2026.10.12
賃貸管理のAI活用事例!効率化できる業務と導入時の注意点
「入居者からの電話とメールに追われて、オーナーへの報告書が後回しになる」
「AIを使いたいが、入居者の個人情報を入力してよいのか分からない」

目次
こんなお悩みはありませんか。
問い合わせの対応と書類の作成が重なると、どの業務からAIに渡せばよいか見当がつかないですよね。
この記事では、賃貸管理の6つの業務ごとに、AIに任せる部分と人が担う部分の分け方を、各社が公表した事例とあわせてわかりやすく解説します。
自社の管理業務のどこからAIに渡すかの整理は、malnaの成果報酬型AIエージェント構築支援でご相談いただけます。
賃貸管理でAI活用が求められる背景
賃貸管理のAI活用とは、入居者対応や書類の作成といった管理業務の一部を、AIに一次対応や下書きとして任せる取り組みです。
最終的な判断と、入居者・オーナーへの説明は、管理会社の担当者が行います。
AIの活用が求められる背景には、次の3つがあります。
| 背景 | 賃貸管理の現場で起きること |
|---|---|
| 人手不足 | 少ない担当者で、多くの物件と入居者に対応する |
| 物件ごとの知識の偏り | 設備やルールを知る担当者が不在だと、回答に時間がかかる |
| 法定の定期報告 | オーナーへ渡す管理業務報告書を、物件ごとに作る |
帝国データバンクが2026年4月に行った調査では、正社員が不足していると答えた企業は全業種で50.6%でした。
調査は全国2万3,083社が対象で、有効回答は1万538社です。
賃貸管理の仕事は、入居者からの連絡が夜間や休日にも届くため、少ない人数で回すと担当者の負担が偏ります。
イタンジは、人手不足のなかで、物件ごとの細かな知識が担当者個人に偏りやすいことを課題に挙げています。
設備の型番やゴミ出しのルールを知る担当者が休むと、入居者への回答が翌日以降に延びます。
賃貸住宅管理業法は、賃貸住宅管理業者に、管理業務の実施状況などを定期的に委託者へ報告するよう求めています。
委託者とは、管理を任せている物件のオーナーです。
賃貸住宅管理業法でいう管理業務は、居室の点検・清掃・修繕といった維持保全と、維持保全とあわせて行う家賃や敷金などの金銭の管理です。
自社が所有する物件を除いて管理する賃貸住宅が200戸以上の事業者は、国土交通大臣の登録を受けなければなりません。
報告書は、管理受託契約を結んだ日から1年を超えない期間ごとに作り、オーナーに渡して説明します。
管理戸数が増えるほど、報告書の作成にかかる時間も増えます。
参考:企業の50.6%が正社員不足|帝国データバンク(PR TIMES)
参考:「ITANDI 賃貸管理」、AI入居者対応支援機能を提供開始|イタンジ(PR TIMES)
参考:賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律|e-Gov法令検索
参考:賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則|e-Gov法令検索
関連記事:不動産業界のAI活用事例3選!活用方法と導入のポイントを解説
AIで効率化できる6つの業務
賃貸管理でAIに任せやすいのは、物件の資料や対応の記録といった決まった情報をもとに、回答や文書を作る業務です。
次の6つの業務で、AIに任せる部分と人が担う部分を分けられます。
- 入居者からの問い合わせ対応で、よくある質問への回答と内容の仕分けを任せる
- 修繕依頼の受付で、症状の聞き取りと受付票の作成を任せる
- 家賃の入金確認のあと、未入金の入居者への連絡文の下書きを任せる
- 契約更新と退去精算で、案内文と精算書の下書きを任せる
- 空室の募集条件の見直しで、周辺の賃料や反響の集計を任せる
- オーナーへの定期報告書で、対応記録から文案を作る作業を任せる
分けるときの基準は、答えが記録や資料に書いてあるかどうかです。
ゴミ出しの曜日や更新料の金額のように、資料を見れば答えが決まるものはAIに任せられます。
費用の負担、オーナーの承認、現地の状況のように、人が判断して責任を持つものは担当者が担います。
| 業務 | AIに任せる部分 | 人が担う部分 |
|---|---|---|
| 問い合わせ対応 | よくある質問への回答、内容の仕分け | 緊急の連絡への対応、回答案の送信判断 |
| 修繕依頼の受付 | 症状の聞き取り、受付票の作成 | 現地の確認、業者の手配、費用負担の判断 |
| 入金確認と未入金の連絡 | 連絡文の下書き | 入居者への電話、保証会社への連絡の判断 |
| 契約更新と退去精算 | 案内文と精算書の下書き | 金額の確定、入居者への説明 |
| 募集条件の見直し | 周辺の賃料と反響の集計 | オーナーへの提案と決定 |
| 定期報告書 | 対応記録からの文案 | 内容の確認、オーナーへの交付と説明 |
入居者からの問い合わせ対応
入居者からの問い合わせ対応は、賃貸管理の業務のなかで、AIに任せる範囲を最も広く取りやすい業務です。
ゴミ出しの曜日、駐輪場の場所、家賃の振込先、退去の連絡方法といった質問は、物件ごとに答えが決まっています。
AIは、物件ごとに登録した情報を参照して回答し、答えられない質問を担当者へ回します。
AIに参照させるよくある質問は、物件ごとに、質問と答えと更新日を1組にして登録します。
| 質問 | 答えの例 | 物件や契約で変わるか |
|---|---|---|
| ゴミ出しの曜日 | 燃えるごみは月曜と木曜の朝 | 物件ごとに変わる |
| 家賃の振込先 | 契約書に書いた口座 | 契約ごとに変わる |
| 退去の連絡方法 | 契約書で決めた期限までに書面で | 契約ごとに変わる |
答えに更新日を付けておくと、古い情報が残っていないかを担当者が見つけやすくなります。
問い合わせの内容を、設備、騒音、契約、退去などに仕分ける作業も、AIに任せられます。
一方で、漏水、火災、ガスのにおい、鍵の紛失のように急ぐ連絡は、AIで止めずに担当者や緊急窓口へ回します。
AIが作った回答案を入居者へ送る前に人が読むかどうかは、質問の種類ごとに決めておきます。
修繕依頼の受付と業者への手配
修繕依頼の受付では、AIが症状を聞き取り、担当者が業者を手配するという分担になります。
入居者から「エアコンが冷えない」と連絡が来たとき、AIは場所、症状、いつからか、型番、写真を順に尋ねます。
聞き取った内容を受付票にまとめれば、担当者は電話をかけ直さずに業者へ連絡できます。
受付票に入れる項目は、次のとおりです。
- 部屋番号と入居者の名前
- 不具合の場所と症状
- 不具合が始まった日時
- 設備の型番と写真
- 業者が訪問できる日時
AIが聞き取る順番を決めておくと、入居者が同じことを何度も答えずに済みます。
業者を呼ぶか、入居者に操作を試してもらうかは、担当者が受付票を見て決めます。
修繕の費用を貸主と借主のどちらが負担するかは、契約書の内容と現地の状況で、担当者が判断します。
一定の金額を超える修繕でオーナーの承認を得る場合も、承認の依頼は担当者から出します。
家賃の入金確認と未入金の連絡
家賃の入金確認では、入金の照合は管理システムで行い、未入金の入居者への連絡文の下書きをAIに任せます。
連絡文は、1回目の連絡、期日を過ぎた後の連絡など、段階ごとに文面を変えます。
未入金の連絡文には、支払いの期日、金額、振込先、問い合わせ先を入れ、責める言い回しは使いません。
文面の言い回しは責任者が一度読んで決め、AIの下書きは毎回同じ文面をもとに作ります。
AIは、入居者の名前や金額を入れる前の文面を用意し、担当者が内容を見て送ります。
入居者が事情を説明してきた場合や、支払いの約束をする場合は、担当者が電話で話を聞きます。
家賃保証会社への連絡や、法的な手続きに進むかどうかは、担当者と責任者が判断します。
契約更新と退去精算の書類
契約更新と退去精算では、決まった様式の文書をAIが下書きし、金額と説明は担当者が受け持ちます。
更新の時期が近い入居者への案内文は、契約の満了日、更新料の金額、手続きの期限を入れた文面を、AIで下書きできます。
退去精算では、退去立会いの記録をもとに、精算書の項目と説明文の下書きを作ります。
精算の金額を決めるのは担当者です。
特約の読み方や、入居者の負担になる範囲は、契約書と立会いの写真を見て、担当者が入居者に説明します。
空室の募集条件の見直し
空室の募集条件の見直しでは、AIが周辺の募集賃料と反響の数を集計し、担当者がオーナーに提案します。
空室の期間が長い物件について、周辺の似た間取りの募集賃料、問い合わせの件数、内見の件数を比べると、条件を見直す根拠になります。
比べる物件は、エリア、間取り、築年数、駅からの距離、募集の時点をそろえて選びます。
周辺の募集賃料を外部のサイトから集める場合は、サイトの利用規約で取得と利用が認められているかを先に確かめます。
AIは、集計した数字から賃料や初期費用の変更案を挙げ、オーナーへの提案文の下書きを作ります。
賃料を下げるか、設備を足すかを決めるのはオーナーで、担当者は数字をもとに説明します。
募集の広告の出し方は、仲介会社と連携して決めます。
関連記事:不動産賃貸仲介の集客方法7選|予算別(月30万〜1億円超)の施策配分と運用の考え方【2026年版】
オーナーへの定期報告書
オーナーへの定期報告書では、AIが対応の記録から文案を作り、担当者が内容を確かめて渡します。
賃貸住宅管理業法の施行規則は、管理業務報告書に書く事項として、次の3つを挙げています。
- 報告の対象となる期間
- 管理業務の実施状況
- 入居者からの苦情の発生状況と対応状況
問い合わせと修繕の記録が管理システムに残っていれば、AIは期間内の件数と主な対応を文章にまとめられます。
記載事項ごとに、文案のもとになる記録と、担当者が確かめることを分けると、次のとおりです。
| 記載事項 | 文案のもとになる記録 | 担当者が確かめること |
|---|---|---|
| 報告の対象となる期間 | 管理受託契約を結んだ日 | 対象の期間が1年を超えていないか |
| 管理業務の実施状況 | 点検・清掃・修繕の記録、家賃の入金の記録 | 件数と金額が記録と合うか |
| 苦情の発生状況と対応状況 | 入居者からの問い合わせの記録 | 対応中の苦情が抜けていないか |
管理受託契約の期間が満了したあとも、遅れずに報告書を作ります。
施行規則は、報告書をオーナーに交付して説明するよう求めています。
文案の数字と記載が記録と合っているかを担当者が確かめてから、オーナーへ渡します。
参考:賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則|e-Gov法令検索

各社が公表したAI活用事例
各社が公表した賃貸管理のAI活用事例から、入居者対応の支援、入居者向けのチャットボット、報告書の自動化、管理データの確認の4つを紹介します。
それぞれの事例の対象業務とAIの役割は、次のとおりです。
- イタンジの入居者対応支援機能で、問い合わせへの回答案をAIが示す
- 旭化成不動産レジデンスのAIチャットボットで、入居者の質問に生成AIが答える
- ハタスの定期報告書の自動化で、コールセンターの記録から報告書の文案を作る
- GMO ReTechのMCPサーバーで、管理データを対話形式で確かめる
| 事例 | 対象業務 | AIの役割 | 人の関わり方 |
|---|---|---|---|
| イタンジ | 入居者からの問い合わせ | 回答案の提示 | 現場の判断と入居者への応対 |
| 旭化成不動産レジデンス | 入居者アプリでの質問 | 会話を重ねて回答を示す | 解決が難しい質問は問い合わせフォームへ |
| ハタス | オーナーへの定期報告書 | 報告書の文案の作成 | 担当者が確認・修正して発送 |
| GMO ReTech | 稼働率や空室数の確認 | 管理データの集計と表示 | 結果を読んで判断する |
4つの事例では、AIが回答や文案、集計を受け持ち、AIで解決が難しい質問や送る前の確認、現地での判断を人が受け持っています。
AIに任せる業務は、入居者からの質問、報告書、管理データの集計と、記録や資料をもとに答えを作れるものに集まっています。
イタンジの入居者対応支援機能
イタンジは、2026年3月から、「ITANDI 賃貸管理」の入居者システムでAI入居者対応支援機能の提供を始めました。
入居者からの問い合わせに対して、物件情報や過去のやり取りの文脈を参照し、回答案を示す機能です。
問い合わせに応じた確認の要点を示し、過去の経緯などの情報を事前に集めて整理する機能もあります。
イタンジは、設備故障の確認のように、現地を目視で判断する業務は、デジタルだけでは完結できないと説明しています。
担当者が現場での判断や入居者への応対に時間を使えるようにすることが、機能のねらいです。
参考:「ITANDI 賃貸管理」、AI入居者対応支援機能を提供開始|イタンジ(PR TIMES)
旭化成不動産レジデンスのAIチャットボット
旭化成不動産レジデンスは、2025年11月4日から、賃貸住宅の入居者専用アプリ「My Concier」にAIチャットボットを導入しました。
入居者が入力した質問に対して、生成AIが質問の意図に合う回答を探し当てるまで、会話を繰り返します。
入居者は、多くのよくある質問から答えを探したり、電話をかけたりする手間を省けます。
AIで解決が難しい質問は、問い合わせフォームへ誘導します。
導入前は、入居者からの問い合わせ対応の半数以上をオペレーターが担い、電話が集中する時間帯にはつながらないことがありました。
参考:賃貸住宅入居者専用アプリに「AIチャットボット」導入|旭化成ホームズ(PR TIMES)
ハタスの定期報告書の自動化
ハタスは、AIとRPAを使って、賃貸管理業務のコールセンターでの定期報告書の作成を自動化したと、2025年5月7日に発表しました。
RPAとは、パソコン上の決まった操作を、ソフトウェアに自動で行わせる道具のことです。
ハタスは、入居者からの電話に24時間対応するコールセンター業務を、社員の持ち回りから外部の企業へ委託していました。
委託後は、外部から届く対応結果を確かめ、自社の管理システムへ手で入力し直す業務が新たに生じていました。
そこで、コールセンターの対応データをCSV形式で一括ダウンロードし、RPAが集計し、AIが報告書の文案を作る流れを作りました。
最終的な報告書は、担当者が確認して修正したあと、物件のオーナーへ発送します。
約35時間かかっていた定期報告書の作成が、約1時間で終わるようになりました。
参考:賃貸管理の報告書作成を自動化で97%時短、ハタスがRPAとAIで新プロセス構築|BUILT
GMO ReTechの管理データを対話で確かめる仕組み
GMO ReTechは、2026年9月24日から、「GMO賃貸DX MCPサーバー」をオプションとして提供しています。
ClaudeやChatGPTに話しかけるだけで、賃貸管理のデータを確かめたり、集計したりできます。
質問の例には、今の稼働率と空室数を3か月前と比べる問いかけが挙げられています。
稼働率、空室数、対応状況をまとめたダッシュボードを作る指示もできます。
オーナーや入居者の氏名・連絡先などの個人情報は生成AIに渡さず、AIからオーナーや入居者への送信や公開もできないように作られています。
担当者は、表計算ソフトで集計する時間を減らし、数字を読んでオーナーへの提案を考える時間に回せます。
参考:AIに”話しかけるだけ”で賃貸管理データを確認・分析「GMO賃貸DX MCPサーバー」を提供開始|GMO ReTech
導入で得られるメリット
賃貸管理でAIを使うメリットは、対応の時間が減ること、回答の内容が担当者ごとにばらつかなくなること、提案に使える時間が増えることです。
- 電話とメールの対応時間が減り、担当者が一度に抱える問い合わせが少なくなる
- 担当者ごとの回答のばらつきが減り、物件ごとの情報で同じ答えを返せる
- オーナーへの提案に時間を回せ、空室や修繕の相談に応じやすくなる
電話とメールの対応時間が減る
よくある質問にAIが答えるようになると、担当者が電話とメールに使う時間が減ります。
旭化成不動産レジデンスは、電話がつながりにくい時間帯の問題を受けて、入電の数そのものを減らすためにAIチャットボットを導入しました。
入居者にとっても、夜間や休日にゴミ出しの曜日や振込先を知りたいとき、電話を待たずに答えを得られます。
ハタスの事例のように、記録の集計と報告書の文案をAIに任せると、書類作成の時間も減ります。
参考:賃貸住宅入居者専用アプリに「AIチャットボット」導入|旭化成ホームズ(PR TIMES)
参考:賃貸管理の報告書作成を自動化で97%時短、ハタスがRPAとAIで新プロセス構築|BUILT
担当者ごとの回答のばらつきが減る
AIが物件ごとに登録した情報を参照して答えると、担当者が替わっても、入居者に返す答えが同じになります。
物件の設備やルールを詳しく知る担当者が休んでいても、AIは登録された情報から回答できます。
ハタスは、報告の内容を標準化したことで、記載漏れや誤った記載のリスクを下げたと発表しています。
回答のもとになる情報を一か所にまとめる作業は、新しく入った担当者が物件を覚えるときにも使えます。
参考:賃貸管理の報告書作成を自動化で97%時短、ハタスがRPAとAIで新プロセス構築|BUILT
オーナーへの提案に時間を回せる
問い合わせと書類作成の時間が減った分、担当者はオーナーへの提案に時間を回せます。
空室が続く物件の募集条件の見直し、修繕の時期の相談、入居者からの苦情の傾向の説明は、オーナーとの話し合いが必要な業務です。
GMO ReTechの仕組みのように、稼働率や空室数をAIに問いかけて確かめられれば、提案に使う数字を集める時間も短くなります。
空室の期間や修繕の履歴を数字で示せると、オーナーが修繕や賃料の見直しを決める場面で説明しやすくなります。
参考:AIに”話しかけるだけ”で賃貸管理データを確認・分析「GMO賃貸DX MCPサーバー」を提供開始|GMO ReTech

賃貸管理でAIを使うときの注意点
賃貸管理でAIを使うときは、入居者の個人情報、AIの回答の誤り、法定の報告書、現地での判断の4つに注意します。
- 入居者の個人情報を入力する前に、利用目的とAIサービスの学習の扱いを確かめる
- AIの回答の誤りが入居者に届かないよう、回答のもとになる情報を限る
- 法定の報告書は、AIの文案を人が確かめてから交付して説明する
- 現地を見て判断する場面は、AIで受付までにとどめ、担当者が現場へ行く
入居者の個人情報を入力する前の確認
入居者の名前、電話番号、部屋番号、滞納の状況は個人情報で、AIサービスに入力する前に扱いを決めておきます。
個人情報保護委員会は、生成AIサービスに個人情報を含む指示文を入力するなら、利用目的の範囲内かを十分に確かめるよう求めています。
本人の同意なく個人データを入力し、回答の出力以外の目的で扱われる場合は、個人情報保護法に違反する可能性があるとしています。
同委員会は、入力する場合には、AIサービスの提供会社が個人データを機械学習に使わないことなどを確かめるよう呼びかけています。
賃貸住宅管理業法も、賃貸住宅管理業者と従業者に、業務で知った秘密を正当な理由なく漏らさない義務を課しています。
義務は、事業をやめたあとや従業者でなくなったあとも続きます。
連絡文の下書きのように個人情報を使わない作業では、名前や部屋番号を入れずにAIを使います。
個人情報を扱う場合は、AIの画面を使える担当者の範囲、会話の記録の保存先と保存期間、異動や退職のときに権限を外す手順も決めておきます。
個人情報を扱うAIの使い方を決める際は、社内の個人情報の担当者や弁護士に確かめてから始めます。
参考:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について|個人情報保護委員会
参考:賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律|e-Gov法令検索
AIの回答の誤り
生成AIの回答には、事実と違う内容が含まれることがあります。
個人情報保護委員会も、生成AIサービスの回答には不正確な内容が含まれることがあると、一般の利用者に向けて注意を促しています。
入居者への回答では、AIが参照する情報を、登録したよくある質問や物件の資料に限ります。
参照する情報にない質問には答えず、担当者へ回す設定にします。
費用の負担、契約の解釈、退去日の確定のように、誤ると入居者との争いになる回答は、AIに直接返させません。
たとえば、退去の連絡期限を古い契約書の内容で答えると、入居者が期限を誤って受け取り、家賃の精算でもめる原因になります。
契約ごとに答えが変わる質問は、AIの回答案を担当者が契約書と照らしてから送ります。
参考:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について|個人情報保護委員会
法定の報告書は人が確かめて交付する
管理業務報告書は、賃貸住宅管理業法の施行規則で、記載事項と渡し方が決められた書類です。
施行規則は、報告書をオーナーに交付して説明するよう求めています。
報告書を紙ではなく電子メールなどで渡す場合は、オーナーの承諾を得る必要があります。
AIが作った文案は、件数や対応の内容が記録と合っているかを担当者が確かめてから、オーナーへの説明に使います。
ハタスの事例でも、AIの文案を担当者が確認して修正してから、オーナーへ発送しています。
参考:賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則|e-Gov法令検索
参考:賃貸管理の報告書作成を自動化で97%時短、ハタスがRPAとAIで新プロセス構築|BUILT
現地を見て判断する場面
設備の故障や部屋の傷み、騒音の状況のように、現地を見て判断する場面は、AIで完結させません。
イタンジも、設備故障の確認のように、現地の状態を目視で判断し、入居者と対面して状況をつかむ業務は、デジタルだけでは完結できないと説明しています。
AIに任せるのは、入居者からの聞き取り、受付票の作成、訪問日の候補を伝える文面までです。
現地で確かめた結果は、担当者が記録に残し、次の問い合わせや定期報告書に使います。
参考:「ITANDI 賃貸管理」、AI入居者対応支援機能を提供開始|イタンジ(PR TIMES)

AI導入を進める4つの手順
賃貸管理へのAI導入は、問い合わせを数える、物件の情報をそろえる、人が確かめる範囲を決める、効果を測るの4つの手順で進めます。
- 問い合わせを種類別に数え、件数が多く答えが決まっている業務を選ぶ
- 物件ごとの情報をそろえ、AIが参照する資料を作る
- 人が確かめる範囲を決め、AIが直接返す回答と人へ回す連絡を分ける
- 対応時間と再問い合わせで効果を測り、次に任せる業務を決める
問い合わせを種類別に数える
最初に、1か月分の問い合わせを、電話、メール、アプリの経路ごとに書き出し、内容の種類別に数えます。
種類は、設備、騒音、ゴミ出し、駐輪場、家賃の支払い、契約・更新、退去などに分けます。
種類ごとに、件数と、1件の対応にかかった時間も記録します。
問い合わせの記録が管理システムにあれば、種類別の仕分けをAIに任せることもできます。
記録が残っていない場合は、2週間ほど、電話を受けた担当者が種類と対応時間をメモに残します。
| 問い合わせの種類 | 答えの決まり方 | AIに任せる範囲 |
|---|---|---|
| ゴミ出し、駐輪場、振込先 | 物件ごとに決まっている | 回答まで任せる |
| 設備の不具合 | 現地を見ないと決まらない | 聞き取りと受付票まで |
| 契約・更新、退去 | 契約書の内容で決まる | 回答案まで。送信は人 |
| 騒音、近隣との関係 | 状況を聞いて判断する | 受付と記録まで |
件数が多く、物件ごとに答えが決まっている種類から、AIに任せる業務を選びます。
物件ごとの情報をそろえる
AIが正しく答えるには、物件ごとの設備、ルール、連絡先の情報が、AIが参照できる形でそろっている必要があります。
物件ごとに用意する情報は、次のとおりです。
- 設備の種類と型番、取扱説明書の保管場所
- ゴミ出しの曜日と場所、駐輪場と駐車場のルール
- 夜間・休日の緊急連絡先
- 契約の特約のうち、入居者からよく聞かれる項目
情報が古いままだと、AIは古い内容で回答します。
情報は物件ごとに1つの文書にまとめ、項目の並び順を全物件で同じにします。
並び順が同じだと、担当者が抜けている項目を見つけやすくなり、AIも同じ項目を同じ場所から読み取れます。
設備の交換やルールの変更があったら、同じ日に情報を更新する担当者を決めておきます。
人が確かめる範囲を決める
AIに任せる業務を決めたら、AIが直接返してよい回答と、人が読んでから送る回答と、すぐに人へ回す連絡を分けます。
AIが直接返してよいのは、担当者が内容を承認し、更新日を付けて登録したよくある質問の範囲だけです。
| 区分 | 例 | 扱い |
|---|---|---|
| AIが直接返す | ゴミ出しの曜日、振込先 | AIの回答をそのまま送る |
| 人が読んでから送る | 更新の手続き、退去の流れ | AIの回答案を担当者が直す |
| すぐに人へ回す | 漏水、火災、ガスのにおい、鍵の紛失 | AIは受付だけして担当者へ知らせる |
すぐに人へ回す連絡は、夜間や休日でも担当者や緊急窓口へ届く経路を決めておきます。
最初に知らせる担当者に連絡がつかない場合に、次に知らせる先も決めておきます。
人へ回したときに入居者へ返す文面も、担当者へ知らせたことと、折り返しの目安の時間を入れて用意しておきます。
区分は、実際の問い合わせを見ながら、月に1回は見直します。
対応時間と再問い合わせで効果を測る
効果は、対応時間、再問い合わせの件数、人へ回した件数の割合の3つで測ります。
3つとも、AIを使う前から同じ方法で数えておくと、使い始めてからの変化を比べられます。
| 測る項目 | 分かること |
|---|---|
| 1件あたりの対応時間 | 担当者の手間が減ったか |
| 再問い合わせの件数 | AIの回答で入居者の用件が済んだか |
| 人へ回した件数の割合 | AIが答えられる範囲が適切か |
再問い合わせとは、同じ入居者が、同じ用件で再び連絡してくることです。
AIを使う前の1か月と、使い始めてからの1か月を比べます。
再問い合わせが増えた種類は、物件の情報が足りないか、AIに任せる範囲が広すぎる可能性があります。
対応時間が減り、再問い合わせが増えていなければ、次の業務へAIの活用を移します。
測った数字は、3か月ごとに責任者と担当者で読み、AIに任せる範囲を広げるか、元に戻すかを決めます。

自社に合う仕組みの選び方
賃貸管理でAIを使う仕組みは、賃貸管理システムの追加機能、汎用の生成AIサービス、自社向けに構築するAIエージェントの3つから選びます。
- 賃貸管理システムの追加機能で、物件と契約のデータとつながった状態で使う
- 汎用の生成AIサービスで、文書の下書きから小さく試す
- 自社向けに構築するAIエージェントで、複数のシステムをまたぐ業務を任せる
| 仕組み | 向く会社 | 注意すること |
|---|---|---|
| 賃貸管理システムの追加機能 | 管理システムにAI機能がある会社 | 使える範囲はシステム会社が決める |
| 汎用の生成AIサービス | 文書の下書きから試したい会社 | 個人情報を入れない使い方にする |
| 自社向けのAIエージェント | 複数のシステムの記録をまたいで使う会社 | 業務の棚卸しとデータの連携を先に行う |
最初に、使っている賃貸管理システムにAI機能があるかを調べます。
AI機能がなければ、汎用の生成AIサービスで文書の下書きから試します。
複数のシステムをまたぐ業務に手間がかかっているとわかったら、AIエージェントの構築を考えます。
どの仕組みを選ぶ場合も、契約の前に次の項目を確かめます。
- 入力した内容が、AIの学習に使われるか
- データの保存場所と保存期間
- 誰がどのデータを見られるか
- AIの回答や送信の記録が残るか
- 不具合のときの問い合わせ先
賃貸管理システムの追加機能
すでに使っている賃貸管理システムにAI機能があれば、物件や契約のデータとつながった状態で使えます。
イタンジやGMO ReTechの事例は、管理システムの会社がAI機能を提供する形です。
新しくデータを移す手間が少なく、担当者も見慣れた画面で使えます。
一方で、AIに任せられる業務の範囲は、システム会社が用意した機能の範囲になります。
AI機能に追加料金がかかる場合は、減る作業時間と比べて、使い続けるかを決めます。
減る作業時間は、対象の問い合わせの月間件数に、1件あたりで短くなった対応時間をかけて出します。
GMO ReTechのMCPサーバーも、管理システムにオプションとして追加する形です。
参考:「ITANDI 賃貸管理」、AI入居者対応支援機能を提供開始|イタンジ(PR TIMES)
参考:AIに”話しかけるだけ”で賃貸管理データを確認・分析「GMO賃貸DX MCPサーバー」を提供開始|GMO ReTech
汎用の生成AIサービス
ChatGPTなどの汎用の生成AIサービスは、更新案内や報告書の文案のような文書の下書きから試せます。
入居者の名前や部屋番号を入れずに、文面の型だけを作る使い方なら、個人情報を扱わずに始められます。
たとえば、更新の2か月前に送る案内文を、満了日・更新料・期限を空欄にして作るよう指示すると、名前を入れない文面ができます。
法人向けの契約で、入力した内容を学習に使わない設定があるかどうかを、使い始める前に確かめます。
管理システムのデータとはつながっていないため、件数の集計や記録の転記は人が行います。
自社向けに構築するAIエージェント
AIエージェントとは、指示に沿って、データの取得、文書の作成、担当者への通知といった複数の作業を続けて行うAIのことです。
管理システム、コールセンターの記録、会計のデータをまたいで使う業務は、自社向けのAIエージェントが向いています。
ハタスは、RPAとAIを組み合わせて、コールセンターの記録の集計から報告書の文案までを1つの流れにしました。
AIエージェントを使うと、同じような流れに、担当者への確認の依頼まで含めて組み込めます。
構築の前には、業務の流れを書き出し、どのデータをどの権限で使うかを決める必要があります。
AIエージェントに任せる範囲は、データを読むだけ、文書を作るまで、入居者に送るまで、の段階に分けて決めます。
入居者に送る段階まで任せる場合も、送った内容の記録を残し、担当者が後から読める状態にしておきます。
参考:賃貸管理の報告書作成を自動化で97%時短、ハタスがRPAとAIで新プロセス構築|BUILT
これからの賃貸管理で人が担う業務
AIが問い合わせの一次対応や書類の下書きを受け持つほど、賃貸管理の担当者の仕事は、現地での判断とオーナー・入居者との話し合いに寄っていきます。
AIの回答を確かめる担当者には、物件の設備と契約の内容を読み取る知識が求められます。
人が担う業務は、次のようなものです。
- 設備の不具合や部屋の状況を、現地で見て判断する
- 修繕の内容や賃料の見直しを、オーナーと話し合って決める
- 退去精算や近隣との問題を、入居者と向き合って説明する
- 定期報告書の内容を確かめ、オーナーに交付して説明する
AIに任せる業務を増やすときも、どの回答を人が確かめるかの線は、担当者が決めて見直し続けます。
オーナーから、AIを使う範囲や入居者の情報の扱いを聞かれることもあります。
AIに任せる業務と人が確かめる手順を書面にしておくと、管理受託契約の説明や定期報告の場で答えやすくなります。
まずは、件数が多く答えが決まっている問い合わせから始め、測った結果をもとに任せる業務を増やします。
社内の担当者がAIの回答を確かめ、日々の業務で使い続けられるようにする段階では、malnaのAI導入支援サービスで生成AI研修からご相談いただけます。
AIを使える人材が社内にいない場合
AIに任せる業務と人が担う業務の線はわかった。
でも、問い合わせの履歴を数えて、日々の対応に組み込む人が社内にいない。
問い合わせの種類を数えて物件の情報をそろえる作業は、AIの設定と管理業務の両方を読める担当者が最初に進める必要があります。
malnaでは、AI活用の実務経験を持つ人材をご紹介するAIタレント名鑑を運営しています。
採用ではなく業務委託として、週1日から相談いただけます。

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