マーケティング内製化とは|向く業務の見分け方と進め方の4ステップ

広告運用も、SNSの発信も、コンテンツ制作も、気づけば代理店任せになっている。そんな状態に落ち着いている企業は少なくありません。担当者の異動や契約更新のタイミングで見積もりを見返し、この費用は本当に自社に必要なのだろうかと考えたことがある方もいるはずです。

目次

しかし、外部委託を見直そうとした途端、社内には運用のノウハウがほとんど残っていないことに気づきます。代理店から届くレポートの数字は読めても、なぜその施策を選んだのかという判断の過程までは共有されていないためです。委託を減らしたくても、何から自社に引き取ればよいのかが分からず、検討が止まってしまうケースが目立ちます。全業務を一気に切り替えようとして担当者が疲弊し、かえって施策が滞ってしまう例も少なくありません。

ここでは、マーケティングの内製化を「媒体の運用を自社で行うこと」ではなく、戦略立案から実行、効果検証までの機能や体制を自社に持つことと捉え、向いている業務の見分け方から、体制を整える進め方までを順に確認していきます。

社内でマーケティング機能の立ち上げを任された担当者の方、外部委託のコストや依存度を見直したい経営者の方に読んでいただける内容です。

マーケティングの内製化とは、これまで広告会社や制作会社に委託していた戦略立案・施策実行・効果検証までの機能を、社内の体制で担うようにすることです。

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マーケティングの内製化とは何を指すのか

マーケティングの内製化とは、外部委託していたマーケティング活動の一部または全部を、社内のリソースで計画し実行する状態に切り替えることです。広告の入稿作業だけを自社で行うようになった状態は、内製化の一部ではあっても全体像ではありません。

内製化という言葉は、Web広告の運用担当を社内に置くといった媒体単位の切り替えを指す場合と、マーケティング機能全体を自社の体制として組み立て直すことを指す場合の両方で使われています。ここで扱うのは後者です。戦略の設計、施策の実行、効果の検証、次の打ち手の判断という一連の流れを、誰か一人の作業ではなく組織の機能として社内に持つことを指します。

両者の違いを整理すると、次のようになります。

内製化の単位 具体例 主な論点
媒体単位の内製化 Google広告など特定媒体の入稿・運用を自社で行う 媒体の操作スキル、日々の運用工数の確保
組織単位の内製化(ここで扱う内容) 戦略立案から実行、効果検証までを社内の機能として持つ 誰が何を判断し、どのように記録を残すかという体制設計

実務では、まず媒体単位の内製化から着手し、運用に慣れたところで戦略設計や効果検証まで対象を広げていく順序を取る企業が多く見られます。逆の順序、つまり戦略設計から一気に組織単位で切り替えようとすると、判断の拠り所となる現場のデータがまだ社内に蓄積されていないため、方針を決めても検証のしようがない状態に陥りやすくなります。媒体単位の内製化から得た運用データや顧客の反応を材料にしたほうが、組織単位の内製化に進んだときの判断の精度も上がります。

媒体単位の内製化と組織単位の内製化を明確に分けずに議論を始めると、経営層と現場担当者のあいだで認識がずれやすくなります。経営層が思い描く内製化が組織単位の機能移管である一方、現場が着手できるのは目の前の媒体運用だけ、という食い違いが起きると、投資判断と実務の進捗がかみ合わなくなります。どちらの内製化を指しているかを最初にすり合わせておくことが、体制づくりの前提になります。

媒体単位の内製化については、すでに公開している記事で個別に扱っています。関連記事:Google広告の自社運用|成立する4条件と代行に切り替える判断ライン

マーケティング内製化が注目される背景

内製化への関心が高まっている背景には、代理店へのコスト構造への不満だけでなく、社内に顧客理解を蓄積したいという事業側の要請があります。あわせて、レポート作成やデータ集計を担うツールが普及し、運用そのものの作業負荷が以前より下がっていることも、社内で抱え込む選択肢を後押ししています。

キャリーミーを運営する株式会社Piece to Peaceが2023年6月に実施した調査によると、従業員数10〜300名未満の中小・ベンチャー企業経営者104名を対象にした結果は次のとおりです。内製化の実態5つの数値

質問項目 回答割合
マーケティングを全て内製化している 43.3%
一部内製化している 8.7%
内製化を進める際「優秀なマーケターの確保ができない」 36.0%
内製化を進める際「マーケティング戦略設計人材がいない」 30.0%
内製化を進める際「マーケティングノウハウ不足」 28.0%

全て内製化と一部内製化を合わせると52.0%にのぼり、半数を超える企業が何らかの形で内製化に踏み出しています。一方で、内製化を進める際の課題として人材の確保や戦略設計人材の不在、ノウハウ不足を挙げる回答が3割前後を占めており、体制を支える人材の確保がその企業の多くにとって壁になっている実情がうかがえます。内製化は始めること自体よりも、続けられる体制を作れるかどうかで成否が分かれます。

参考:マーケティング戦略の内製化は約半数にとどまる結果に。課題は、「マーケターの育成」や「優秀人材の採用」

この調査結果から読み取れるのは、内製化を選ぶかどうかよりも、内製化を選んだ後にどう体制を維持するかのほうが企業にとって重い課題になっているという構図です。人材を採用できずに計画が止まる企業と、少数の担当者で無理に回して疲弊する企業は、どちらも同じ壁にぶつかっています。次の章で内製化のメリットとデメリットを整理したうえで、どの業務から着手すべきかを見ていきます。

マーケティング内製化のメリット

内製化のメリットは、コスト削減という一点だけで語られがちですが、実際には意思決定の速さノウハウの蓄積という2つの効果のほうが事業への影響は大きくなります。この2つは代理店を挟んだままでは得にくく、社内で完結する体制だからこそ表れる効果です。以下でそれぞれの内容を確認します。

意思決定から実行までのスピードが上がる

社内で完結する体制になると、施策の変更や修正が発注や見積もりの往復を経ずに進みます。市場の反応やキャンペーンの数字を見た当日にクリエイティブを差し替えるといった対応も、承認の経路が社内で完結していれば実現しやすくなります。

代理店を挟む体制では、修正の指示が営業担当を通じて制作チームに伝わるまでにタイムラグが生じます。承認者と実行者が同じ社内にいれば、確認の往復そのものが減り、意思決定の階層も短くなります。緊急性の高い施策ほど、このタイムラグが機会損失につながります。

たとえば広告の反応が想定より悪かった場合、外部委託では現状の報告を受けてから修正案の提示、承認、反映という順序を踏むため、数日単位の時間がかかることも珍しくありません。社内で完結する体制であれば、この一連の流れを同じ日のうちに終えられる場合もあります。スピードの差は、施策の本数が多い企業ほど積み重なって表れます。

顧客理解とノウハウが組織に残る

外部委託では、施策の成果は共有されても、なぜその判断に至ったかという思考のプロセスまでは伝わりにくいものです。内製化した体制では、顧客の反応を見ながら仮説を立て検証するサイクルが社内の担当者の経験として積み上がっていきます。

この経験は担当者が異動しても、記録として引き継げる形にしておけば組織の資産になります。新しく配属された担当者が過去の判断の理由を読み返せる状態にしておけば、立ち上がりまでの期間も短縮できます。裏を返せば、記録が個人の頭の中にしか残らない体制では、内製化のメリットは半減します。

コスト構造が変わり投資判断の幅が広がる

代理店に支払っていた運用手数料や制作費が社内の人件費に置き換わることで、費用の使い道を柔軟に選べるようになります。浮いた予算を新しい施策の検証や、ツールの導入に振り向けるといった判断がしやすくなる点は、実務上のメリットとして見過ごせません。

ただし、この効果は人材の採用や育成にかかる先行投資を回収して初めて表れます。短期的な費用比較だけで内製化の是非を判断すると、投資回収前の段階を失敗と誤認しやすくなります。

投資回収の目安を判断する際は、削減できた委託費用だけでなく、内製化によって短縮できた意思決定のリードタイムや、蓄積されたノウハウの再利用価値も合わせて評価する視点が欠かせません。削減額だけで効果を測ると、体制が軌道に乗る前の段階を実態より厳しく評価してしまうことになります。

これら3つのメリットは、どれか1つだけを狙って内製化を進めても十分な効果を得にくいという共通点があります。スピードだけを求めて体制を作っても、判断の根拠が記録されなければノウハウは蓄積されず、コストだけを見て人員を減らせば意思決定の質が落ちます。3つの効果は互いに支え合う関係にあると捉えたほうが、体制づくりの優先順位を決めやすくなります。

マーケティング内製化のデメリットと注意点

内製化には相応のリスクもあります。メリットだけを見て体制づくりを急ぐと、かえって外部委託より成果が下がる場合があるため、先にリスクの所在を押さえておくことが欠かせません。人材、記録、移行のペースという3つの視点から整理します。

専門人材の不足で立ち上がりが遅れる

マーケティング業務に求められるスキルは、次のように領域ごとに異なります。

  • 戦略設計とKPI管理
  • 広告運用とクリエイティブ制作
  • データ分析とレポーティング
  • SEOやコンテンツ制作
  • CRMやMAツールの運用

これらすべてを賄える人材を一度に採用するのは難しく、育成にも一定の期間がかかります。先に挙げた調査でも、内製化を進める企業の3割前後が戦略設計人材の不在やノウハウ不足を課題として挙げていました。人材の確保を軽視した計画は、体制図だけが整い実務が回らない状態を招きます。特に戦略設計とデータ分析は、片方だけを担える人材を採用しても機能しにくい組み合わせで、両方の視点を持つ人材の確保が難しいことが立ち上がりの遅れにつながりやすくなります。

特定の担当者に業務が集中する

社内に体制を作った直後は、限られた人数で業務を回すことになりがちです。担当者が退職や異動をした瞬間に施策が止まってしまうリスクは、外部委託していたときよりも深刻になり得ます。外部委託であれば代理店側に体制の予備があることも多いのに対し、内製化ではこの予備を社内であらかじめ用意しておく必要がある点は見落とされがちです。

この予備をあらかじめ用意する方法としては、担当業務のマニュアル化や、複数人での定例確認の場を設けることが挙げられます。特定の1人しか判断できない状態を避け、少なくとも二人目が状況を引き継げる程度まで情報を共有しておくことが、担当者の異動や休職が起きたときの備えになります。

Q:内製化するとコストは必ず下がりますか

A:必ずしも下がるとは限りません。人材の採用や育成、ツールの導入に先行投資が必要になるため、短期的にはコストが増える場合もあります。外注費との単純な比較ではなく、ノウハウが社内に残る中長期の効果まで含めて判断する視点が必要です。

いきなり全業務を切り替えると成果が落ちやすい

戦略設計から制作、運用、分析まで、すべての業務を同時に社内へ移そうとすると、どの業務にも十分な時間を割けなくなります。専門性の高い業務ほど習得に時間がかかるため、成果が安定するまでの期間に既存の施策の質が落ちる恐れがあります。

内製化は一度に完了させる作業ではなく、業務ごとに段階を踏んで移行していくものと捉えたほうが、実際の体制づくりには合っています。

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内製化に向く業務・向かない業務の見分け方

内製化を検討するとき、まず整理すべきは「できるかどうか」ではなく「社内にしかできない業務かどうか」という判断軸です。この軸で業務を仕分けると、優先して自社に引き取るべき領域が見えてきます。

業務 内製化の向き不向き 理由
戦略立案・KPI設計 向いている 自社の事業構造や成長目標の理解が精度を左右するため
顧客インタビュー・ペルソナ設計 向いている 社内でしか得られない一次情報が蓄積するため
自社の知見を発信するコンテンツ制作 向いている 競合が模倣できない情報が差別化の源泉になるため
Webサイトの制作・リニューアル 向いていない 学習範囲が広く、完成後は継続して必要な技術ではないため
Web広告の運用 条件次第 媒体のアップデート対応や競合分析に一定のノウハウが必要なため
内部SEOなど技術的な対応 条件次第 専門知識が必要だが継続的に発生する業務のため内製化の余地があるため

内製化に向いている業務

戦略立案やターゲットの設定、カスタマージャーニーの作成は、自社の商品や顧客を深く理解していないと精度が出ない業務です。社外の担当者が短期間で同じ精度に到達するのは難しく、内製化による効果が出やすい領域といえます。

自社の知見や事業分析から生まれるコンテンツの制作も同様です。競合が真似できない情報は、社内にしか蓄積されていない経験から生まれるため、内製化の優先度が高い業務に位置づけられます。

内製化に向いていない業務

Webサイトの制作やリニューアルは、専門知識の学習範囲が広く、完成後に継続して必要となる技術でもないため、外部の専門家に任せたほうが効率的です。頻度の低い業務のために専門人材を抱えるのは、コストに見合わない場合があります。

Web広告の運用も、媒体のアップデートへの追随や競合分析に一定のノウハウが必要な業務です。内製化するかどうかは、媒体単位で成立条件を見極める必要があります。

上記の分類はあくまで一般的な傾向であり、社内に蓄積したスキルや業務量によって当てはまり方は変わります。特定の媒体に絞って長期的に広告運用を続ける場合は、内製化によって媒体独自の管理画面やデータに詳しくなり、外部委託より精度が上がることもあります。反対に、自社の知見を発信するコンテンツ制作であっても、必要な本数が多く制作スピードが優先される場面では、外部の制作体制に頼ったほうが安定することもあります。判断軸は固定的なものではなく、業務量や社内の習熟度に応じて見直していくものと捉えてください。内製化に向く業務・向かない業務

参考:マーケティング内製化に向いている項目、不向きな項目

マーケティング内製化を進める4つのステップ

マーケティング内製化を進める際は、現状分析、目的と対象業務の絞り込み、体制とツールの整備、パイロット実施という4つのステップで移行するのが基本の流れです。いきなり体制図から作るのではなく、現状の把握から始めることで、無理のない移行がしやすくなります。

ステップ1 現状分析と対象業務の洗い出し

現在委託している業務の一覧を作り、それぞれにどれだけの費用と時間がかかっているかを可視化します。あわせて、その業務が社内にしかない知見を必要とするものか、汎用的な作業かを仕分けます。委託先とのやり取りに使っている時間や、意思決定に関わっている人数まで洗い出しておくと、後の優先順位づけがしやすくなります。

この段階を飛ばして体制づくりに進むと、後から優先順位を見直す手戻りが発生しやすくなります。棚卸しの際は、費用や工数だけでなく、その業務の意思決定に誰が関わっているかも合わせて記録しておくと、後の役割分担を考える材料になります。

ステップ2 目的と対象業務の絞り込み

内製化する目的を、コスト削減、意思決定の速さ、顧客理解の蓄積のいずれに置くかを決めます。目的によって、最初に着手すべき業務の順番が変わるためです。

顧客理解の蓄積を優先するなら戦略立案やコンテンツ制作から、意思決定の速さを優先するなら日々の運用判断から着手するといった具合に、目的と業務の対応を明確にしておきます。複数の目的を同時に追うと優先順位があいまいになるため、最初の対象は1つか2つの業務に絞ることが望ましいです。

ステップ3 体制とツールの整備

対象業務を担う人材の採用や育成計画を立て、業務に必要なツールを導入します。この段階で、判断の根拠や作業の手順を記録に残す仕組みも同時に用意しておくことが、後の属人化を防ぐ準備になります。

体制図だけを先に作り、記録の仕組みを後回しにすると、担当者の頭の中にしかノウハウが残らない状態に陥りやすくなります。ツールについても、多機能なものを一度に導入するより、対象業務に直結する機能から使い始めたほうが定着しやすくなります。導入した直後は操作に慣れることが優先され、記録や振り返りが後回しになりがちなため、最初のうちは運用のハードルを下げる工夫が必要です。

ステップ4 パイロット実施と対象範囲の拡大

いきなり全業務を切り替えるのではなく、優先度の高い一部の業務から試験的に始めます。一定期間の運用結果を見て、体制や進め方に無理がないかを確認したうえで、対象範囲を広げていきます。

パイロットの期間中に出た課題は、体制を本格稼働させる前に修正できる貴重な材料になります。想定より工数がかかった、思ったより成果が出た、といった実測値を基に、対象範囲を広げるペースを決めていくと、体制が実務に追いつかなくなる事態を避けやすくなります。

4つのステップと、それぞれの主なアウトプットをまとめると次のとおりです。

ステップ 主な目的 主なアウトプット
ステップ1 現状分析 委託業務の可視化 業務一覧と費用・工数の棚卸し表
ステップ2 目的の絞り込み 優先順位の決定 内製化の目的と対象業務のリスト
ステップ3 体制とツールの整備 実行体制の構築 採用・育成計画と記録の仕組み
ステップ4 パイロットと拡大 検証と本格移行 パイロット結果と対象範囲の拡大計画

こうした体制づくりの相談を受ける中で、最初の業務の絞り込みを誤ったまま人材採用だけを進めてしまい、採用した担当者の役割があいまいになるという相談は少なくありません。目的と対象業務を先に固めておくことが、遠回りに見えて最短の進め方になります。4つのステップは順番どおりに一度で終える必要はなく、対象範囲を広げるたびにステップ1へ立ち返って現状を棚卸しし直す、という繰り返しの構造として捉えておくと、体制を無理なく育てていけます。

参考:マーケティング内製化とは?メリット・デメリット・進めるための準備・未来とトレンドについて詳しく解説!

参考:マーケティングの内製化はどう進める?内製化の流れや注意点を解説

体制づくりで押さえるポイント

進め方の手順を踏んでも、体制を支える仕組みが伴っていなければ内製化は長続きしません。役割分担があいまいなまま人だけを増やしても、判断の拠り所がなければ同じ壁に何度もぶつかります。ここでは役割分担、人材の採用と育成、属人化の防止、外部との併用という観点を整理します。

マーケティング機能に必要な役割を大まかに分けると、次のようになります。

役割 主な業務 向いている人材
マーケティング責任者 目的設定と投資判断 事業計画に責任を持つ立場の人材
戦略・分析担当 KPI設計と効果検証 数字の背景にある要因を掘り下げられる人材
実行・運用担当 施策の実務遂行 日々の変化に素早く対応できる人材

小規模な組織では1人が複数の役割を兼任することもありますが、判断の役割実行の役割が誰にあるかだけは明確にしておく必要があります。

人材の採用と育成をどう両立させるか

マーケティング人材は転職市場に出てくる機会が少なく、採用だけに頼ると採用まで時間がかかります。社内で育成する場合は、自社の事業や顧客を理解した即戦力を育てられる一方、育成責任者を明確にし、経営層が中長期の投資として位置づけることが欠かせません。

採用と育成のどちらか一方に偏るのではなく、まず既存社員の中から意欲のある人材を育成の対象にしつつ、専門性の高い領域だけをピンポイントで採用するという組み合わせ方が現実的です。育成を選ぶ場合は、任せる業務の範囲と評価の基準をあらかじめ明確にしておかないと、担当者自身が自分の役割を把握できないまま日々の作業に追われる状態になりやすくなります。

属人化を防ぐ記録と共有の仕組み

Q:内製化の担当者が1人しかいない場合、どう備えればよいですか

A:判断の理由やノウハウを記録に残し、複数人が状況を追える状態にしておくことが有効です。属人化は内製化そのものよりも、記録と共有の仕組みが整っていないことによって起きやすくなります。

定期的な勉強会やナレッジベースの整備、複数人でのオペレーション設計を、内製化の立ち上げと同時並行で進めておくことが、担当者が交代しても施策が止まらない体制につながります。記録を残す文化は、体制を作った初期に習慣化しておかないと、業務が忙しくなるにつれて後回しにされやすくなる点にも注意が必要です。

記録の対象は、施策の実行結果だけでなく、なぜその施策を選んだのかという判断の理由まで含めることが望ましいといえます。結果の数字だけを残しても、次に似た状況になったときの判断材料にはなりにくいためです。体制に必要な3つの役割

ツールを活用して運用の負荷を下げる

レポート作成やデータ集計の一部を、生成AIを使ったツールで下書きの段階まで自動化する企業も増えています。ただし、施策の意図を汲んだ最終判断は人が行う位置づけを崩さないことが重要です。ツールはあくまで作業時間を圧縮する手段であり、内製化の目的である顧客理解の蓄積を代替するものではありません。定型的な集計や下書き作成にかかる時間を圧縮できれば、担当者は仮説を立てる、顧客の反応を解釈するといった、社内にしかできない判断に時間を割きやすくなります。

定期的に体制と成果を見直す

内製化した業務が一度軌道に乗った後も、定期的に成果と体制の負荷を振り返る機会を設けることが欠かせません。担当者の業務量が想定より膨らんでいないか、当初の目的に対して成果が出ているかを確認し、必要であれば対象業務やツールの見直しを行います。立ち上げ時の体制のまま固定してしまうと、事業やチームの状況が変わっても運用方法が更新されず、非効率が残り続けることがあります。

外部との併用で体制を補う

すべてを社内だけで完結させようとせず、専門性が高く発生頻度の低い業務は外部の専門家と組み合わせる考え方も選択肢になります。社内では戦略立案や独自コンテンツの発信を担い、専門知識が必要な領域だけを外部に委ねるという役割分担です。

どの業務を外部に委ねるかを判断する軸は、内製化に向く業務の見分け方と同じ「社内にしかできない業務かどうか」です。発生頻度が低く、かつ社内の顧客理解を必要としない業務ほど、外部の専門家に任せたほうが体制全体の負荷は下がります。

社内だけで体制を組み立てるのが難しい場面では、外部の専門家を部分的に取り入れながら進める方法もあります。malna株式会社は、伴走型のWebマーケティング支援として戦略立案から実行、内製化までを総合的に支援する会社です。体制設計の一部だけを相談したい場合も、malnaへのお問い合わせから状況を共有できます。

参考:malnaのマーケティング支援

よくある質問

内製化を検討する担当者から寄せられることが多い質問を、5つにまとめました。

マーケティングの内製化とは何をすることですか

外部の広告会社や制作会社に委託していたマーケティング業務を、戦略立案から実行、効果検証までを社内の担当者が担う体制に切り替えることです。運用作業を自社で行うだけでなく、意思決定の主導権を社内に置く点が要になります。媒体の操作だけを自社に移しても、戦略の判断が引き続き外部に委ねられたままであれば、内製化の効果は限定的になります。

内製化にはどのくらいの期間がかかりますか

対象業務の専門性や社内のリソースによって幅があります。戦略立案のような自社にしかできない業務から着手すれば、比較的早い段階で成果を実感しやすくなります。反対に、複数の専門領域を同時に立ち上げようとすると、人材の確保が追いつかず、体制が整うまでの期間は長引きやすくなります。

内製化と外注、どちらを選ぶべきですか

内製化に向くのは自社の顧客理解や独自ノウハウが精度を左右する業務で、外注に向くのは専門性が高く更新頻度の低い業務です。すべてを一度に切り替えるのではなく、業務ごとに向き不向きを見極めて段階的に移行する方法が現実的です。判断に迷う業務は、まず媒体単位の小さな範囲で試し、運用に慣れてから対象を広げる進め方が無理を避けやすくなります。

内製化を始めるとき、最初に何をすればよいですか

現状の業務を洗い出し、社内にしか作れない価値を持つ業務から優先順位をつけることです。目的や目標を明確にしないまま着手すると、体制だけ整えて成果につながらない状態に陥りやすくなります。着手する業務を1つか2つに絞ることも、初期段階で成果を実感しやすくするための工夫になります。

内製化した後に外部委託へ戻すことはできますか

可能です。内製化を進める際に判断の記録や権限を残しておけば、必要に応じて特定の業務だけを外部に切り出す判断もしやすくなります。内製化は後戻りできない一方向の選択ではありません。体制を戻す際も、内製化していた期間に蓄積した記録が、外部委託先への引き継ぎ資料としてそのまま活用できます。

まとめ

マーケティングの内製化は、媒体の運用作業を社内で行うことではなく、戦略立案から実行、効果検証までの機能を組織として持つことです。向く業務と向かない業務を見極め、現状分析から目的の絞り込み、体制整備、パイロット実施という順序で進めれば、いきなり全業務を切り替えるより無理のない移行がしやすくなります。

体制を支えるのは役割分担人材の採用・育成、そして属人化を防ぐ記録の仕組みです。社内だけで抱え込まず、必要に応じて外部の専門家と組み合わせる選択肢も含めて検討してください。

内製化を進める中で、対象業務の絞り込みや体制設計に迷う場面があれば、外部の知見を借りるという判断も無理に避ける必要はありません。malnaへのお問い合わせから、現状の課題を相談することもできます。

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執筆者情報

malnaブログ編集部

writer malnaブログ編集部 webマーケター / データアナリスト
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