2026.09.09
自治体の生成AI導入ガイド|予算・調達・セキュリティの実務要点
自治体でAI活用やDXを担当する職員の中には、生成AIの導入検討を進めながら、予算の確保や調達手続き、セキュリティ要件をどこまで詰めればよいのか迷っている方が少なくありません。実際には、他自治体の事例を集めるだけでは、入札や随意契約といった調達方式の選び方、個人情報の入力可否、住民対応での正確性の担保といった行政特有の論点まではカバーできません。総務省や個人情報保護委員会などの公的資料をもとに、自治体が生成AIを導入する際に押さえるべき予算、調達、セキュリティ、個人情報保護、住民対応の実務ポイントを整理していきます。自治体でAI導入の企画や調達を担当する方に向けた内容です。
目次
生成AIの導入を検討し始めたばかりで、何から手を付けるべきか悩んでいる自治体は少なくありません。事例を知ることと、実際に予算や調達の手続きを進めることの間には大きな距離があります。他自治体の導入事例をそのまま持ち込んでも、財政部門や議会への説明に必要な材料はそろわないためです。まずはmalnaへのお問い合わせで、自庁の状況を整理するところから始めるのもひとつの方法です。
自治体における生成AI導入の現状と、この記事で扱う論点
自治体における生成AIの導入とは、住民サービスの向上や職員の業務効率化を目的に、文章生成や音声応答、要約といった生成AIの機能を庁内業務や住民対応の窓口に組み込む取り組みを指します。令和6年度の調査時点で、都道府県の87.2%、指定都市の90.0%が導入済みとなっており、その他の市区町村でも29.9%まで広がっています。導入率は着実に伸びているものの、担当者からは人材不足や予算確保の難しさを課題に挙げる声が依然として多く、事例を知るだけでは導入は前に進みません。
総務省の調査では、自治体がAI導入に向けた課題として「取り組むための人材がいない、または不足している」「取り組むためのコストが高額であり予算を獲得するのが難しい」という回答が特に多くなっています。人材不足には外部人材の任用や事業者への業務委託で対応し、予算面は財務部門との早期の調整で対応する自治体が増えています。
導入の規模感は自治体によって幅があります。たとえば神戸市では2024年2月から全職員を対象にMicrosoft Copilotの利用を始め、2026年4月からは独自の庁内AI基盤の運用も予定しています。全庁展開まで進む自治体がある一方、これから予算要求を始める段階の自治体もあり、規模に応じた進め方の検討が必要です。
すでに公開している導入事例の紹介記事とは切り口を変えて、ここからは自治体に特有の予算計画、調達方式、セキュリティ要件、個人情報保護、住民対応という5つの論点を中心に扱っていきます。事例そのものよりも、その事例がどのような調達手続きやセキュリティ対策のもとで成立しているかという背景を掘り下げていきます。
予算をどう確保し、導入計画に落とし込むか
生成AIの導入予算は、初期費用と運用費用を分けて見積もり、AI導入計画書に5年程度を目安とした予算計画として落とし込むことが実務上のポイントです。単年度の費用感だけで判断すると、翌年度以降の運用費用の見込みが甘くなりやすくなります。
初期費用と運用費用を分けて見積もる
事業者からの見積もりを参考に、初期費用と運用費用を分けて記載することが計画立案の基本です。クラウドサービスの中には利用量に応じた従量課金を採用しているものもあり、想定する利用頻度や利用者数を事前に固めておかないと、運用開始後に想定外の費用がかかる可能性があります。
- 初期費用にはシステム構築費、既存システムとの連携費用を含める
- 運用費用にはライセンス費用、保守費用、追加学習にかかる費用を含める
- 従量課金のサービスは、利用頻度や利用者数を仕様書に明記し過剰請求を防ぐ
利用頻度や利用者数の想定が曖昧なまま契約すると、運用費用が計画を上回るケースがあるため、規模に関する事項は具体的な数値で仕様書に残しておく必要があります。
実証段階から本格導入までの費用の考え方
実証段階の予算は、本格導入を見据えて計画することが望ましいとされています。実証のみで終わらせるのか、本格導入・運用まで含めた調達にするのかを、計画立案の段階で庁内の関係者に明確に提示しておくことが求められます。
いわき市の介護予防AIの事例では、2019年の実証から2021年の本格導入まで2年以上をかけ、プロトタイプ端末での検証を重ねたうえで段階的に予算を積み増しています。実証から本格導入までの期間を見込んだ予算計画は、こうした段階的な進め方と整合させておくと調整がしやすくなります。
予算対効果を財政担当課に説明する視点
予算計画書には、AIの予測精度や業務削減量、費用対効果といった観点からKPIを記載し、実施体制やスケジュールとあわせて首長や議員にも理解しやすい形で示すことが求められます。財政担当課における優先順位の低さを課題に挙げる自治体も一定数あり、費用対効果を数値で示せるかどうかが予算獲得の分かれ目になりやすい状況です。
導入効果を具体的な数値で示す方法としては、あいさつ文の作成にかかる時間が1件あたり60分から20分に短縮された、法令やマニュアルの検索に要する時間が約25%削減されたといった、業務単位での削減時間を積み上げて説明する進め方が有効です。担当課からの要望だけでなく、こうした定量的な効果を財政担当課向けの資料に落とし込んでおくと、予算要求の説得力が高まります。
調達方式をどう選ぶか
自治体がAIサービスを調達する際は、一般競争入札、総合評価方式、指名競争入札、随意契約という4つの方式から、公正性と競争性を確保しながら案件の性質に合う方式を選ぶ必要があります。価格だけで決めにくいシステム開発では、価格以外の要素も評価できる方式が選ばれる傾向があります。
| 調達方式 | 概要 | 長所・短所 |
|---|---|---|
| 一般競争入札 | 不特定多数の競争により原則最低価格の申込者を落札者とする | 透明性と競争性は高いが、不適格な事業者が混入する恐れがある |
| 総合評価方式 | 技術的要素と価格を総合的に評価して落札者を決定する | 学識経験者の意見聴取など評価基準の整備に手間がかかる |
| 指名競争入札 | あらかじめ指名した事業者間で競争させる | 不適格事業者の排除がしやすい一方、指名事業者が固定化しやすい |
| 随意契約 | 信用や能力のある事業者を任意に選定する | 担当者の事務負担は軽いが、価格の妥当性が問われやすい |
調達仕様書には、業務要件、機能要件、非機能要件、役務要件、成果物の取扱いという5項目を記載します。非機能要件のうち情報セキュリティに関する事項では、自治体のセキュリティポリシーに沿った措置を事業者に求める必要があり、成果物の取扱いでは学習済みモデルなどの知的財産権の帰属を契約前に整理しておくことが欠かせません。
非機能要件で見落としやすい6つの観点
非機能要件は機能面以外でAIに求める要件を指し、システム方式や規模、信頼性、性能、拡張性、情報セキュリティという6つの観点で整理すると仕様書に落とし込みやすくなります。
| 観点 | 記載のポイント |
|---|---|
| システム方式 | セキュリティポリシーや法令を遵守できる方式を、データ所管部署などと協議のうえ決定する |
| 規模 | データ量や利用頻度、利用者数を具体的な数値で示し、従量課金による過剰請求を防ぐ |
| 信頼性 | 障害対策やデータのバックアップ、サービス利用時間の条件を明記する |
| 性能 | 求める精度や応答時間、KPIを設定するが、精度を求めすぎると学習データ増加で費用がかさむ点に留意する |
| 拡張性 | 利用者数の増加や法令改正に応じて柔軟に対応できる余地を仕様書に残す |
| 情報セキュリティ | 委託事業者の選定基準に沿った措置と、データ消去の基準を明記する |
このうち規模と信頼性は見落とされがちな項目です。利用頻度や利用者数を曖昧にしたまま契約すると、想定外の従量課金が発生したり、障害時の復旧対応が契約内容に含まれていなかったりする事態につながります。
成果物の取扱いについては、学習済みモデルの権利を事業者に帰属させたうえで、他自治体への横展開を認めるケースが複数の実証事業で見られます。自治体が保有する個人情報を学習データに使う場合でも、モデル自体から個人情報を復元できない設計であれば、モデルの権利を事業者に留保する整理が実証事業では選ばれています。
事業者選定で確認すべき評価項目
事業者選定にあたっては、システムの観点だけでなく個人情報保護の観点からの確認も必要になるため、情報システム部署や個人情報保護に関する部署に協力を依頼することが望ましいとされています。
- 自治体の業務内容や課題を理解したうえで提案が組み立てられているか
- 提案内容が求める機能要件と非機能要件を満たしているか
- データの取扱い方針や情報セキュリティ基準が自治体側の方針と合致しているか
評価項目を事前に整理しておくと、価格以外の要素で提案の実現性を判断しやすくなり、契約後のトラブルも防ぎやすくなります。
随意契約に潜むリスクと複数事業者への展開
ある自治体では、調達時点で要件を満たすAIサービスを提供する事業者が1社しかなかったため随意契約を選びました。その後、同様のサービスを提供する事業者が複数登場したという例が報告されており、調達準備の段階でサービスの普及状況や類似サービスの有無を確認し、競争性を確保できる調達方式を検討することが推奨されています。
青森県では、AIリアルタイム議事録の導入にあたり、クラウドやAI自体は大手ベンダーの製品を採用しつつ、現地でのサポート体制を重視してリースや運用の部分をプロポーザル方式で2社から選定し、地元ベンダーと委託契約を結んでいます。愛知県内39市町村では、複数自治体からの共同利用の要望をきっかけに研究会を立ち上げ、AIを活用した総合案内サービスの企画提案を公募し、参加自治体による評価に基づいて事業者を決定しました。共同利用は費用負担の軽減にもつながる進め方です。
参考:経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン1.1版」
参考:広島県「生成AI利用環境整備委託業務の選定結果について」
生成AIの調達方式は、既製サービスの導入か独自構築かによっても選び方が変わります。自庁の要件整理から仕様書の作成まで、支援先の状況に合わせて一緒に検討を進める伴走型の関わり方も選択肢のひとつです。malnaでは、AI導入の初期段階で対象業務を棚卸しし、扱う情報の範囲と利用ルールを整理するところからの相談を受けています。調達仕様書の作成そのものや、自治体の調達手続きの代行は行っていないため、そこは庁内の調達担当や専門の事業者と分担することになります。
セキュリティ要件で確認すべきこと
自治体が生成AIで取り扱う情報資産は、自治体機密性という分類に沿って整理し、分類に応じた取扱制限をクラウドサービスや委託先事業者に求める必要があります。分類を確認しないまま導入すると、必要な安全管理措置が抜け落ちるおそれがあります。
| 分類 | 分類基準の目安 | パブリッククラウドの扱い |
|---|---|---|
| 自治体機密性3A | 秘密文書に相当する情報資産 | 原則インターネットに接続しない環境での保存が求められる |
| 自治体機密性3B | 漏えい時に権利利益の侵害が大きい情報資産 | ISMAP登録サービスのみ利用可、アクセス制御や暗号化が必要 |
| 自治体機密性3C | 公表を前提としないが3Bほどの機密性は要しない情報資産 | 追加の対策基準を満たせば利用可 |
| 自治体機密性2 | 直ちに公表を前提としない情報資産 | アクセス制御や暗号化を条件に利用可 |
| 自治体機密性1 | 上記以外の情報資産 | 制限なし |
責任体制とISMAPの位置づけ
国は、行政の生成AI調達・利活用に関するガイドラインに基づき、各府省庁にAI統括責任者を置き、利活用とリスク管理のガバナンス体制を明確にしています。自治体においても、AIの利活用とリスク管理における責任者を明確にすることが求められており、要機密情報を取り扱うクラウドサービスを調達する場合は、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度であるISMAPに登録されたサービスから選ぶことが原則とされています。
専門人材の確保が難しい自治体では、都道府県による確保と派遣という形も広がっています。広島県では、県と市町が共同で採用したデジタル人材を、単独での人材確保が難しい9つの市町にCIO補佐官等として配属する取り組みを実施しています。
海外リージョンにサービスがある場合の注意点
生成AIサービスの中には、データが国外のサーバーに保存され、現地の法令が適用されるものがあります。個人情報保護委員会は2025年2月に、特定の生成AIサービスについて、データが国外に保存され現地法令が適用される点を周知しており、国外にサーバーを置くサービスを利用する際は、現地の政府等による検閲や接収を受ける可能性がある点への注意が必要です。
情報セキュリティインシデントが発生した場合に備え、情報セキュリティ統括責任者を置き、対応体制であるCSIRTを整備しておくことも欠かせません。外部委託事業者側でインシデントが発生した場合の対処手順や責任分界についても、契約前に合意しておく必要があります。
外部サービス利用時に規定しておくべき事項
自治体機密性2以上の情報を取り扱わない場合であっても、クラウドサービスを利用するには利用可能な業務の範囲や利用申請の許可権限者、管理者の指名、利用状況の管理方法という4点を規定として整備しておく必要があります。職員が個別にクラウドサービスを申請する運用では、この規定が整っていないと利用の可否判断が担当者ごとにばらつきやすくなります。
令和2年の個人情報保護法改正では、個人情報の漏えいが発生した際の報告が義務化されました。生成AIの利用中に情報セキュリティインシデントが発生した場合を想定し、庁内の報告手順や体制をあらかじめ整備しておくことが、この改正への対応としても求められます。
参考:デジタル庁「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」
参考:総務省「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」
参考:個人情報保護委員会「DeepSeekに関する情報提供」
個人情報保護をどう扱うか
自治体の業務は住民の個人情報を扱うことが多いため、生成AIへの入力が個人情報保護法や個人情報保護条例上の利用目的の範囲内かどうかを、業務ごとに丁寧に確認する必要があります。個人情報に該当するからといって生成AIの利用を一律に否定することは、業務効率化や住民サービス向上の観点でかならずしもプラスにはなりません。
個人情報保護委員会は2023年6月に生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表し、個人情報を含むデータを第三者に提供する場合の本人同意や、保有個人情報を利用・提供する際は特定された利用目的の範囲に限られることを、行政機関等に向けても示しています。個人情報保護法における提供元基準では、提供先で個人情報として認識できない情報であっても、提供元が他の情報と照合することで本人を識別できる場合は、個人情報として適切に管理したうえで提供することが求められています。
大阪市の閉域環境による条件付き入力の事例
大阪市では、ISMAP登録サービスであるMicrosoft Azureを庁内情報ネットワークと閉域接続した「大阪市共通クラウド」上に、独自の生成AI環境を構築しています。この環境のAzure OpenAI Serviceは入力データが学習に利用されない仕様のため、2024年1月の試行利用では個人情報の入力を一律禁止としていたものを、同年4月の本格導入からは条件付きで解禁しました。
具体的には、マイナンバーが含まれる特定個人情報を除き、要配慮個人情報を含む情報についても、一連の処理で1,000人分までであれば入力を運用上認めています。令和6年7月に実施したアンケートでは、生成AIを利用した職員の約80%が業務の効率化を実感したと回答しています。
このルールに至るまでの経緯にも実務上の参考点があります。大阪市は2023年5月から生成AIの調査・活用検討チームを庁内に設置し、同年9月から12月にかけて事業者と共同で利用に関する検証を行ったうえで、2024年1月からまず個人情報の入力を認めない形で試行利用を始めました。3か月にわたる試行の結果を踏まえて条件を整理し、同年4月の本格導入から入力可能な範囲を広げるという段階を踏んでおり、最初から全面解禁するのではなく試行を挟んで条件を固める進め方が採られています。
姫路市のPIA実施による透明性の確保
姫路市では、特定健診データや介護保険データなどをAIで分析するにあたり、個人情報保護審議会の答申で公益上必要な取り扱いと認められていることを確認したうえで、平成29年度に個人情報リスク評価(PIA)を実施しています。
PIAの評価項目には、個人情報の取得、利用、提供、安全管理、漏えいのリスク対策に加えて、不利益処分等への対策や個人情報保護条例への適合性まで含まれており、単に技術面の安全対策にとどまらない広い範囲でリスクを洗い出す設計になっています。取り扱うデータについても、住民記録情報や国民健康保険、後期高齢者医療、介護保険といった各制度の個人情報を、一見して個人が特定できないよう抽象化したうえでAIによる分析に用いています。項目ごとにリスク対策を整理し、住民や庁内に対して透明性を確保しながら事業を進めている点が特徴です。
参考:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」
参考:個人情報保護委員会「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直し 制度改正大綱」
住民対応に生成AIを使う際の考え方
住民対応に生成AIを使う場合は、出力に誤りが含まれる可能性を明示したうえで提供し、人が確認するルールをあらかじめ定めておくことが基本的な考え方になります。正確性への懸念だけを理由に導入を見送るのではなく、利用目的に応じて求められる正確性の水準を意識することが求められます。
誤りを許容しながら住民サービスを止めない考え方
生命や安全にかかわる機微な情報でない限り、翻訳や検索、取りまとめといった用途では、誤りが含まれる可能性を明示したうえで生成AIの出力結果を住民に提供する考え方が広がっています。たとえば外国人向けの案内の翻訳では、作成を見送るよりも、誤りの可能性を明示して公開したほうが住民の利便性が高まるという整理です。公開後に住民からの指摘で誤りが判明した場合は、修正を柔軟に行う姿勢とあわせて運用します。
同様の発想は、住民や事業者からの問い合わせ対応がきっかけで感情的なやり取りに発展しやすい場面にも当てはまります。民間企業ではカスタマーハラスメント対策として生成AIを積極的に活用し、業務効率化と従業員の心理的負担の軽減を両立させている例があり、自治体の窓口対応でも参考にできる考え方です。
神戸市のボイスボットによる税務問い合わせ対応
神戸市の税務部には、電話による問い合わせが年間40万件から50万件寄せられており、この一次対応に生成AIを活用したボイスボットを導入しています。このボイスボットは、問い合わせ内容を理解して事前に登録したFAQと結び付ける部分にのみ生成AIを使い、回答自体はFAQの中から選択される仕組みのため、事実と異なる内容を生成するハルシネーションは生じない設計になっています。FAQで回答できない場合は職員に電話をつなぐ運用です。
一関市のAI案内窓口による来庁者対応
岩手県一関市では、有人の総合案内の横に生成AIを活用した音声案内窓口を設置しています。来庁者が窓口端末に近づくと顔を認識して自動で声をかけ、問い合わせ内容を音声で受け付けて庁舎案内図などを画面にも表示します。本人確認書類をカメラで読み取らせることで、申請書類への氏名や住所の印字にも対応しており、2024年6月に事業者と契約したのち、2025年3月から来庁者向けの運用を開始しています。問い合わせ内容は生成AIに保存されない仕様です。
千葉県の福祉相談チャットボットによる県民対応
千葉県では、県と8市による共同調達で福祉相談業務システムを整備し、あわせて生成AIを活用したチャットボットで福祉相談窓口の案内を行っています。相談員向けのシステムでは相談内容の音声マイニングと要約を活用し、相談員50名を対象にした調査で相談記録の作成にかかる時間が平均22.1%減少しました。県民向けのチャットボットは本格導入から約1か月で約750件の利用があり、満足度が5段階中3以上と回答した割合は約90%に達しています。相談者の入力情報は氏名などの個人情報を入力しないよう促す設計にしたうえで、外部への共有は行っていません。
参考:総務省「自治体における AI活用・導入ガイドブック<導入手順編>(第4版)」
生成AI導入を進める体制づくり
生成AIの導入は、予算や調達の手続きを整えるだけでなく、庁内でだれが利活用とリスク管理の責任を持つのかという体制づくりとあわせて進める必要があります。CIOとAI統括責任者を兼務させる自治体が多い一方、専門的な知見からCIOやAI統括責任者を補佐する人材を別途置く動きも出てきています。
外部人材の確保が難しい自治体では、都道府県による人材の確保と派遣、複数自治体による共同設置など、単独での確保にこだわらない体制づくりが広がっています。徳島県内の石井町、神山町、那賀町、東みよし町の4町は1名のCIO補佐官を合同で確保し、契約自体は各町がそれぞれ結ぶという形を採っています。香川県内の丸亀市、善通寺市、琴平町、多度津町、まんのう町の5市町では、中讃広域行政事務組合がデジタル人材を一括で確保し、組合を構成する各市町へ助言を行う体制を組んでおり、沖縄県内の読谷村と嘉手納町も同様に1名のCIO補佐官を隣接する2町村で合同確保しています。単独の自治体では専門人材の確保が難しくても、近隣自治体との共同確保という選択肢を検討する余地があります。
体制づくりと並行して、AI導入計画書には背景と目的、事業概要、AI利活用の方針、取り扱うデータと必要な手続き、情報セキュリティ対策、期待する効果、実施体制、スケジュール、予算計画という項目を整理しておくと、首長や議員など意思決定を行う立場の人にも共通認識を持ってもらいやすくなります。社内に十分な知見を持つ人材がいない状態で検討が始まることは珍しくなく、体制づくりの初期段階から外部の知見を組み合わせて進める方法も選択肢になります。導入の検討状況にかかわらず、まずはmalnaへの問い合わせから、どこを自庁で担い、どこを外部に委ねるかを整理することができます。
よくある質問
自治体の生成AI導入に関して、担当者からよく寄せられる質問を整理しました。
自治体が生成AIを導入する際、最初に何を検討すべきですか。
まず解決したい行政課題を特定し、AI導入計画書で予算計画と情報セキュリティ対策、実施体制を整理することが最初のステップです。総務省のガイドブックでは、事前検討、計画立案、調達・事業者選定、導入、運用という5段階で進めることが示されています。
自治体の生成AI調達に入札は必須ですか。
入札は必須ではありません。技術力を重視する総合評価方式やプロポーザル方式のほか、対応できる事業者が限られる場合の随意契約もあり、案件の性質に応じて調達方式を選ぶ必要があります。競争性を確保しやすい一般競争入札もそのひとつの選択肢です。
生成AIに住民の個人情報を入力してもよいですか。
一律に禁止ではありませんが、個人情報保護条例上の利用目的の範囲内かどうか、入力データが生成AIの学習に使われない仕様かどうかを事前に確認する必要があります。条件付きで個人情報の入力を認めている自治体もあります。
自治体が生成AIを利用する際のセキュリティ要件は何を確認すればよいですか。
取り扱う情報資産を自治体機密性の分類に沿って整理し、ISMAP登録サービスの利用や自庁のセキュリティポリシーへの適合を確認します。あわせてAI統括責任者など、利活用とリスク管理の責任者を明確にすることも求められます。
住民向けに生成AIを使う場合、誤答のリスクにどう対応すればよいですか。
出力に誤りが含まれる可能性がある旨を明示したうえで提供し、利用者からのフィードバックを踏まえて回答精度を継続的に確認する運用が広がっています。人が最終確認するルールをあらかじめ定めておくことが前提になります。
まとめ
自治体が生成AIを導入する際は、事例を集めることよりも、予算計画、調達方式、セキュリティ要件、個人情報保護、住民対応という行政特有の論点を先に整理しておくことが遠回りに見えて確実な進め方です。総務省のガイドブックや個人情報保護委員会の資料には、これらの論点を検討する際に参照できる具体的な基準や事例が示されています。まずは自庁がどの論点でつまずいているのかを洗い出し、必要な部署や外部の専門家と早い段階で調整を始めることをおすすめします。
AIを使える人材が社内にいない場合
予算や調達、セキュリティの型はわかった。でも、それを自庁の実務に落とし込んで動かす人が社内にいない。
生成AIの導入は制度を理解した後、予算書や仕様書、運用ルールといった具体的な書類に落とし込む実務の段階でつまずくことが少なくありません。malnaでは、AI活用の実務経験を持つ人材をご紹介するAIタレント名鑑を運営しています。採用ではなく業務委託として、週1日から相談いただけます。
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