2026.09.28

AI

保育で生成AIを活用するには?書類作成への使い方と注意点

おたよりの文面を考え、保育日誌をまとめ、連絡帳に一人ひとりの様子を書く。午睡の時間や降園後に回ってくるこうした文章の仕事が、保育士の負担として重くのしかかっている園は少なくありません。

AIエージェント導入支援

目次

生成AIを使えば下書きの手間は減らせそうだ、と感じていても、こどもの情報をどこまで入力してよいのか、間違った内容が保護者に届かないかといった不安から、踏み出せずにいる園も多いはずです。実は、国もこの点を整理した資料を公表しています。

本記事では、こども家庭庁が令和7年3月に作成した「生成AIの導入・活用に向けた実践ハンドブック」の内容に沿って、保育の現場で生成AIが役立つ場面、最初に試しやすい文書、ハンドブックが挙げる注意点と対応、導入の進め方、保護者に届ける文章の仕上げ方までを順に見ていきます。

対象は、保育所や認定こども園、小規模保育事業などで、書類業務の負担を減らしたいと考えている園長・主任保育士・事務担当者の方です。

おたよりから始めるか、日誌から始めるかは、園の中でどの文章に時間がかかっているかで決まります。malnaは業務の棚卸しを最初の工程としているので、お問い合わせからどの文書を最初の対象にするかの見極めを相談できます。

保育のAI活用とは、保育士がこどもと関わる時間を取り戻すための文書作成支援です

保育のAI活用とは、保育そのものをAIに任せることではなく、おたよりや保育日誌、連絡帳といった文章の下書きをAIに手伝わせ、保育士がこどもや保護者と関わる時間を確保する取り組みです。文章を最終的に仕上げ、こどもの様子を見立てて伝えるのは保育士の役割であり、AIはその前段の手間を軽くする道具として位置づけます。

こども家庭庁は現場向けの実践ハンドブックを公表しています

こども家庭庁は、こども・子育て分野における生成AIの利活用に関する調査研究の一環として実証事業を行い、その知見を整理した「生成AIの導入・活用に向けた実践ハンドブック」を令和7年(2025年)3月に作成しました。ハンドブックは、自治体や保育施設、子育て関連事業者がこども・子育て分野の業務で生成AIの利用を適切に進められるよう、基本的な考え方と実践的な方策を示すものとされています。

ハンドブックでは、こども・子育て分野で期待される活用として、日誌や連絡帳の作成などを通じた業務の効率化と職員の負担軽減により、こどもや保護者との関わりに十分な時間を確保することに寄与する点が挙げられています。園でAIを使う目的を「時間を生み出して保育に戻すこと」と定めておくと、何にAIを使い、何に使わないかの線引きがぶれにくくなります。

ハンドブックは法的な拘束力を持つものではありません

ハンドブックには、生成AIの利活用に当たっては個人情報保護に関する法令等の遵守が前提であること、ハンドブック自体は法的助言を提供するものではなく拘束力を持たないことが明記されています。園での運用は、ハンドブックの考え方を参考にしながら、各園の状況と最新の関係省庁の情報に照らして判断していくことになります。

参考:生成AIの導入・活用に向けた実践ハンドブック(令和7年3月)|こども家庭庁

ハンドブックが示す活用場面のうち、園で使いやすいもの

ハンドブックは、こども・子育て分野での生成AIの活用場面を複数挙げています。その中でも保育園の日常業務に直結しやすいのは、職員の文書作成支援、こどもの保育・教育で使うコンテンツの作成、日誌や連絡帳の文言作成の3つです。

ハンドブックの活用場面園での使い方の例保育士が持つ役割
職員の文書作成支援おたより、行事の案内、会議録の下書き事実の確認と最終的な表現
こどもの保育・教育におけるコンテンツの生成年齢に合わせたお話や手遊びのアイデアこどもにとって適切かの確認
日誌・連絡帳の文言作成保育士のメモを文章に整えるこどもの様子の見立て

ハンドブックには、保育・子育て相談支援でのチャットボットの利活用なども挙げられていますが、こちらは自治体の窓口などを想定した場面が中心です。園で最初に取り組むなら、職員の手元で完結する文書作成から始めるほうが、確認の手順を組み立てやすくなります。 園の外の人とやり取りする仕組みは、園の中での運用に慣れてから検討しても遅くはありません。

文書作成支援では学習に使われないサービスを選びます

ハンドブックは、個人情報や非公開情報などを入力した場合に、生成AIがその情報を学習して外部の利用者への回答に使われるリスクがあるとして、利用者の入力した情報を学習に使用しない旨を利用規約等に明示しているサービスを選ぶことが重要だとしています。保育士の個人のアカウントで無料のサービスを使うのではなく、園や法人として条件を確認したサービスを用意するところが出発点になります。 あわせて、職員がサービスの特性と情報管理の重要性を理解できるよう、研修や運用ルールの整備も求めています。

コンテンツを作るときは内容と著作権を確認します

年齢に合わせたお話や手遊びの案をAIに作らせる使い方について、ハンドブックは、出力にこどもにとって不適切な内容が含まれる可能性があるため職員の目で確認したうえで採用することが望ましいとし、既存の著作物と似ていないかの確認も求めています。AIが作った案はそのまま使わず、保育のねらいとこどもの発達に照らして保育士が選び直す前提で使ってください。

会議の記録は文字起こしと要約から試せます

ハンドブックは、生成AIの活用方法として文章の生成に加え、音声の文字起こしなども挙げています。園の職員会議やケース会議の記録は、話し合いの内容を後から文章にまとめ直す作業に時間がかかりがちです。録音した内容を文字に起こし、要点をまとめる作業をAIに手伝わせれば、記録係の保育士の負担を軽くできます。 ただし、会議でこどもや家庭の個別の事情を話し合った場合は、その部分を入力から外すか、記録を人の手でまとめる運用にしておいてください。要約には話し合いの結論が正しく反映されているかを、会議に出た職員が確認してから確定させます。

園で使いやすい3つの活用場面

最初に試しやすいのは、事実が保育士の手元にある文書です

最初にAIを試す文書は、元になる事実を保育士がすでに持っていて、それを読みやすい文章に整える種類のものが向いています。事実をAIに作らせる必要がないため、確認の負担が小さく、効果も測りやすいからです。どの文書が当てはまるかは園によって違いますが、たとえば次の3つが候補になります。

おたよりや行事の案内から始めます

園だよりやクラスだより、行事の案内は、日付・持ち物・集合時間などの事実を保育士が決めたうえで、その事実を分かりやすい文章に整える仕事です。事実を箇条書きで渡し、文章の形に整えることだけをAIに頼めば、こどもの個人情報を入力せずに済みます。 季節のあいさつ文や、毎年似た内容になる案内文から試すと、園の中で効果を実感しやすくなります。前年度の文面を参考に渡して今年度の日付や持ち物に合わせて書き直してもらうと、ゼロから考える時間を省けます。ただし、前年度の文面に在園児の名前や写真の説明が含まれていないかは、渡す前に確認しておいてください。

保育日誌は保育士のメモを整える使い方にとどめます

保育日誌をAIに任せる場合も、こどもの様子を見て書き留めるのは保育士です。保育士が短いメモで残した内容を、日誌の文体に整える部分だけをAIに手伝わせます。こどもの名前は入力前に記号に置き換え、特定につながる情報は文章化に必要でなければ入れない、というルールを園として統一しておきます。 日誌の最後の振り返りや次の保育への考察は、保育士自身の言葉で書く部分として残しておきます。

指導計画は決めた内容を文章にする補助として使います

月案や週案などの指導計画は、こどもの育ちを見立て、ねらいと活動を決める保育の中核です。ねらいや内容をAIに決めさせるのではなく、職員の話し合いで決めた内容を計画書の文章に整える補助として使います。 文章に整える段階でも、園の保育方針やこどもの実態と食い違う表現が入り込んでいないかを確かめてから確定させます。

ハンドブックが挙げる注意点と、園での対応

ハンドブックは、生成AIの利用に伴う課題として、誤った情報の生成、個人情報や機密情報の取扱い、著作権や肖像権への対応、差別や偏見の助長などを挙げ、それぞれに対応例を示しています。園での運用に置き換えると、次のような点に注意が必要です。

誤った情報が混ざる前提で確認します

ハンドブックでは、生成AIが一見正しそうでも実在しない情報や誤った事実を答えることがあるとして、出力内容の正確性を確認する必要があるとしています。例として、乳児は何歳からを指すかという質問に対し、生成AIが「2歳未満のこどもを指します」と答えたが、母子保健法等の公的な定義では乳児は1歳未満のこどもを指しており誤りだった、という事例が紹介されています。保護者に配る文章に制度や健康に関する説明を含める場合は、AIの説明をそのまま使わず、公的な資料で確かめてから載せてください。

こどもの写真をAIに入力する使い方は慎重に扱います

ハンドブックには、写真の記録をもとに日誌や連絡帳の文言案を作る使い方も紹介されています。一方で、こどもの顔が写った写真は、個人を特定できる情報であり、肖像に関わる配慮も必要になります。写真を入力する使い方は、利用するサービスの条件と保護者への説明の範囲が整理できるまでは見送り、まずは文字のメモから始めるほうが安全です。 判断に迷う点は、個人情報の取扱いに詳しい専門家に確認してください。

外に出す前に偏りがないかを見直します

ハンドブックでは、園の広報資料のイラストを生成AIで作った際に保育士が女性だけで描かれていたため、職員が確認して男女の保育士を描くよう指示を変えて作り直した事例が紹介されています。保護者や地域に向けて出す文章やイラストは、内容の正確さだけでなく、特定の性別や家庭の形を前提にした表現になっていないかも見直してから使ってください。

確認する職員の知識も合わせて底上げします

ハンドブックは、生成AIの成果物を確認するには、使う職員側にも一定の知識が必要だという課題も挙げています。AIの出力に誤りがあっても、確認する人がその分野の知識を持っていなければ気づけないためです。制度や健康に関わる説明を扱う文書は、経験のある保育士や看護師などが確認する役割を持つようにし、確認の担当を文書の種類ごとに決めておくと安心です。 研修では、AIがどのような誤りをしやすいかを、実際の出力例を見ながら共有すると理解が進みます。

外に出す前の4つの確認

どの文書から始め、確認にどれだけ時間がかかるかを事前に見積もっておくと、園内の合意も取りやすくなります。

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導入はハンドブックの3つのフェーズに沿って小さく始めます

ハンドブックは、生成AIの導入を企画検討・導入準備・導入と運用という3つのフェーズに分けて整理しています。園で取り組む場合も、この順番に沿って、小さな範囲から始めて広げていくと無理がありません。

企画検討では現場の声と業務時間を集めます

ハンドブックは、現状の業務課題を整理する際に、現場の職員の声を丁寧に聞き取ること、業務処理時間や残業時間の記録などのデータを分析して課題を客観的に見える形にすることが重要だとしています。園では、保育士数名に1週間、どの文書に何分かけたかを書き出してもらうだけでも、時間がかかっている文書が見えてきます。 あわせて、AIを使うことがこどもや保護者にどのような影響を与えるかも話し合っておきます。書き出した結果は、保育士の負担感と実際の時間の両方で見ることが大切です。時間は短くても精神的な負担が大きい文書もあれば、時間はかかっても保育士がやりがいを感じている文書もあります。どの文書をAIに手伝わせるかは、現場の保育士と一緒に決めると、導入後の協力も得やすくなります。

導入準備ではサービスとルールを整えます

使うサービスを選ぶ段階では、入力した内容が学習に使われない条件か、管理者が利用状況を確認できるかを確かめます。同時に、入力してよい情報と入力しない情報、こどもの名前の置き換え方、確認の手順を、1枚の利用ルールにまとめておいてください。 ルールは職員全員が読める場所に置き、新しく入職した職員には最初に伝える項目にしておくと、使い方が人によってばらつかずに済みます。

導入と運用では効果を測って見直します

ハンドブックは、効果測定には定量的な指標と定性的な指標を組み合わせ、結果に基づいて業務の流れを継続的に見直すことが重要だとしています。文書にかかった時間の変化に加えて、確認で見つかった誤りの件数や、職員が感じた負担の変化も記録しておくと、続けるかどうかの判断材料になります。 効果が確認できた文書から、次の文書へと対象を広げていきます。

対象を広げる順番は、こどもの個人情報がどれだけ含まれるかを基準に考えると安全です。おたよりや行事の案内のように個人情報をほとんど含まない文書で運用が安定してから、日誌や連絡帳のようにこどもの様子を扱う文書へ進むと、置き換えのルールと確認の手順が職員に定着した状態で次の段階に入れます。

保護者に届ける文章は保育士の言葉で仕上げます

保護者に届く文章は、園と家庭の信頼関係を支えるものです。AIが整えた下書きは読みやすくても、園らしさやこどもへのまなざしが薄まってしまうことがあるため、最後は保育士の言葉で仕上げることを大切にしてください。

連絡帳はこどもの具体的な姿を保育士が書き足します

連絡帳は、保護者がその日のこどもの様子を知るための大切な窓口です。AIに文章を整えてもらった場合でも、その日にこどもが見せた表情や言葉、友だちとの関わりといった具体的な姿は、保育士が自分の言葉で書き足してください。 整った文章より、保育士が見ていたことの伝わる一文のほうが、保護者の安心につながるものです。

園の言葉づかいをそろえるために指示文を共有します

保育士ごとにAIへの指示の出し方が違うと、園として出す文章の雰囲気がばらつきます。園で使う呼び方や敬語の使い方、避けたい表現をまとめた指示文を1つ用意し、全員で共有して使うと、文章の雰囲気がそろいます。 確認で見つかった言い回しの問題は、この共通の指示文に反映して改善していきます。

AIを使っていることを保護者にどう伝えるかも決めておきます

園で生成AIを使い始めたことを、保護者にどこまで伝えるかも、あらかじめ園として方針を決めておくと、問い合わせを受けたときに職員が迷わずに済みます。文章の下書きに使っていること、こどもの名前などの個人情報は入力しないルールで運用していること、最終的な内容は保育士が確認していることを、園だよりなどで簡潔に説明しておくと、保護者の不安を和らげられます。 説明の内容は、実際の運用と食い違わないよう、ルールを変えたときに合わせて見直してください。

連絡帳の役割分担

よくある質問

保育の現場で生成AIを使い始めるときに気になりやすい点を、質問と回答の形でまとめました。

こどもの名前を入力しなければ使ってもよいのでしょうか

名前を記号に置き換えることは基本ですが、それだけで十分とは限りません。生年月日やクラス、家庭の事情など組み合わせで特定につながる情報も入力前に外し、入力内容が学習に使われない条件のサービスを園として用意したうえで使ってください。

指導計画をAIに作らせてもよいのでしょうか

ねらいや活動の内容を決めるのは保育士の役割です。職員の話し合いで決めた内容を計画書の文章に整える補助として使うことはできますが、計画の中身そのものをAIに決めさせる使い方は避けてください。

最初にどの文書から試せばよいですか

おたよりや行事の案内のように、事実を保育士が決めたうえで文章に整えるだけの文書から始めるのが試しやすい方法です。こどもの個人情報を入力せずに済み、効果も実感しやすいからです。

こども家庭庁のハンドブックに従えば問題はないのでしょうか

ハンドブックは基本的な考え方と実践的な方策を示すもので、法的な拘束力はなく、法的助言を提供するものでもないと明記されています。個人情報保護に関する法令等の遵守を前提に、各園の状況と最新の情報に照らして判断する必要があります。

まとめ

保育のAI活用は、保育そのものを任せるのではなく、おたよりや日誌、連絡帳の下書きをAIに手伝わせ、保育士がこどもと関わる時間を取り戻す取り組みとして進めると、無理なく園に根づきます。こども家庭庁の実践ハンドブックは、そのための考え方と注意点を現場向けに整理した資料として参考になります。

最初にやることは、保育士数名に1週間、どの文書に何分かけたかを書き出してもらい、事実が手元にある文書から1つ選ぶこと。次に、入力しない情報と確認の手順をまとめた1枚の利用ルールを作ること。この2つが揃えば、ハンドブックの3つのフェーズに沿って、小さく試して広げていく流れを組み立てられます。最初の1か月は、効果よりも「ルールどおりに使えているか」を見ることを優先してください。運用が安定してから効果を測るほうが、職員の不安を抑えながら確かな判断ができます。

AIで生まれた時間が、こどもの姿を見つめ、保護者と言葉を交わす時間に戻ってこそ、保育の現場でAIを使う意味があります。利用ルールと確認手順を整えたうえで、文書作成を任せるAIエージェントの構築と運用の定着まで進めたい場合は、malnaへの問い合わせからご相談ください。

AIを使える人材が社内にいない場合

ハンドブックに沿った進め方は分かった。でも、日々の保育の合間にルールを整えて、職員に広げていく人が園の中にいない。

保育士が保育に向き合うためのAI活用だからこそ、その仕組みづくりを保育士以外の手で支える形もあるのではないでしょうか。malnaでは、AI活用の実務経験を持つ人材をご紹介するAIタレント名鑑を運営しています。採用ではなく業務委託として、週1日から相談いただけます。

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執筆者情報

malnaブログ編集部

writer malnaブログ編集部 webマーケター / データアナリスト
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