのまま医療機関のウェブサイトや広告に使う場面で注意が必要です。生成AIは根拠のない断定的な表現や、誇張された数値表現を自然な文章として出力することがあり、それが虚偽広告・誇大広告に該当するかどうかは表現ごとに判断が分かれます。
これら3つの一線は、いずれも個別の事情によって判断が変わる領域です。本記事で示した整理は一般的な情報の整理にとどまり、個別の適用可否については、医療機関の法務・コンプライアンス担当者や医療系コンサルタントなど専門家への確認が必要です。
データの取り扱いを規定する3省2ガイドライン
生成AIが患者情報を扱う場合、厚生労働省・経済産業省・総務省が定める通称「3省2ガイドライン」が、システムの安全管理の基準になります。医療機関側と提供事業者側で対象と責任の範囲が異なる点をあわせて押さえておく必要があります。
3省2ガイドラインとは、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(2026年6月に第7.0版へ改定)と、経済産業省・総務省の「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」(第2.0版、2025年3月改定)を合わせた呼び方です。前者は医療機関向け、後者はクラウドサービスなどを提供する事業者向けに整理されています。
参考:医療情報システムの安全管理に関するガイドライン|厚生労働省
参考:医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン第2.0版に対する意見公募の結果|e-Govパブリック・コメント
生成AIサービスを選ぶ際は、提供事業者がこのガイドラインに沿った安全管理措置を取っているか、患者情報を含むデータがどこで処理・保存されるかを確認する必要があります。あわせて、患者情報は個人情報保護法上の要配慮個人情報にあたるため、委託先との契約内容や、生成AIの学習への流用の有無も確認事項に含まれます。JCHO北海道病院の実証も、情報を院内で処理し外部に出さない構成を掲げていると公表されています。
研修・人材育成の視点から生成AI活用を定着させるポイント

生成AIを一部の担当者だけが使う状態から組織全体の業務に定着させるには、道具を配ることと使い方を浸透させることを分けて考える必要があります。ツールを導入した時点では、まだ運用が定着したとは言えません。
非臨床業務から研修対象を絞り込む
最初の研修対象は、患者情報を含まない議事録作成や院内文書の下書きなど、非臨床業務に絞り込むと合意形成が進めやすくなります。対象を広げすぎると、確認事項が増えて研修そのものが停滞する原因になります。
患者情報を扱う業務からいきなり研修を始めると、情報セキュリティやガイドライン適合の確認に時間がかかり、研修そのものが停滞しがちです。まず患者情報を含まない業務で操作に慣れてもらい、そのうえで扱う業務範囲を段階的に広げるという順序のほうが、現場の合意を得やすくなります。
確認工程を省略しない運用ルールを研修に組み込む
生成AIの出力をそのまま確定情報として扱わず、必ず人が確認する工程を経るというルールは、操作方法の研修と同じ比重で扱う必要があります。操作だけを教えて終わる研修では、この確認工程が現場で形骸化しやすくなります。
操作を覚えることと、AIの出力を鵜呑みにしないという判断基準を身につけることは別の学習です。研修の設計段階から、出力の確認手順や誤りに気づいたときの報告先を具体的に決めておかないと、現場では確認工程が省略されやすくなります。
情報システム部門や法務部門と連携した体制を先に決める
現場の研修を始める前に、どの部門が生成AIの利用範囲やセキュリティ要件を判断するのかという体制を決めておくと、研修後の運用が止まりにくくなります。体制が後回しになると、現場から出た疑問の相談先が定まらないまま活用が広がってしまいます。
現場担当者だけで判断できる範囲は限られており、情報システム部門や法務・コンプライアンス部門との連携が欠かせません。体制が曖昧なまま研修を進めると、現場で疑問が生じたときに相談先が分からず、活用が止まってしまう場合があります。
3つのポイントを研修の設計に落とし込むと、次のような段階に整理できます。
| 段階 | 内容 | 巻き込む部門 |
| 1. 対象業務の選定 | 患者情報を含まない業務から研修対象を絞り込む | 研修担当・現場責任者 |
| 2. 運用ルールの明文化 | 確認工程・誤り発見時の報告先を具体的に決める | 現場責任者・情報システム部門 |
| 3. 体制の確定 | 利用範囲やセキュリティ要件の判断部門を先に決める | 情報システム部門・法務コンプライアンス部門 |
段階を飛ばして現場の研修だけを先行させると、体制が整わないまま運用が広がり、後から確認工程を追加する手戻りが発生しやすくなります。3段階を順番どおりに進めることが、定着までの近道です。
生成AIの活用を組織に定着させる進め方そのものは、業種を問わず共通する部分が多いテーマです。どの業務から着手し、どの部門と連携して体制を整えるかを一緒に整理したい場合は、お問い合わせから相談を受け付けています。
医療分野で生成AI導入を検討する際の注意点
医療分野での生成AI導入を検討する際は、業務範囲の切り分け、データの取り扱い、確認工程の3点を事前に整理しておくことが欠かせません。この整理を後回しにすると、導入後に想定外の手戻りが発生しやすくなります。
まず業務範囲の切り分けです。前述のとおり、非臨床業務から着手するか、患者情報を扱う業務まで含めるかによって、確認すべき法令・指針の範囲が変わります。着手する業務を決める段階で、どこまでが自組織の判断で進められる範囲かを整理しておく必要があります。
次にデータの取り扱いです。患者情報を含む音声やテキストを外部のクラウド環境で処理するのか、院内のセキュアな環境にとどめるのかは、事例で見たJCHO北海道病院の実証のように、設計段階で決めておくべき論点です。前述の3省2ガイドラインに沿った安全管理措置が取られているサービスかどうかもあわせて確認します。この判断には情報セキュリティの専門知識が必要になるため、情報システム部門を交えずに現場だけで決めることは避けたほうがよいでしょう。
最後に確認工程です。生成AIが作成した下書きを、誰がどのタイミングで確認し、確定させるのかというルールを先に決めておかないと、導入後に確認が形骸化しやすくなります。医師法第17条との関係で見たとおり、確認工程を省略しないことがこの領域での前提になります。
なお、本記事で示した法令・指針の整理や事例の解釈は一般的な情報にとどまるものであり、個別の医療機関における適用可否や導入判断は、医療機関の法務・コンプライアンス担当者や医療系コンサルタントなど専門家への確認をおすすめします。malnaは医療分野における支援実績を公開しておらず、本記事も医療分野特有の法務判断を代替するものではありません。
よくある質問
医療分野の生成AI活用を検討する際によく挙がる疑問をまとめました。導入を具体的に進める前に、あわせて確認しておきたい観点です。
医療機関が生成AIを導入する場合、どの業務から始めるとよいですか
議事録作成や院内文書の下書きなど、患者情報を含まない業務から始めるケースが多く確認されています。体制が整ってから、記録業務など患者情報を扱う業務に範囲を広げる順序が実務上の判断として挙げられています。
生成AIに診断や治療方針の判断を任せることはできますか
できません。厚生労働省の通知により、AIを用いた診断・治療支援であっても、判断の主体と最終責任は医師にあるとされています。生成AIはあくまで情報整理や下書き作成を支援する位置づけです。
生成AIで作成した文章をそのまま広告に使ってもよいですか
そのまま使うことはおすすめできません。生成AIは根拠のない断定表現や誇張表現を自然な文章として出力することがあり、医療広告ガイドラインが禁止する虚偽広告・誇大広告に該当しないかを個別に確認する必要があります。
医療分野での生成AI活用の判断は誰に相談すればよいですか
法令やガイドラインへの適合可否に関わる論点は、医療機関の法務・コンプライアンス担当者や医療系コンサルタントなど専門家への確認が必要です。業務設計や研修の進め方については、外部のAI活用支援先に相談する選択肢もあります。
生成AIサービスを選ぶ際、何を確認すればよいですか
患者情報を扱うサービスの場合、厚生労働省・経済産業省・総務省が定める3省2ガイドラインに沿った安全管理措置が取られているか、データがどこで処理・保存されるかを確認する必要があります。患者情報を扱わない業務であっても、社内規程や情報の外部送信可否といった確認は別途必要です。
まとめ
医療分野の生成AI活用は、診断・治療の判断を医師に残したまま、記録作成や院内文書、患者対応といった非臨床の周辺業務から広がっています。JCHO北海道病院、浦添総合病院、恵寿総合病院の事例に共通するのは、記録という定型業務を対象にし、最終確認を人が担う設計を維持している点です。
一方で、医師法第17条と薬機法は生成AIが診断・治療の判断主体になることを認めておらず、医療広告ガイドラインは生成AIが作成した文章の表現面を規制しています。導入を検討する際は、業務範囲の切り分け、データの取り扱い、確認工程という3点を先に整理し、判断が難しい論点は医療機関の法務・コンプライアンス担当者や医療系コンサルタントに確認する進め方が欠かせません。
どの業務から着手し、体制をどう組むかを整理する段階で第三者の視点を交えたい場合は、お問い合わせから相談を受け付けています。
AIを使える人材が社内にいない場合
非臨床業務から始めればよいことは見えた。でも、法令の一線を踏まえて体制づくりを最初に動かす人が院内にいない。
生成AIの活用を検討する医療機関や企業から、体制づくりの初期段階を担う人材がいないという相談を受けることがあります。malnaでは、AI活用の実務経験を持つ人材をご紹介するAIタレント名鑑を運営しています。採用ではなく業務委託として、週1日から相談いただけます。
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