2026.10.12

AI

ビルメンテナンスのAI活用方法!報告書や問い合わせ対応を効率化

「点検が終わったあとの報告書づくりで、毎日のように残業が続いている」
「AIを使うよう言われても、どの事務から試せばよいか分からない」

AIエージェント導入支援

こんなお悩みはありませんか。

現場の人手が足りないなかで、点検と書類づくりを同じ担当者が抱えていると、報告書に回す時間が取れないですよね。

この記事では、ビルメンテナンス会社が生成AIで減らせる5つの事務業務と、人が担い続ける仕事の線引き、導入の4つのステップをわかりやすく解説します。

社内でAIを使い始める前の研修や、使い方のルールづくりは、malnaのAI導入支援サービスでご相談いただけます。

ビルメンテナンス業界でAIが求められる背景

ビルメンテナンスのAI活用とは、点検報告書や問い合わせへの返信などの事務を生成AIに下書きさせ、点検や清掃の現場に人の時間を回す取り組みです。

生成AIとは、文章で指示を出すと、文章の作成、要約、清書などを行うAIのことです。

代表例はChatGPTのような対話型のサービスで、パソコンやスマートフォンのブラウザから使えます。

ビルメンテナンス会社にとっては、事務所で報告書や返信文を作るときの文章の道具です。

AIが求められる背景には、現場で働く人と、現場をまとめる人の両方が足りない状況があります。

全国ビルメンテナンス協会の第56回実態調査では、ビルメンテナンス業の悩みごとの1位が「現場従業員が集まりにくい」で、回答した本社の88.5%が選びました。

調査期間は2025年10月24日から12月5日で、本社908社の回答を集計しています。

次の表は、回答の多い悩みごとのうち、人材と教育に関わる項目を抜き出したものです。

悩みごと 回答の割合
現場従業員が集まりにくい 88.5%
現場従業員の若返りが図りにくい 74.1%
現場管理者が育ちにくい 55.1%
専門技術者の確保が難しい 47.1%
教育のための時間を割くのが難しい 37.6%

同じ調査は、「現場管理者が育ちにくい」と「専門技術者の確保が難しい」が前回調査より4ポイント以上上がったと公表しています。

厚生労働省の省力化投資促進プランでは、ビルクリーニング業の有効求人倍率が約2.0から約3.0の間で推移していると示しています。

ビルクリーニング業の従事者は、令和2年の国勢調査で、60代以上が全体の57.9%、70代以上が27.0%です。

同じプランは、ビルメンテナンス業の労働生産性を、2029年度までに2024年比で25%高めることを目標にしています。

全国ビルメンテナンス協会は、2026年4月に、点検報告書や作業記録などの事務の負担をAIで減らす使い方を紹介する記事を公開しました。

人を増やしにくい以上、事務の時間を減らして点検や現場の対応に人の時間を回すことが、AIを使う目的です。

協会の記事は、現場の作業は回っていても報告書やメール対応などの事務が追いつかない状況を、現場の負担として取り上げています。

減った事務の時間は、現場管理者が新人に付き添う時間や、オーナーと打ち合わせる時間に回せます。

参考:ビルメンテナンス情報年鑑2026 第56回実態調査報告書|全国ビルメンテナンス協会

参考:省力化投資促進プラン ビルメンテナンス業|厚生労働省

参考:もう事務作業で悩まない!AIで変わるビルメン現場の働き方|全国ビルメンテナンス協会

AIで減らせる5つの事務業務

生成AIで減らせるのは、文章を書く、まとめる、探すという3種類の作業を含む事務です。

ビルメンテナンス会社の事務では、次の5つが当てはまります。

  • 点検報告書と作業報告を、現場のメモから清書する
  • オーナー向けの管理報告書を、1か月分の記録からまとめる
  • テナントからの問い合わせに、返信文の下書きを作る
  • ビルメンテナンスの作業手順書と教育資料を、ベテランの説明から作る
  • AIによる契約書と社内規程の検索で、必要な条文を探す

次の表は、5つの業務ごとに、AIに渡すものと受け取るものを示しています。

業務 AIに渡すもの AIから受け取るもの
点検報告書と作業報告 現場のメモ、点検表の項目 顧客に出せる文章の下書き
オーナー向け管理報告書 1か月分の作業記録と対応履歴 要約と翌月の予定の下書き
問い合わせへの返信 問い合わせ文、社内の対応ルール 返信文の下書き
作業手順書と教育資料 ベテランの説明のメモ 手順書と確認問題の下書き
契約書や社内規程の検索 契約書、仕様書、規程集 該当する条文と要約

どの業務でも、AIが作るのは下書きです。

顧客に出す前に、担当者が内容を確かめます。

始める業務は、1か月に作る件数と1件にかかる時間をかけ合わせ、時間の合計が大きい業務から選びます。

点検のたびに作る点検報告書と作業報告は、件数が積み上がりやすい業務です。

点検報告書と作業報告の清書

点検報告書と作業報告は、現場で書いた短いメモを、顧客に出せる文章に直す作業が中心です。

全国ビルメンテナンス協会の記事は、「3Fトイレ清掃完了、床に汚れあり、洗剤で対応」というメモから、顧客向けの報告文を作る例を示しています。

AIに渡すメモは、日時、場所、設備名、作業の内容、結果の5つを1行ずつ書く形にすると、清書の結果がそろいます。

報告書の文体や敬語は、過去に提出した報告書を1件見せて、同じ書き方で書くよう指示します。

たとえば、次のような指示文とメモを渡します。

渡すもの 書く内容の例
指示文 ビル管理会社の担当者として、次のメモを顧客向けの作業報告の文章にしてください。敬語で、1項目を2文以内にしてください
現場のメモ 10月8日、2階給湯室、排水の流れが悪い、トラップを清掃、清掃後に流れを確認
受け取る下書き 10月8日に2階給湯室の排水の流れが悪い箇所を確認し、排水トラップを清掃しました。清掃後に、排水が流れることを確認しております。

言い回しが会社の報告書と違うときは、直した報告書を次の指示に添えて渡します。

同じ直しを毎回繰り返さずに済みます。

点検表の数値は、AIの清書を通さず、点検表から報告書へそのまま写します。

AIは、数値を書き換えたり、記入していない項目を補ったりすることがあります。

参考:もう事務作業で悩まない!AIで変わるビルメン現場の働き方|全国ビルメンテナンス協会

オーナー向け管理報告書のまとめ

オーナー向けの管理報告書は、1か月分の作業記録、点検の結果、テナントからの依頼と対応を、数ページに要約する書類です。

物件が多い事業所では、月末に作成が集中し、管理者の残業につながります。

生成AIには、作業記録を貼り付けて、「実施した作業」「見つかった不具合と対応」「翌月の予定」の3つに分けて要約するよう指示します。

要約の見出しを毎月同じにすると、オーナーが前の月と比べて読めます。

依頼が多かった設備や、同じ不具合が続いた箇所を要約の最後に1行添えさせると、翌月の提案の話題にもなります。

1か月分の記録を一度に貼り付けると長くなる場合は、週ごとに要約させ、最後に4週分をまとめさせます。

要約に入った件数や日付は、作業記録と1件ずつ照合します。

テナントからの問い合わせへの返信文

テナントからの問い合わせへの返信は、受付の連絡、対応の予定、作業の日時を伝える文章で、同じ形の文面が多い業務です。

空調が効かない、照明が切れた、共用部が汚れているといった問い合わせに、過去の返信文と社内の対応ルールをもとに下書きを作らせます。

返信文の下書きは、「受け付けた内容」「現地を確認する日時」「作業の予定」の順に書くよう指示します。

件数の多い問い合わせごとに返信のひな形を5種類ほど作り、AIには問い合わせ文に合うひな形を選んで埋めさせます。

ひな形があれば、担当者ごとに言い回しや伝える項目が変わることはありません。

問い合わせの例 返信の下書きに入れる項目
3階の会議室の空調が効かない 受け付けた日時、現地を確認する予定、確認までの連絡先
1階トイレの照明が切れている 受け付けた内容、交換の予定日、交換までの注意
共用廊下に汚れがある 受け付けた内容、清掃の予定時刻

夜間や休日に届いた問い合わせも、翌朝に担当者が下書きを確かめて送れば、返信までの時間を短くできます。

作業の日時や費用は、担当者が決めてから文面に入れます。

AIの下書きには、社内で決めていない日時や費用の約束が入ることがあります。

送る前に、担当者が1文ずつ読みます。

ビルメンテナンスの作業手順書と教育資料

作業手順書と新人教育の資料は、ベテランが口頭で伝えてきた手順を、文章と確認問題にする作業です。

全国ビルメンテナンス協会の第56回実態調査では、本社の37.6%が「教育のための時間を割くのが難しい」を悩みごとに選んでいます。

ベテランが話した手順を箇条書きのメモにし、生成AIに「準備する道具」「作業の手順」「注意すること」の3つに分けて書き直させます。

手順書ができたら、新人が理解できたかを確かめる確認問題を5問ほど作らせます。

たとえば、共用部の床の定期清掃なら、使う洗剤と道具、作業の順番、滑りやすい箇所の表示の仕方を手順書に書きます。

確認問題は、「作業の前に置く表示は何か」のように、現場で間違えやすい点を選ぶよう指示します。

文章だけでは伝わりにくい手順は、現場で撮った写真を手順書に添え、写真の説明文をAIに下書きさせます。

できあがった手順書と確認問題は、ベテランが読んで現場の作業と違う箇所を直してから使います。

参考:ビルメンテナンス情報年鑑2026 第56回実態調査報告書|全国ビルメンテナンス協会

AIによる契約書と社内規程の検索

契約書や社内規程の検索は、作業の範囲や報告の期限を、長い書類から探し出す業務です。

全国ビルメンテナンス協会の記事は、社内規定集をAIに読み込ませて、報告の期限などを質問する使い方を紹介しています。

契約書や仕様書では、定期清掃の回数、点検の周期、報告書の提出期限のような項目を質問すると、該当する箇所と要約が返ってきます。

AIには、契約書の何条に書いてあるかも答えさせ、担当者が原文で確かめます。

物件ごとに契約の内容が違う会社では、担当者が替わったときの引き継ぎで、作業の範囲を確かめる場面が増えます。

質問の例は、「〇〇ビルの契約で、窓ガラスの清掃は年に何回か」「報告書はいつまでにオーナーへ出すか」のような1問1答の形です。

契約書や仕様書には顧客の情報が含まれるため、入力したデータをAIの学習に使わない設定の法人向けプランで使います。

あわせて、顧客との契約で、書類を外部のサービスに入力してよいかを先に確かめます。

参考:もう事務作業で悩まない!AIで変わるビルメン現場の働き方|全国ビルメンテナンス協会

関連記事:バックオフィスの生成AI活用事例!導入方法と注意点も解説

AIで減らせる5つの事務業務

人が担い続けるビルメンテナンスの仕事

AIに渡せるのは文章の下書きと情報の検索で、建物の状態を判断し、結果に責任を負う仕事は人が担います。

人が担い続ける仕事は、次の3つです。

  • 建築物環境衛生管理技術者として、維持管理の全体を監督する
  • AIでは決められない点検結果の判断と、修理や是正の指示を担う
  • 漏水や停電などの緊急時に現場で対応し、オーナーと費用や日程を調整する

AIでビルメンテナンスの仕事がなくなるかという問いには、事務の時間は減っても、判断と現場の対応は人の仕事として残る、と答えられます。

仕事 AIが手伝えること 人が担うこと
維持管理の監督 報告書や記録の下書き 管理の監督と、所有者などへの意見
点検結果の判断 過去の記録の検索 修理の要否と時期の判断
緊急時の対応 事後の報告書の下書き 現場の作業、費用と日程の調整

管理技術者による維持管理の監督

建築物衛生法では、特定建築物の所有者等は、免状を持つ人のなかから建築物環境衛生管理技術者を選任しなければなりません。

選任の義務があるのは、法律で定める特定建築物にあたる建物です。

厚生労働省は、建築物環境衛生管理技術者の役割を、特定建築物の維持管理が環境衛生上適正に行われるように監督することだと示しています。

管理技術者は、維持管理が管理基準に従って行われるように、必要なときは所有者などに意見を述べることができます。

特定建築物の維持管理では、監督は免状を持つ人の役割です。

AIが下書きした報告書も、管理技術者が内容を確かめてから提出する流れにします。

参考:建築物環境衛生管理技術者について|厚生労働省

AIでは決められない点検結果の判断

点検結果の判断とは、点検で記録した数値や状態をもとに、修理が必要か、いつ直すかを決める仕事です。

AIは過去の点検記録から同じ設備の記録を探せても、建物の現物を見て判断することはできません。

修理の要否、業者への発注、テナントへの連絡の順番は、設備の担当者と管理者が決めます。

判断には、建物の使われ方、オーナーの予算、過去の修理の経緯といった、記録に書かれていない事情も含まれます。

AIに過去の記録を探させる場合も、判断の結果と理由は担当者が記録に書きます。

緊急時の対応とオーナーとの調整

緊急時の対応は、漏水や停電などの不具合に現場で対応し、オーナーやテナントと費用や日程を調整する仕事です。

現場では、止水や復旧の作業を優先し、対応の状況をオーナーに電話で伝えます。

テナントへの連絡、修理業者の手配、保険の手続きなど、同時に進める作業の順番も、現場を知る管理者が決めます。

事後の報告書の文面はAIに下書きさせても、謝罪の内容、費用の負担、再発を防ぐ対策は管理者が決めて伝えます。

オーナーとの関係は日々の対応の積み重ねで続くものです。

AIの下書きを使う場合も、担当者の言葉で伝える部分を残します。

AI導入でつまずきやすい課題

AI導入でつまずきやすいのは、記録の形、使う人の偏り、効果の測り方の3つです。

それぞれ、次のような状態を指します。

  • 点検の記録が紙や個人のメモに残り、AIに渡せない
  • 生成AIを使う人が一部の社員に偏り、事業所に定着しない
  • 導入の効果を数字で示せず、続けるかどうかを決められない

点検の記録が紙のまま残っている

点検の記録が紙の点検表や個人のメモ帳に残っていると、AIに渡すには入力し直す手間がかかります。

最初に決めるのは、報告書のもとになるメモの書き方です。

日時、場所、設備名、作業の内容、結果の5項目を、スマートフォンのメモやチャットに1行ずつ書く形にそろえます。

書き方が決まれば、AIに渡す前の書き直しが減り、担当者が替わっても同じ形の報告書が作れます。

紙の点検表を使い続ける場合も、報告書に写す項目だけは、点検が終わった時点でメモに書き写しておきます。

過去の紙の記録をすべて入力し直す必要はなく、試行を始める月から新しい書き方にそろえれば足ります。

生成AIを使う人が一部の社員に偏る

生成AIを使う人が、事務担当や若手の一部に偏ると、事業所全体の事務は減りません。

現場管理者は日中に現場を回るため、AIの使い方を覚える時間を取りにくい立場にあります。

使い方は、業務ごとに指示文のひな形を作って事業所で共有します。

指示文とは、AIに出す指示の文章のことで、プロンプトとも呼ばれます。

たとえば点検報告書なら、「ビル管理会社の担当者として、次のメモを顧客向けの報告文に直してください」のように、役割と目的を書いたひな形を用意します。

ひな形は、事業所の共有フォルダや社内のチャットに置き、誰でも同じ文面を使えるようにします。

使い方の質問を受ける担当者を事業所ごとに1人決めておくと、使う人が少しずつ増えます。

効果を数字で示せない

効果を数字で示せないと、AIの利用料や研修の時間をかけ続けてよいか、経営者が決められません。

導入の前に、対象の業務を2週間測っておきます。

測る項目は、報告書1件あたりの作成時間、上長が修正を求めた回数、点検から提出までの日数の3つです。

測る項目 分かること
報告書1件あたりの作成時間 事務の時間がどれだけ減ったか
上長が修正を求めた回数 下書きの質が保てているか
点検から提出までの日数 オーナーへの報告が早まったか

報告書の数値の誤記や、顧客からの差し戻しも、修正の回数に含めて数えます。

導入後も同じ3項目を測り、導入前と比べます。

記録は、表計算ソフトに日付、物件名、作成時間、修正の回数を1行ずつ書く形で足ります。

測る人の負担が大きいと記録が続かないため、試行の期間は1つの業務と1人の担当者に限ります。

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ビルメンテナンス会社が生成AIを導入する4つのステップ

ビルメンテナンス会社が生成AIを導入するときは、業務の書き出しから始め、1つの業務での試行、社内ルール、他の事業所への展開の順に進めます。

4つのステップは、次のとおりです。

  • 事務の業務を書き出し、AIで減らせる業務に印を付ける
  • 対象を1つ決めて試し、作成時間と修正の回数を比べる
  • 社内ルールと研修をそろえ、入力してよい情報と確認する人を決める
  • 他の事業所へ広げ、指示文のひな形と結果を共有する
ステップ 決めること できあがるもの
事務の業務を書き出す 試す業務の候補 業務の一覧と、かかる時間
対象を1つ決めて試す 試す業務、物件、担当者、期間 作成時間と修正の回数の記録
社内ルールと研修をそろえる 入力してよい情報、確認する人 社内ルールと指示文のひな形
他の事業所へ広げる 次に広げる事業所と業務 事業所ごとの測った結果

事務の業務を書き出す

最初のステップは、事業所ごとに1週間分の事務を書き出すことです。

書き出す項目は、業務の名前、回数、1回にかかる時間、使う書類の4つです。

書き出した業務のうち、文章を書く、まとめる、探す作業を含むものに印を付けます。

印を付けた業務のなかで、回数が多く、1回の時間が長い業務が、最初に試す候補になります。

対象を1つ決めて試す

2つ目のステップは、1つの業務を選び、2〜4週間試すことです。

全国ビルメンテナンス協会の記事も、まず1つの業務から試す進め方を示しています。

点検報告書なら、1つの物件と1人の担当者から始め、導入前に測った作成時間と修正の回数を比べます。

試すあいだは、うまくいった指示文と、修正が必要だった箇所を記録しておきます。

試行の最後に、担当者と上長が、作成時間と修正の回数を見て、続けるか、指示文を直してもう一度試すかを決めます。

参考:もう事務作業で悩まない!AIで変わるビルメン現場の働き方|全国ビルメンテナンス協会

社内ルールと研修をそろえる

3つ目のステップは、AIを使う社内ルールを決め、使う人に研修を行うことです。

社内ルールに書くのは、入力してよい情報と入力しない情報、顧客に出す前に確認する人、できあがった報告書の保存場所の3つです。

社内ルールはA4の用紙1枚に収まる長さにし、事業所の全員が読める場所に置きます。

研修では、試行で記録した指示文を使い、役割と目的を具体的に書く指示の出し方を練習します。

現場管理者が参加しやすいよう、研修は1回30分ほどに分け、朝礼や事業所の会議の時間に組み込みます。

他の事業所へ広げる

4つ目のステップは、試行の結果と指示文のひな形を、他の事業所と次の業務に広げることです。

試行で作成時間が減った業務は、指示文のひな形と社内ルールをまとめて、他の事業所に渡します。

次に試す業務は、管理報告書や問い合わせへの返信のように、点検報告書と同じく文章を作る業務から選びます。

業務を増やすたびに、作成時間と修正の回数を測り直します。

広げる事業所は、試行した物件と規模や業務が近い事業所から選ぶと、同じ指示文のひな形をそのまま使えます。

事業所ごとに使い方の質問を受ける担当者を決め、月に1回、うまくいった指示文を持ち寄る場を作ると、ひな形が増えていきます。

生成AIを導入する4つのステップ

生成AIを安全に使うための注意点

生成AIを安全に使うための注意点は、入力する情報、回答の誤り、報告書の最終版の扱いの3つです。

次の3つを、社内ルールに書いておきます。

  • 顧客と建物の情報は、名前を置き換えるか、学習に使わない設定のプランで入力する
  • AIの回答の誤りに気づけるよう、数値、日付、法令の名前を人が原本で確かめる
  • 報告書の最終版は人が確認し、確認した人の名前を残して保存する

顧客と建物の情報の入力

顧客と建物の情報は、無料のAIサービスにそのまま入力しません。

全国ビルメンテナンス協会の記事は、顧客名や個人情報を入力せず、「顧客A」のように置き換えるよう呼びかけています。

個人情報保護委員会は、本人の同意を得ずに個人データを含む指示文を入力する場合、提供事業者が機械学習に使わないことなどを十分に確かめるよう注意を促しています。

ビルメンテナンスでは、鍵の保管場所や機械室の暗証番号のように、建物の安全に関わる情報も入力しない情報に含めます。

名前を置き換えた情報でも、入力してよい範囲は、社内ルールと顧客との契約で許された情報に限ります。

情報の種類 入力のしかた
顧客名、テナント名、担当者の氏名 「顧客A」「テナントB」に置き換える
電話番号、メールアドレス 入力しない
鍵の保管場所、暗証番号 入力しない
点検の数値、作業の内容 物件名を置き換えて入力する

参考:もう事務作業で悩まない!AIで変わるビルメン現場の働き方|全国ビルメンテナンス協会

参考:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等|個人情報保護委員会

AIの回答の誤りと人による確認

生成AIの回答には、もっともらしい文章のなかに誤った内容が入る場合があります。

ビルメンテナンスの事務で起きやすい誤りは、点検の数値の書き換え、日付や曜日の取り違え、点検表にない作業の書き足しの3つです。

個人情報保護委員会の注意喚起も、生成AIの応答結果に不正確な内容が含まれることがあると示しています。

点検の数値、作業の日付、法令や規格の名前は、AIの回答を使わず、点検表や原本で確かめます。

全国ビルメンテナンス協会の記事も、AIの回答をうのみにせず、人の目で最終確認するよう呼びかけています。

参考:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等|個人情報保護委員会

参考:もう事務作業で悩まない!AIで変わるビルメン現場の働き方|全国ビルメンテナンス協会

報告書の最終版の扱い

オーナーに提出する報告書の最終版は、AIの下書きではなく、担当者が確認して直した版です。

最終版には、作成した人と確認した人の名前を残し、社内で決めた保存場所に保存します。

AIとのやり取りの画面は、最終版の代わりに保存しません。

報告書のファイル名には、物件名、点検日、版の番号を入れ、AIの下書きと最終版を取り違えないようにします。

後から内容を問われたときに、どの点検表をもとに誰が確認したかを、最終版と点検表を見せて説明できるようにしておきます。

導入コストの考え方

AI導入のコストは、ツールの利用料、社内の教育にかかる時間、業務に合わせた仕組みづくりの費用の3つに分けて見積もります。

3つの費用は、次のとおりです。

  • 生成AIツールの利用料は、プランの種類と使う人数で決まる
  • 社内の教育にかかる時間は、研修の回数と参加する人数で決まる
  • 業務に合わせた仕組みづくりの費用は、つなぐ書類とシステムの数で変わる
費用 金額が変わる条件
ツールの利用料 プランの種類、使う人数
社内の教育にかかる時間 研修の回数、参加する人数
仕組みづくりの費用 つなぐ書類やシステムの数、運用を続ける支援の範囲

生成AIツールの利用料

ツールの利用料は、生成AIのサービスを使うための月額や年額の料金です。

全国ビルメンテナンス協会の記事は、ChatGPTを無料プランから始める手順を紹介しています。

顧客の情報を含む報告書や契約書を扱う場合は、入力したデータを学習に使わない設定ができる法人向けのプランを選びます。

料金はプランの種類と使う人数で変わるため、まず試行に参加する人数分だけ契約します。

法人向けのプランを比べるときは、データを学習に使わない設定に加えて、やり取りの保存期間と、使う人の追加や削除を管理者がまとめて行えるかも見ます。

退職や異動のときに管理者が登録を外せれば、辞めた人が顧客の情報の入ったやり取りを見られる状態を残さずに済みます。

参考:もう事務作業で悩まない!AIで変わるビルメン現場の働き方|全国ビルメンテナンス協会

社内の教育にかかる時間

社内の教育にかかる時間は、研修に参加する人が現場や事務を離れる時間です。

1回30分の研修を4回行い、10人が参加すれば、合計で20時間になります。

研修の時間は、試行で測った削減時間と比べて、何か月で取り戻せるかを見ます。

研修を朝礼や会議の時間に組み込めば、現場を離れる時間を新しく作らずに済みます。

仮に、1件30分かかる報告書を月に40件作り、AIの下書きで1件あたり10分短くなれば、減る時間は月400分です。

400分は約6.7時間なので、20時間の研修は約3か月分の削減時間で取り戻せる計算になります。

業務に合わせた仕組みづくりの費用

業務に合わせた仕組みづくりの費用は、点検表のデータを読み込み、報告書の下書きまでを自動で作るような仕組みを作るときにかかります。

AIエージェントとは、指示を受けて、データの読み込みから書類の作成までの複数の作業を、順番に進めるAIの仕組みのことです。

見積もりでは、構築する範囲、運用を続ける支援、AIの利用料やシステムの従量課金を、項目ごとに分けて書いてもらいます。

従量課金とは、使った量に応じて料金が変わる払い方で、作る報告書の件数が増えるほど料金も増えます。

試行で減った時間と仕組みづくりの費用を比べ、事業所を増やしたときに回収できるかを確かめてから発注します。

導入コストを3つに分けて見積もる

社内で進める範囲と外部の支援を使う場面

業務の書き出し、1つの業務での試行、社内ルールの作成は、ビルメンテナンス会社が自社で進められます。

外部の支援を使うのは、次のような場面です。

  • 点検表のデータから報告書の下書きまでを、毎回手で貼り付けずに作りたい場面
  • 複数の事業所で、同じ指示文とルールを使う運用を続けたい場面
  • 現場管理者を含む社員に、短い時間で使い方を覚えてもらいたい場面
  • 試行の結果から、どの業務に費用をかけるかを判断したい場面

まず自社で1つの業務を試し、作成時間と修正の回数が測れた段階で、次の業務に広げるか、仕組みを作るかを決めます。

測った作成時間が試行の前よりはっきり減っていれば、同じ業務を他の事業所に広げる段階です。

減り方が小さい場合は、メモの書き方や指示文のひな形を見直してから、もう一度試します。

社内で進めるときに時間がかかりやすいのは、点検表のデータと報告書の様式をつなぐ作業と、事業所ごとに違う書き方をそろえる作業です。

報告書を作る件数が多い会社ほど、下書きを毎回手で作る形から、データを読み込んで下書きまで作る仕組みに変えたときに減る時間も大きくなります。

関連記事:不動産業界のAI活用事例3選!活用方法と導入のポイントを解説

点検報告書づくりを試し、事業所全体に広げる仕組みを作る段階では、malnaの成果報酬型AIエージェント構築支援でご相談いただけます。

業務の棚卸しと診断は無料で、減らせる工数の見積もりから始められます。

AIを使える人材が社内にいない場合

AIで減らす事務は決まった。

でも、点検表から報告書までをつなぐ作業を進める人が社内にいない。

1つの物件で試した報告書の下書きを他の事業所へ広げるには、現場の声を聞きながら指示文とルールを直し続ける担当者が欠かせません。

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malnaブログ編集部

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