2026.09.10
コールセンターAI活用ガイド|4つの領域の実例と検討前に整理する論点
コールセンターの現場では、応対品質を保ちながら人手不足に対応することが年々難しくなっています。オペレーターの採用競争力は他業界の人手不足の影響も受けており、育成に時間をかけても定着しないという悩みを抱える運営担当者は少なくありません。しかし、AIの活用と一口に言っても、自動応答からFAQ検索支援、通話の記録作成、応対品質のモニタリングまで対象範囲は幅広く、どこから手を付ければよいのか判断がつきにくいのが実情です。本記事では、コールセンターにおけるAI活用を4つの領域に整理したうえで、出典を確認できる実例と、導入前に検討しておきたい論点を解説します。コールセンターの運営責任者やDX推進担当の方に向けた内容です。
目次
自社の業務にAI活用を組み込む道筋を相談したい方は、malnaへの問い合わせから状況の整理を始めることもできます。
コールセンターでAI活用が求められる背景
コールセンター業界でAI活用が求められる背景には、オペレーターの人手不足と、問い合わせ対応にかかる負荷の増加という二つの動きがあります。限られた人員で応対の質を維持するには、業務の一部をAIで補う工夫が欠かせなくなりつつあります。
矢野経済研究所の調査によると、2024年度のコールセンターサービス市場(アウトソーシング事業者の売上高ベース)は1兆517億円(前年度比3.5%減)、コンタクトセンターソリューション市場(ソリューションベンダーの売上高ベース)は4,190億円(前年度比5.0%増)となっています。両者は市場の定義が異なるため単純比較はできませんが、既存業務のアウトソーシング需要とは別に、業務を効率化・高度化するためのソリューション投資が伸びていることがうかがえます。
同研究所の別調査では、コールセンターサービス事業者が顧客企業向けに提供するAIサービスの市場規模(事業者売上高ベース)を2023年度60億円(前年度比120.0%)、2024年度90億円(同150.0%)と推計し、2028年度には250億円まで拡大すると予測しています。2022年度から2028年度の年平均成長率は30.8%で、オペレーター人材の不足、非接触チャネルでの問い合わせ増加、生成AIへの注目度の高まりが背景として挙げられています。
こうした市場の動きの裏側には、現場の切実な事情があります。オペレーターの採用競争力が他業界の人手不足の影響で相対的に低下し、採用しても定着しないという課題は多くの運営現場に共通しています。応対品質を落とさずに業務を回すには、限られた人員でカバーできる範囲を広げる仕組みが必要になっており、その手段のひとつとしてAI活用が注目されています。
問い合わせの入口も電話だけではなくなっています。チャット、メール、SNSなど複数のチャネルを併用する企業が増えたことで、オペレーターが把握すべき情報の量も増加しています。電話応対に特化した従来の運営体制のままでは、チャネルが増えるほど一人あたりの負荷が積み上がりやすく、記録の残し方や情報共有の仕組みそのものを見直す必要が出てきています。AI活用が注目される背景には、人手不足という供給側の事情と、問い合わせチャネルの多様化という需要側の事情の両方があると捉えると理解しやすくなります。
参考:コールセンターサービス市場/コンタクトセンターソリューション市場の調査を実施(2025年)
参考:コールセンターサービス事業者が提供するAIサービス市場の調査を実施(2025年)
コールセンターAI活用でできること4つの領域

コールセンターAI活用とは、応対の自動要約、FAQ検索支援、音声認識による記録作成支援、応対品質モニタリングなど、AIによってオペレーターの業務を支援する取り組み全般を指します。対象とする業務工程は領域ごとに異なるため、自社のどこに負荷がかかっているかを先に把握したうえで検討することが重要です。
応対の自動要約
応対の自動要約とは、通話やチャットのやり取りをAIが読み取り、要件・対応内容・結果を短い文章にまとめる仕組みです。従来は通話後にオペレーターが自分の言葉で記録を作成していたため、記載の粒度が人によってばらつきやすく、後から検索しても内容が把握しにくいという課題がありました。
自動要約を導入すると、通話終了後の事務処理にかかる時間を圧縮できるほか、要約内容が一定のフォーマットに揃うため、問い合わせ内容の分析や部門間の連携にも使いやすくなります。担当者が交代する際の引き継ぎや、対応が難しい案件を上位の担当者にエスカレーションする場面でも、要約が整っていることで状況の把握にかかる時間を短くできます。後述するDMM.comの事例は、この領域での効果を数値で確認できる実例です。
FAQ検索によるオペレーター支援
FAQ検索支援は、オペレーターが顧客からの質問を受けた際に、AIが過去の問い合わせ内容や社内ナレッジから該当する回答候補を自動で表示する仕組みです。経験の浅いオペレーターでも、ベテランが蓄積してきた対応ノウハウにその場でアクセスできるようになる点が特徴です。
従来のキーワード一致による検索とは異なり、生成AIを組み合わせた検索では、顧客の言い回しが表記ゆれを含んでいても意図を汲み取って候補を提示できる場合があります。あいまいな質問文からでも関連するFAQを引き当てられれば、オペレーターが自分でキーワードを工夫して探し直す手間を減らせますが、候補の正答率や誤った回答が出た際の挙動は製品ごとに差があるため、導入前にテストデータで確認しておくことが欠かせません。
検索の精度は、もとになるFAQやマニュアルの整備状況に左右されます。AIが候補を提示する仕組みを導入しても、参照元の情報が古い、あるいは整理されていない場合は誤った回答を提示するリスクが残るため、ナレッジの整備とセットで検討する必要があります。
音声認識による記録作成支援
音声認識による記録作成支援は、通話音声をリアルタイムまたは通話終了後にテキスト化し、書き起こし作業や記録入力の手間を減らす仕組みです。全通話をテキストとして保存できるようになるため、後からキーワード検索で特定の会話を探し出すことも容易になります。
音声認識には、通話中にリアルタイムで文字化する方式と、通話終了後にまとめて処理する方式があり、どちらを選ぶかによって用途が変わります。リアルタイム方式は必須ワードの読み上げ確認やオペレーターへの応答支援に向き、通話後方式は記録作成やモニタリング用途に向くというように、目的に応じた使い分けが必要です。認識精度は雑音の多い環境や方言、専門用語や商品名などの固有名詞、複数話者が重なる会話で下がりやすいため、自社の通話環境に近いデータで事前に精度を検証しておくことが望ましいとされています。後述するレオパレス21の事例では、音声認識ソリューションの導入によって年間で数千時間規模の作業時間削減を見込んだと公表されています。記録作成の負荷が大きい現場では、この領域から着手する例が少なくありません。
応対品質モニタリング
応対品質モニタリングは、AIが通話を一定の基準で評価し、応対品質のばらつきを可視化する仕組みです。従来は管理者が抜き取りで通話を聞いて評価するのが一般的でしたが、確認できる件数には限りがありました。
対応可能な製品であれば、AIによるモニタリングの導入によって評価の対象を全件に広げられるほか、評価基準を数値化できるため、優れた応対の特徴を抽出してトレーニング教材に反映するといった活用もしやすくなります。応対内容から感情の起伏や特定のキーワードの出現を検知し、クレームにつながりやすいやり取りを早期に見つけて対応を促すといった使い方も見られます。一方で、評価基準の設計次第で結果の受け止め方が変わるため、現場への説明と納得感の醸成は別途必要になります。
4つの領域は、対象とする工程や前提条件がそれぞれ異なります。検討にあたっては、自社がどの工程に負荷を抱えているかを次の整理と照らし合わせるとわかりやすくなります。
| 領域 | 主な対象工程 | 期待できる効果 | 前提条件 |
| 応対の自動要約 | 通話後の記録作成 | 事務処理時間の圧縮、記録の粒度の統一 | 要約結果を確認・修正する運用フロー |
| FAQ検索によるオペレーター支援 | 応対中の回答検索 | 回答までの時間短縮、経験差の縮小 | FAQ・マニュアルの整備と更新体制 |
| 音声認識による記録作成支援 | 通話の文字化・記録保存 | 書き起こし工数の削減、検索性の向上 | 通話録音・保存に関する社内ルール |
| 応対品質モニタリング | 通話後の評価・分析 | 評価件数の拡大、基準の数値化 | 評価基準の設計と現場への説明 |
優先順位を決める際は、まず現場のオペレーターや管理者に「どの作業に時間を取られているか」をヒアリングし、負荷が集中している工程を特定するところから始めると判断しやすくなります。記録作成に時間がかかっているのであれば音声認識による記録作成支援、回答の検索に時間がかかっているのであればFAQ検索支援というように、課題と領域を一対一で対応させて検討すると、複数の領域を同時に検討して収拾がつかなくなる事態を避けやすくなります。
実際に確認できる導入事例3社
ここでは、公式発表や企業向け導入事例として確認できる実例を3社紹介します。件数を広く並べるのではなく、発表元の公式ページで内容と数値を確認できた事例に絞って紹介するため、業種や導入規模は事例ごとに異なります。なお、ソフトバンクの事例は照会業務を音声で自動応答する取り組みであり、前述した4つの領域そのものというより、その隣接領域にあたります。実際のAI活用は4領域に収まらない形で広がっていることを示す例として紹介します。
ソフトバンク(ワイモバイルのカスタマーサポート)
ソフトバンクは2025年11月7日、ワイモバイルのカスタマーサポートに自律思考型の生成AIを導入したと公式に発表しました。大規模言語モデルと自社開発の知識推論エンジンを組み合わせ、検索拡張生成(RAG)などの技術を活用して、暗証番号の照会業務を音声で自動化する仕組みです。2025年8月下旬から導入が始まっています。
発表では、決められたスクリプトに沿って回答する従来型の音声応答とは異なり、文脈や意図を理解したうえで自律的に確認や質問を行うことで、複雑な条件判断や非定型な問い合わせにも柔軟に対応できるとしています。狙いとして、顧客の待ち時間短縮と応対品質の均質化、コールセンター業務の効率化が挙げられています。
参考:“ワイモバイル”のカスタマーサポートに自律思考型生成AIを導入
DMM.com
合同会社DMM.comは、Microsoft Azureの導入事例として、Azure Speech to TextとAzure OpenAI Serviceを組み合わせ、電話対応の音声を自動でテキスト化し、生成AIで要約する仕組みを公表しています。45分を超える通話はより高精度なモデルに自動で切り替える設計です。
公表された効果として、通話後の事務処理(ACW)にかかる時間が平均で約27%、月間換算で約93時間削減されたとしています。将来的にはACWを半減させ、月間約200時間の削減を見込んでいるとのことです。あわせて、顧客の声(VOC)の分析にも活用しており、以前は20文字程度でオペレーターの主観に頼っていた記録が、要件・対応・要望や不満といった項目で明確に残るようになり、月間約68時間の分析工数削減にもつながったと公表されています。
参考:電話対応後の作業時間(ACW)を大幅に短縮すると共にVOC活用の精度も向上、Azureの各種AI機能を活用したコールセンター業務の効率化
レオパレス21
レオパレス21は2017年11月8日、全国5拠点・360席のコールセンター全席に、アドバンスト・メディアの音声認識ソリューション「AmiVoice Communication Suite3」を導入すると発表し、第1弾として同月24日から新潟コールセンターで導入を始めたと公表しています。応対品質の向上とオペレーター支援を目的とした取り組みです。
このソリューションは、事前に設定した基準をもとに全通話をシステムが応対評価する機能と、顧客からの質問に応じてFAQを自動で画面に表示する機能、通話内容を全文テキストとして保存する機能などを備えています。導入によって、年間で約2,633時間の作業時間削減と約460万円のコスト削減を見込んだと公表されました。2017年の導入事例ではありますが、応対評価・FAQ検索・記録作成という複数の領域を一つの仕組みでカバーした例として参考になります。
参考:レオパレス21 全国5拠点のコールセンター全席に音声認識ソリューションAmiVoice® Communication Suite3を導入
3社の取り組みを整理すると、対象とした領域や公表されている効果は次のとおりです。
| 企業 | 導入時期 | 主な領域 | 公表されている効果 |
| ソフトバンク(ワイモバイル) | 2025年8月下旬 | 自動応答(4領域の隣接領域・音声による自律思考型AI) | 待ち時間短縮、応対品質の均質化(定性的な発表) |
| DMM.com | 2024年5月公表 | 自動要約・記録作成支援 | ACW月間約93時間削減、VOC分析工数月間約68時間削減 |
| レオパレス21 | 2017年11月 | 応対品質モニタリング・FAQ検索・記録作成支援 | 年間約2,633時間の作業時間削減、約460万円のコスト削減 |
いずれも自社の課題に合わせて対象領域を絞り込んでいる点が共通しています。4領域すべてを一度に導入するのではなく、負荷の大きい工程から着手する進め方が実務では取られていることがわかります。
導入前に整理しておきたい論点
コールセンターへのAI活用は、業務フローの一部を変える取り組みであるため、導入する前に整理しておくべき論点がいくつかあります。ここで挙げる論点は、特定のAIサービスを選ぶ前の共通の下準備として捉えてください。
顧客の氏名や契約内容、決済情報など機微な情報を扱う業務であるため、通話データや要約結果をどこに保存し、誰がアクセスできるようにするかというデータの取り扱い方針を先に決めておく必要があります。外部のクラウドサービスを利用する場合は、データの保存場所や利用目的の範囲についても確認しておくことが望ましいでしょう。個人情報保護法上、要配慮個人情報に該当しうる情報(病歴や健康状態に関する問い合わせなど)を扱う可能性がある場合は、取得・利用目的の範囲を社内で確認し、必要に応じて自社の個人情報保護管理者や法務担当に相談する体制にしておくと安心です。あわせて、通話の録音・記録をどのくらいの期間保存するか、顧客から開示や削除を求められた際にどう対応するか、外部のAIサービスを利用する場合は委託先の管理体制をどう確認するかも、導入前に整理しておきたい項目です。
既存のCRMやCTI(構内交換機と電話回線を連携させる仕組み)、通話録音システムとの連携も検討事項です。AIの仕組みだけを新たに導入しても、既存のシステムと接続できなければ、オペレーターの手作業による二重入力が発生し、かえって業務負荷が増えることがあります。連携の可否や改修範囲は、既存システムを提供しているベンダーに確認するのが確実です。
セキュリティ面では、通話データや顧客情報を扱うAIサービスがどのような認証・アクセス制御を備えているか、利用したデータをAIモデルの学習に転用しない設計になっているかを事前に確認しておく必要があります。あわせて、既存の情報セキュリティ規程や監査ログの取得要件を満たせるかどうかも、導入前の確認事項に含めておくとよいでしょう。
運用体制の面では、AIの導入後に誰が結果を確認し、誰が最終的な応対の責任を持つのかをあらかじめ決めておくことが欠かせません。AIが要約や評価を行っても、顧客対応の最終的な品質責任は運営側に残ります。導入後に問題が起きた際の報告先や見直しの手順まで決めておくと、運用が始まってからの混乱を減らせます。
導入した効果を判断するには、あわせて測定する指標を決めておく必要があります。通話後の事務処理時間、一次解決率、有人への転送率、FAQの参照率、応対品質の評価点、顧客満足度など、対象とする領域に応じて指標は変わります。導入前の値を記録しておき、導入後に同じ指標で比較できるようにしておくと、効果を数値で振り返りやすくなります。
AIが提示する要約や回答候補を、人による最終確認を経ずにそのまま顧客対応へ反映する運用にすると、誤りが起きたときに気づく機会を失います。とくに契約変更や解約など顧客への影響が大きい手続きについては、AIの提示内容をそのまま採用するのではなく、確認のプロセスを残す設計にしておくと、リスクを抑えやすくなります。
自社の業務にAI活用を組み込む際は、どこまでを社内で検討し、どこから外部に相談するかを整理しておくと、その後の進め方を決めやすくなります。
導入をどう進めるか|3つの選択肢
コールセンターへのAI活用を実際に進める段階では、自社での内製、コールセンター専門システムのベンダーへの相談、外部の専門コンサルタントへの相談という3つの選択肢があり、それぞれに向き不向きがあります。自社の体制や既存システムの状況によって、選ぶべき道筋は変わります。
社内にAI活用の知見を持つ人材がおり、既存のシステム構成を把握できている場合は、汎用的なAPIやツールを組み合わせて内製する道もあります。自社の業務に合わせて柔軟に設計できる一方、要件定義から運用までを担う人材の確保が前提になります。
コールセンター専用のIVRやCTI、通話録音・音声認識エンジンなどの専門的な設備と一体でAI機能を導入したい場合は、それらを専門に扱うコールセンターシステムベンダーへの相談が現実的な選択肢です。既存の設備を熟知したベンダーであれば、既存システムとの接続や運用面の制約を踏まえた提案を受けやすくなります。
どのAIサービスを選べばよいか判断が難しい場合や、業務フロー全体を見直したうえでAI活用の範囲を決めたい場合は、外部の専門コンサルタントに相談する方法もあります。特定のベンダーやツールに限定せず、複数の選択肢を比較検討できる点が特徴です。
3つの選択肢の違いを整理すると、次のようになります。
| 選択肢 | 向いているケース | 検討時の留意点 |
| 自社での内製 | 社内にAI活用の知見があり、既存システムを把握できている | 要件定義から運用までを担う人材の継続的な確保 |
| コールセンター専門システムのベンダーへの相談 | IVRやCTI、音声認識エンジンなど既存設備と一体で導入したい | 既存設備の制約を踏まえた提案を受けられるか |
| 外部の専門コンサルタントへの相談 | 導入するAIサービスや対象領域をまだ絞り切れていない | 特定のベンダーに偏らない中立的な比較ができるか |

自社の状況によっては、これらを組み合わせて進めるケースもあります。たとえば業務フロー全体の整理はコンサルタントに相談し、実装は専門ベンダーに発注するといった役割分担も現実的な選択肢です。逆に、どの選択肢を選んだ場合でも、対象領域や既存システムの構成を自社側で言語化できていないと、相談や見積もり依頼そのものが進めにくくなります。外部に相談する前段階として、自社の業務フローと課題を整理しておくことが、結果的にどの選択肢を選んでも役に立ちます。
いずれの選択肢を取る場合も、まずは自社の業務のどこに負荷がかかっているかを可視化し、対象範囲を絞り込んでおくと、相談や比較検討がスムーズに進みます。malnaでも、コールセンター以外の業務も含めたAI活用の相談を受ける中で、業務フローの棚卸しから始める組織を見てきました。コールセンター業界での支援実績を示すものではありませんが、業務のどこを自社で担い、どこを外部に委ねるかを整理する段階からであれば、malnaへの問い合わせも選択肢のひとつです。
参考:AIシステム導入支援は何を発注するのか|5つの型と契約・成果物の決め方
導入でつまずきやすい点と注意点
AI活用は、効果を急ぐあまり対象範囲を広げすぎると、かえって顧客対応の質を落としてしまうことがあります。導入した後に見直しが利く設計にしておくことが、長く運用を続けるうえでの前提になります。
自動応答や自動要約の対象範囲を広げすぎると、AIでは判断が難しい例外的な問い合わせまで自動化の対象に含めてしまい、かえって顧客の不満につながることがあります。定型的な照会業務から段階的に対象を広げ、例外対応は人が引き取る前提を残しておくことが安全です。具体的には、本人確認が取れない場合、苦情や契約変更の申し出があった場合、緊急性の高い問い合わせがあった場合など、有人対応に切り替える基準をあらかじめ決めておくと、AIの対応範囲を広げても顧客対応の質を保ちやすくなります。
応対品質モニタリングを導入する場合は、評価結果をオペレーターの人事評価に直結させると、現場の反発を招きやすくなります。評価はまず応対の傾向をつかみ、研修や標準応対スクリプトの改善に活用する目的で使い始め、人事評価への反映は運用が定着してから慎重に検討する進め方が現実的です。
また、AIが生成した要約や回答内容を無批判に採用すると、誤った情報がそのまま顧客対応に使われてしまう可能性があります。とくに料金や契約条件に関わる説明は、AIの提示内容を鵜呑みにせず、最終的な確認は人が行う運用を保つことが求められます。
導入後も、AIの回答精度や要約の質は一度整えて終わりではありません。商品やサービスの内容が変わればFAQやマニュアルの更新が必要になりますし、応対品質の評価基準も現場の実態に合わせて見直しが必要になる場面が出てきます。継続的なチューニングを誰がどのくらいの頻度で行うかを、導入前の計画段階で決めておくと、運用が始まってから担当者が決まらず放置されるという事態を避けやすくなります。特定のベンダーのサービスに依存する形で導入する場合は、契約条件やデータの持ち出し可否についても確認し、将来的に別の選択肢に切り替えられる余地を残しておくと安心です。
こうした注意点は、AIサービスの選定段階だけでなく、運用が始まってからも定期的に見直しておきたい項目です。
よくある質問
コールセンターのAI活用は、着手する領域の選び方や既存システムとの兼ね合いなど、検討段階でつまずきやすい論点がいくつかあります。ここでは、よく寄せられる質問を5つにまとめました。
コールセンターのAI活用は、どの領域から始めるのが一般的ですか
記録作成や応対品質の把握に多くの時間を割いている現場では、音声認識による記録作成支援や応対品質モニタリングから着手する例が見られます。まずは自社のどの業務に負荷がかかっているかを可視化することが、着手領域を決める出発点になります。
AIを導入すればオペレーターの人数を大きく減らせますか
導入企業の公表事例では、通話後の事務処理時間や記録作成の工数削減という形で効果が示されており、人員削減を主目的として公表している例ばかりではありません。応対の質を維持しながら業務負荷を下げる取り組みとして捉えるのが実態に近いといえます。
既存のコールセンターシステムを入れ替えずにAIを導入できますか
既存のCRMやCTI、通話録音システムとの連携方法次第で対応可否が変わります。入れ替えを前提とせず、既存システムに接続できるAI機能を追加する形で導入している事例もあるため、既存システムのベンダーに連携可否を確認することが検討の第一歩になります。
AIによる応対品質モニタリングは、どのような形で導入されていますか
事前に設定した基準をもとに全通話をシステムが評価し、優れた応対の傾向を標準スクリプトの改善に反映する形で導入されている事例があります。評価結果の扱い方は現場への説明とセットで検討することが望ましいとされています。
AI活用にかかる費用はどのくらいを見込めばよいですか
対象とする領域や既存システムとの連携範囲によって費用は大きく変わるため、公開情報だけで一律の相場を示すことは難しいのが実情です。見積もりを比較する際は、初期の導入費用だけでなく、月額または従量課金の運用費用、既存システムとの連携開発費用、FAQやマニュアルを整備する工数まで含めた総コストで比較すると、選択肢ごとの違いが把握しやすくなります。まずは対象領域を絞り込んだうえで、複数のベンダーやコンサルタントから見積もりを取り、比較検討することが現実的な進め方になります。
まとめ
コールセンターにおけるAI活用は、応対の自動要約、FAQ検索支援、音声認識による記録作成支援、応対品質モニタリングの4つの領域に整理できます。ソフトバンクやDMM.com、レオパレス21の公表事例からは、通話後の事務処理時間や記録作成の工数を圧縮できることが確認できる一方、既存システムとの連携や評価結果の扱い方など、導入前に整理しておくべき論点も見えてきます。まずは自社のどの業務に負荷がかかっているかを可視化し、内製・専門ベンダー・外部コンサルタントのどの進め方が合っているかを検討することから始めてみてください。自社の状況を整理するところから相談したい場合は、malnaへの問い合わせも選択肢のひとつです。
AIを使える人材が社内にいない場合
どの領域から手を付ければよいかは見えた。でも、そこから先の運用設計を引き取って回し続ける人が現場にいない。
対象領域を絞り込んだ後、実際に既存システムと接続し、評価基準を整えて回し続けるところまでを担う人材は、社内で簡単には見つからないものです。malnaでは、AI活用の実務経験を持つ人材をご紹介するAIタレント名鑑を運営しています。採用ではなく業務委託として、週1日から相談いただけます。
関連記事:AI導入事例12選|業種別に成果の数値と成立条件を出典付きで解説
関連記事:AIシステム導入支援は何を発注するのか|5つの型と契約・成果物の決め方
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