2026.09.28
化粧品会社のAI活用|薬機法の効能範囲に収める文章の作り方
生成AIに化粧品の商品説明を書かせたら、使ってはいけない効能の表現が混ざっていた。化粧品会社でAIを試した担当者がまず突き当たるのが、この戸惑いです。
目次
化粧品の広告で表現できる効能効果は、厚生労働省の通知で56項目の範囲に定められています。AIは読み手に響く言葉を選ぶのが得意ですが、この範囲を踏まえて書くわけではありません。下書きをそのまま使えば、範囲の外に出ることがあります。任せるほど速くなる仕事だからこそ、確認の仕組みを先に決めておく必要があります。
本記事では、化粧品の広告表現で守るべき2つの基準を整理したうえで、化粧品会社がAIに任せやすい3つの仕事と、生成した文章を公開する前の確認手順を解説します。化粧品メーカーやブランドの広報・EC・カスタマーサポートの担当者の方に向けた内容です。
表現の確認をどこまで社内で回せるかは、薬事の担当者がいるかどうかで大きく変わります。今の体制をmalnaへの問い合わせで伝えていただければ、確認の手順をどう組み込むかという段階から相談に乗れます。
化粧品の広告表現で守る2つの基準
化粧品の広告表現で守るべき基準は、表現できる効能効果の範囲と、虚偽・誇大な広告の禁止の2つです。AIに文章を作らせる場合も、この2つの基準はそのまま当てはまります。
効能効果は56項目の範囲に限られる
化粧品の効能の範囲は、厚生労働省の通知「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日・薬食発0721第1号)で56項目と定められています。この改正では、56番目の項目として「乾燥による小ジワを目立たなくする」が追加されました。
化粧品の広告で効能効果として表現できるのは、原則としてこの範囲の内容に限られます。肌の奥まで作用する、体質を改善するといった表現は、範囲を超えるおそれがあります。
虚偽・誇大な広告は禁止されている
厚生労働省の「医薬品等の広告規制について」では、医薬品医療機器等法にもとづき、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならないと定められていることが案内されています。違反した場合には、対価合計額の4.5%に相当する課徴金の納付が命じられる場合があることも示されています。
根拠のない数値や、誰にでも効果が出るかのような言い回しは、この規制に触れるおそれがあります。AIが生成した文章にこうした表現が紛れ込んでいないか、確かめる工程が欠かせません。
具体的な表現が許されるかどうかの判断は、商品ごと、文脈ごとに変わります。迷う表現は社内の薬事担当者や専門家に確認してください。
化粧品会社がAIに任せやすい3つの仕事
化粧品会社がAIに任せやすいのは、文章の下書きを作る仕事と、社内の確認作業を支える仕事です。ここでは3つに分けて紹介します。

商品説明・広告文の下書き
ECサイトの商品説明、SNS投稿、広告のキャッチコピーといった文章の下書きは、AIに任せやすい仕事です。商品の特徴、使い方、テクスチャー、香りといった情報を渡せば、複数の切り口で下書きを用意できます。
ここで効くのが、指示の段階で表現の範囲をAIに伝えておくことです。「効能効果は社内で承認済みの表現リストの範囲で書く」「数値は渡した資料にあるものだけを使う」といった条件を指示に含めておくと、範囲の外に出た下書きが出てくる回数を減らせます。
ただし、指示に条件を入れても、範囲外の表現がまったく出てこないとは言い切れません。下書きは下書きとして扱い、公開前の確認を省かないことが前提です。
指示に含める情報は、商品ごとにひな形として残しておくと便利です。商品名、使用方法、承認済みの効能表現、使ってよい数値とその出典、避けるべき言い回しを1枚にまとめておけば、担当者が変わっても同じ条件で下書きを作れます。季節ごとの限定品のように説明文を短い周期で書き換える商品ほど、このひな形の効果が大きくなります。
問い合わせへの返信の下書き
使い方や在庫、配送、成分表示の見方といった定型的な問い合わせへの返信文も、AIに下書きを任せやすい仕事です。過去の回答文や社内のFAQを参照させれば、担当者は内容を確かめて送るだけで済みます。問い合わせの件数が多い時期、たとえば新商品の発売直後やキャンペーンの期間中ほど、下書きが手元にあることの効果が出やすくなります。
一方で、肌の赤みやかゆみといった肌トラブルの相談や、医療機関の受診に関わる問い合わせは、AIの下書きに頼らず、担当者が社内の対応手順に沿って回答する範囲として分けておく必要があります。
社内の表現チェックリストと研修資料
社内で承認済みの表現、避けるべき表現、過去に指摘を受けた言い回しなどを、チェックリストの形に整理する作業にもAIを使えます。担当者ごとに頭の中にあった判断基準を文章にしておくと、新しく入った担当者への引き継ぎも楽になります。
このチェックリストは、次の章で紹介する公開前の確認手順の土台にもなります。広告や商品説明で過去に修正を求められた表現があれば、その経緯とあわせて記録しておくと、同じ指摘を繰り返さずに済みます。
関連記事:EC AI活用で減らせる作業|商品説明・FAQ・集客を任せる3領域の手順
生成した文章を公開する前の3つの確認手順
AIが作った化粧品の文章は、効能の範囲、根拠のない表現、最終判断という3つの段階に分けて確認すると、見落としを減らせます。

手順1 効能効果が範囲の外に出ていないかを見る
まず、下書きに含まれる効能効果の表現が、56項目の範囲と社内の承認済み表現リストに収まっているかを確かめます。「肌の奥まで」「根本から」「治す」「改善する」といった言い回しは、範囲を超えていないかを特に注意して見る部分です。
AIに「この文章のうち、効能効果に当たる表現をすべて抜き出して」と頼み、抜き出された表現だけを人が照合する進め方にすると、確認の手間を減らせます。照合の判断そのものは人が行います。
手順2 根拠のない数値と最上級の表現を消す
次に、渡した資料にない数値や、「No.1」「最高」「どんな肌にも」といった根拠を示せない表現が入っていないかを確かめます。AIは文章を魅力的に見せようとして、資料にない数字や強い言い回しを足してしまうことがあります。
数値を使う場合は、社内の試験結果や調査の資料など、根拠となる元の資料と一つずつ照らし合わせます。根拠を示せない表現は、弱めるのではなく削除する判断が必要です。
手順3 薬事の担当者が最終確認する
最後に、社内の薬事担当者か外部の専門家が文章を確認してから公開します。下書きが速くなっても、この最終確認を省いてよいことにはなりません。
確認に回す前の段階で手順1と手順2を済ませておけば、薬事担当者が見る範囲を絞れるため、確認そのものも速くなります。
確認した結果は、どの表現を直したか、なぜ直したかとあわせて記録しておきます。記録がたまるほど、社内の表現チェックリストが実際の判断に近い形で育っていき、AIへの指示に含める条件もより具体的にできます。
AIに任せない仕事
化粧品会社でAIを使う場合でも、処方や安全性に関わる判断、肌トラブルへの回答、広告表現の最終判断は、人が担う仕事として分けておきます。
| 仕事 | AIに任せてよい範囲 | 人が担う範囲 |
|---|---|---|
| 商品説明・広告文 | 下書きと複数案の作成 | 効能表現の照合と公開の判断 |
| 問い合わせ対応 | 定型的な問い合わせの返信下書き | 肌トラブル・受診に関わる回答 |
| 表現チェックリスト | 既存の判断基準の整理 | 承認済み表現の決定 |
| 処方・安全性 | 該当なし(本記事の対象外) | 処方・安全性の判断 |
AIが担うのは、文章をそろえる作業と、確認の手間を減らす作業までです。どの表現を使ってよいか、どう回答するかという判断は、担当者と薬事の専門家が持ち続けることが欠かせません。
導入時に気をつけたいこと
化粧品会社でAIを使う際には、顧客情報の扱い、生成文の取り扱い、表現リストの鮮度の3点にも注意が必要です。
顧客情報をAIに入力する範囲を決める
問い合わせ対応では、顧客の氏名や連絡先、肌の悩みといった機微な情報を扱います。AIツールに入力してよい情報の範囲を先に決め、個人を特定できる情報は記号に置き換えてから下書きを作らせるなどの運用ルールを整えておきます。
下書きをそのまま公開しない決まりを作る
忙しい時期ほど、AIの下書きをそのまま投稿してしまう事故は起きやすくなります。公開の前に必ず確認の手順を通すことを社内の決まりとして明文化し、担当者が1人で完結させない体制にしておくと安心です。
承認済みの表現リストを更新し続ける
承認済みの表現リストは、一度作って終わりではありません。新商品の発売や、行政から新しい通知が出たときなどに見直し、更新した日付と理由を残しておきます。AIに参照させるリストが古いままだと、下書きも古い基準で作られてしまいます。
よくある質問
化粧品の商品説明をAIに書かせても大丈夫ですか?
下書きをAIに任せること自体は可能です。ただし、効能効果の表現が56項目の範囲に収まっているか、根拠のない数値や最上級の表現が入っていないかを、公開前に人が確認する必要があります。
AIへの指示に条件を入れれば、範囲外の表現は出てきませんか?
条件を入れることで範囲外の表現が出る回数は減らせますが、まったく出てこないとは言い切れません。下書きは下書きとして扱い、公開前の確認は省かないようにします。
肌トラブルの問い合わせにもAIを使えますか?
肌の赤みやかゆみなどの肌トラブルや、医療機関の受診に関わる問い合わせは、AIの下書きに頼らず、担当者が社内の対応手順に沿って回答する範囲として分けておくのが安全です。
薬事の担当者がいない場合はどうすればよいですか?
広告表現の最終確認は、外部の専門家に依頼する方法があります。AIで手順1と手順2を済ませてから依頼すれば、確認してもらう範囲を絞れます。
まとめ
化粧品会社のAI活用は、商品説明や広告文の下書き、問い合わせ返信の下書き、表現チェックリストの整理といった文章の仕事から始めるのが現実的です。そのうえで、効能効果が56項目の範囲に収まっているか、根拠のない表現がないかを確かめ、薬事の担当者が最終確認するという3つの手順を、AIを使う前に決めておきましょう。
どの表現を承認済みリストに入れるかが決まっていないと、AIへの指示もぶれてしまいます。リスト作りから進めたい場合は、今お使いの表現の資料を添えてmalnaへの問い合わせからご連絡いただくと、話を具体的に進めやすくなります。
AIを使える人材が社内にいない場合
下書きと確認の分け方は見えた。でも、その流れを社内の決まりとして組み立てて回せる人が見当たらない。
表現の判断に慎重な業界ほど、新しい道具の使い方を決める役は後回しになりがちです。malnaでは、AI活用の実務経験を持つ人材をご紹介するAIタレント名鑑を運営しています。採用ではなく業務委託として、週1日から相談いただけます。
無料相談はこちら 記事一覧はこちら- malnaのマーケティングについて
-
弊社ではメディアやSNSなど総合的な支援が可能です。
媒体ごとに違うパートナーが入ることもなくスピーディな意思決定が可能です。
ご不明点や不安な点等ございましたらお気軽にお問い合わせください。 - サービス資料はこちら 詳しく見る


