2026.09.21
EC AI活用で減らせる作業|商品説明・FAQ・集客を任せる3領域の手順
商品点数が増えるほど、商品説明文の作成、問い合わせへの返信、集客用の記事づくりに人の時間が吸い取られていきます。人員を増やさずに回そうとすると、新商品の公開が遅れ、売り場の情報が古いまま残ります。
目次
ところが、EC向けのAIの話題は機能の名前が先に立ちやすく、自社のどの作業がどれだけ減るのかが見えないまま検討が止まりがちです。導入して何が変わるのかを、作業の単位で説明できないことが原因になっています。
本記事では、EC運営のうち文章と情報をつくる作業に絞り、商品説明文などを作る、問い合わせに答える、集客のコンテンツをそろえるという3つの領域について、着手の順番と社内で決めるルールまでを整理します。
想定している読者は、自社ECサイトとモール出店を兼務で回している運営担当者の方です。EC全体のAI活用をひととおり並べる記事ではなく、いま人の手が塞がっている作業を減らす道筋に絞っています。
どの作業から手をつけるかは、ツールを選ぶ前に決めておく必要があります。malnaでは業務フローの棚卸しを最初のフェーズとして切り出しているため、自社のどの作業が渡せるのかを見極めるところから相談できます。
EC AI活用とは、商品説明や問い合わせ対応の作業を生成AIに任せることです
EC AI活用とは、EC運営で人が文章と情報をつくっている作業を生成AIに任せ、人の時間を判断の必要な仕事に振り向ける取り組みです。商品説明文の作成、問い合わせへの回答、集客用のコンテンツ制作が中心になります。いずれも成果物が文章なので、出来上がりを人が読んで確かめられる点が特徴です。
国内のEC市場は拡大が続いています。経済産業省が2025年8月26日に公表した令和6年度の電子商取引に関する市場調査によると、2024年の国内BtoC-EC市場規模は26.1兆円で前年比5.1%増、物販系分野のEC化率は9.8%と前年から0.4ポイント上がりました。売り場が増えれば、そこに載せる情報をつくる作業も増えます。
参考:令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました(経済産業省)
EC AI活用は「作る」「答える」「集める」の3つに分けて考えます
EC運営でAIに渡しやすい作業は、成果物の性質で3つに分かれます。どれも人が文章を書いている作業であり、下書きをAIに任せて人が確認する形に置き換えられます。分け方を先に決めておくと、ツールを比べるときの判断軸がぶれません。
| 領域 | 対象になる作業 | 主な成果物 |
|---|---|---|
| 作る | 商品説明文、商品名、特徴を伝える短文、バナーや広告の文言 | 売り場に載せる文章とクリエイティブ |
| 答える | 問い合わせへの回答、FAQページの整備、返信テンプレートの更新 | 顧客に返す文章と社内の回答資料 |
| 集める | ブログ記事、カテゴリページの説明文、特集ページの原稿 | 検索や回遊から人を呼ぶコンテンツ |
3つに共通しているのは、元になる情報が社内にそろっているほど出力の質が上がることです。商品の仕様や過去の問い合わせ履歴が散らばったままだと、AIに渡す前の準備に時間がかかり、期待した短縮になりません。
生成AIの業務利用は広がった一方、組織としての取り組みは遅れています
生成AIを業務で使う企業は大きく増えました。総務省の令和8年版情報通信白書が日本・米国・ドイツ・中国の4か国を対象に実施した企業向けアンケート調査によると、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると回答した割合は日本で86.4%に達し、前年度調査から大幅に上昇しています。この割合は、活用方針の設問で「わからない」と答えた対象を除いて集計されたものです。業務類型別では「議事録・メール作成補助」が約7割で最も高く、「営業・販売」が約6割と続きます。
一方で、組織としての取り組みは追いついていません。同白書では、全社横断的または部署単位で組織的に取り組んでいると回答した割合が65.6%である反面、「組織的な取組はない」との回答も27.0%あり、米国・ドイツ・中国と比べて顕著に高い結果になっています。個人が手元で使ってはいるものの、業務の流れとして設計されていない状態が、日本の企業に残っているといえます。
EC運営でも同じことが起こります。担当者が個人の判断で商品説明文をAIに書かせている状態では、成果がその人に依存します。担当が抜けた時点で元へ戻ってしまうため、作業を渡す範囲と確認の手順を決めて初めて、運営の仕組みとして残せる形になります。
参考:令和8年版 情報通信白書 生成AIの業務利用状況(総務省)
EC運営の業務を棚卸しして、AIに渡す作業を1つ決めます
AIに渡す作業を決める手順は、業務の書き出し、時間の計測、着手順の決定という3段階です。いきなりツールを選ぶと、導入後に「思ったより減らない」という結果になります。減る時間を先に見積もっておくと、社内の説明も投資判断も通しやすくなります。

1週間分の作業を粒度をそろえて書き出します
書き出しの単位は「誰が」「何を」「どれくらいの頻度で」に固定します。粒度がばらついた一覧は比較できないため、部署ごとに書式を統一してから集めます。EC運営であれば、新商品の登録、既存商品の文言更新、問い合わせの一次返信、レビューへの返答、記事の公開といった単位が扱いやすくなります。
書き出すときは、作業の中に含まれる判断を分けて書くことが大切です。たとえば商品説明文の作成には、素材の確認、文章の執筆、表記の統一、公開設定という複数の工程が入っています。最初の対象としては執筆と表記の統一が渡しやすく、素材の確認と公開の可否は人が持つという線引きが、ここで見えてきます。分類や要約にも使えますが、着手の順番としては文章づくりから入るほうが確認の負担が軽くなります。
実際にかかっている時間を測ってから見積もります
削減効果は、体感ではなく実測から出します。1商品あたりの説明文作成に何分かかっているか、問い合わせ1件の返信に何分かかっているかを、2週間ほど記録します。記録の粒度は分単位で十分です。
測った数字をもとに、次の式で月間の削減見込みを出します。作業単価と処理件数を掛け合わせるだけなので、稟議の資料にもそのまま使えます。
| 項目 | 記録する内容 | 例 |
|---|---|---|
| 1件あたりの所要時間 | 実測値(分) | 商品説明文1件あたり18分 |
| 月間の処理件数 | 実績値(件) | 新商品と改訂で月120件 |
| AI導入後の想定時間 | 下書き生成+確認の実測(分) | 1件あたり7分 |
| 月間削減見込み | (18−7)×120 | 1,320分(22時間) |
注意が必要なのは、新しく増える作業を差し引かないと見積もりが過大になる点です。出力の確認、指示文の修正、素材の準備といった時間は導入後に発生します。増えた分も同じ表に記録しておくと、数か月後の振り返りで判断を誤りません。時間以外に、新商品を公開するまでの日数や、公開後に見つかった誤記の件数も並べて見ておくと、速さと正確さのどちらが崩れたのかを切り分けられます。
着手順は「件数が多く、判断が軽い作業」から決めます
最初に渡す作業は、件数が多くて判断の重さが小さいものを選びます。件数が多ければ削減の絶対量が大きくなり、判断が軽ければ確認の負担が小さく済むためです。この条件に当てはまりやすいのが、商品説明文の下書きと、よくある問い合わせへの回答文です。
逆に、返品の可否判断や個別の値引き対応のように、判断が重く件数の少ない作業は後回しにします。ここから始めると、確認のたびに担当者が張り付くことになり、時間は減りません。1つ目で手応えを得てから、2つ目、3つ目と広げる進め方が現実的です。
どの作業から着手すべきかの判断に迷う場合は、malnaへのお問い合わせから現状をうかがったうえで、棚卸しの進め方をご案内できます。
商品説明文と販促クリエイティブをAIで作る手順を決めます
商品説明文や広告文の作成をAIに任せる手順は、渡す情報の定型化、出力の型の指定、人による事実確認の3つで構成されます。この3つがそろって初めて、商品点数が増えても品質が保たれます。文章の上手さではなく、間違いのなさが評価軸になる領域です。
AIに渡す素材を商品ごとにそろえます
出力の質は、渡す素材でほぼ決まります。商品名、型番、素材、サイズ、原産国、使用上の注意、想定する使い方、競合との違いといった項目を、商品ごとに同じ形式でまとめておきます。ここが欠けたまま指示を出すと、AIは足りない部分を一般的な表現で埋めてしまいます。
素材の集約先は、表計算ソフトでも商品管理ツールでも構いません。重要なのは、書き手が毎回探し回らずに済む場所に、同じ項目名でそろっていることです。この準備は後述する商品データの整備と地続きになります。
訴求の切り口を指定して、複数の案を出させます
同じ商品でも、届ける相手によって刺さる言葉は変わります。指示文には、想定する読者、文字数、使ってはいけない表現、盛り込む仕様の順番を明記します。切り口を2つか3つ指定して並べて出させると、比較しながら選べます。
指示文は毎回書き直さず、カテゴリごとに雛形として保存します。雛形が残っていれば、担当者が変わっても同じ水準の下書きが出ます。運用に乗せるとは、この雛形を社内の共有物として管理することを指します。
バナーや広告文の案出しにも同じ型を使います
販促クリエイティブでは、文言の案出しと構成の下書きまでをAIに任せ、最終的な表現とデザインの確定を人が担う形が扱いやすくなります。文字数の上限、訴求する軸、禁止する言い回し、掲載面の種類を指定して20案ほどまとめて出させると、人は選ぶ作業に時間を使えます。
バナーの制作では、レイアウトの構成案や載せる要素の優先順位を言葉で出させる使い方も向いています。掲載面によって載せられる文字量が変わるため、面ごとに分けて指示してください。デザイナーに渡す前の骨組みづくりが短くなります。
出た案は、そのまま使わずに社内の表現ルールと照らします。根拠のない最上級表現や、効果を断定する言い回しは、この段階で落とすのが安全です。落とした理由を一言添えて記録しておくと、次回の指示文を改善する材料になります。
生成した文章は、公開前に人が事実と表示を確認します
AIが書いた文章をそのまま公開することは避けてください。生成された説明文には、仕様の取り違えや、根拠のない優位性の表現が混ざることがあります。景品表示法は、商品の内容について実際のものよりも著しく優良であると示す表示を優良誤認表示として禁じており、取引条件について著しく有利だと誤認させる表示も有利誤認表示にあたります。
消費者庁は、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を事業者に求めることができる不実証広告規制も定めています。「No.1」や「業界最安」といった表現は、調査の裏付けがないまま使うと問題になります。消費者庁は2024年9月26日に「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表しており、この種の表示への視線は厳しくなっていると考えられます。
通信販売には特定商取引法の表示義務もあります。販売価格や送料、代金の支払時期と方法、商品の引渡時期、契約の申込みの撤回や解除に関する事項などが必須の表示事項とされ、著しく事実に相違する表示は誇大広告として禁じられています。AIが生成した文章のうち、効果や優位性に触れる部分は必ず人が根拠を確認する手順を、公開フローに組み込んでください。なお、個別の表現が法令に触れるかどうかの最終判断は、弁護士など専門家への確認をおすすめします。
AIに渡す素材そのものにも注意が必要です。取引先から預かった資料や未公開の情報が混ざっていないかを、入力する前に確かめてください。
参考:「No.1表示に関する実態調査報告書」の公表について(消費者庁)
問い合わせ対応とFAQの整備にAIを使います
問い合わせ対応でAIが効くのは、回答文の下書きと、FAQの候補出しの2か所です。顧客に返す文章をAIが直接送る形にする前に、まず社内で使う下書き生成から始めると、品質の確認が回しやすくなります。

過去の問い合わせを分類して、FAQの候補を作ります
FAQの整備は、過去の問い合わせ履歴の分類から始めます。半年分のメールやチャットの本文をAIに読ませ、内容ごとに分類させると、件数の多い質問が浮かび上がります。人が目視で分類していた作業を短縮できる余地が大きい工程であり、どの程度縮むかは件数と分類の細かさによって変わります。
分類結果は、そのまま公開せず、件数の多い順に並べて優先順位を決めます。まずは上位10件から20件をFAQの候補として整備し、公開後に一次対応の件数がどう動いたかを測ってください。顧客が同じことを何度も聞いてくる質問は、売り場の説明が足りていない箇所を示しているため、商品ページの改善にもつながります。
回答文の下書きは、社内資料を前提にして書かせます
回答文を書かせるときは、返品条件や配送日数などの根拠資料を一緒に渡します。資料を渡さずに書かせると、一般的な通販の慣行をもとにした文章が出てきて、自社の条件と食い違います。渡す資料は最新版に保ち、改訂したら差し替えます。
下書きが出たら、担当者が事実と語調を確認して送信します。この形であれば、顧客に届く文章は必ず人を経由するため、誤った案内が直接出ていく事態を避けられます。件数が多く定型的な質問から順に、確認の手間を減らしていく進め方が現実的です。
人に引き継ぐ線を先に決めておきます
自動で回答する仕組みを検討する場合は、人に引き継ぐ条件を先に決めます。返品や返金、破損や欠品、個人情報に関わる依頼といった内容は、最初から人に回す設計にします。線を引かないまま運用すると、対応が遅れた案件が後から表面化します。
引き継ぎの線は、文書にして運用担当者全員に配ります。条件を変えたときは、変更した日付と理由も残します。この記録があると、問い合わせの内容が変わったときに設計を見直す判断ができます。
自社の問い合わせ内容に合わせた線引きを整理したい場合は、malnaへのお問い合わせから現在の運用をうかがったうえで、設計のご相談に対応できます。
集客用のブログ・カテゴリページをAIで制作します
集客用コンテンツの制作でAIを使う場合は、構成の設計と下書きまでを任せ、独自の情報を人が足す形が基本になります。検索から人を集める目的である以上、他社と同じことが書いてあるだけの記事では成果につながりません。
構成案と下書きを分けて作らせます
記事制作では、見出し構成の設計と本文の執筆を1回の指示でまとめて行わないほうが、質が安定します。まず検索する人が知りたい順に見出しを並べさせ、その構成を人が直してから本文を書かせます。順番を人が決めることで、記事の主張がぶれません。
カテゴリページの説明文も同じ手順で作れます。カテゴリに含まれる商品の共通点、選ぶときの比較軸、よくある用途を素材として渡すと、売り場の案内として機能する文章になります。商品情報がそろっていない状態では、この作業は途中で止まります。
大量生成そのものが問題視される点を押さえます
Googleはウェブ検索のスパムポリシーで、大量生成されたコンテンツの不正使用について、ユーザーをサポートすることではなく検索ランキングの操作を主な目的として大量のページを生成することを指すと説明しています。生成AIツールを使ってユーザーにとっての価値を付加することなく大量のページを生成することも、その例として挙げられています。
裏を返せば、AIを使うこと自体が問題視されているわけではありません。判断されるのは、そのページが読む人の役に立つかどうかです。自社の在庫している商品を実際に使った所感、問い合わせで多かった疑問への回答、サイズ選びの目安といった、自社にしかない情報を足すことが差になります。
カテゴリページや特集ページに商品を並べる場合は、商品の構造化データを併せて整備します。Googleは、価格や配送、レビューの評価といった情報を検索結果で確認できるようにする仕組みとして商品の構造化データを案内しています。文章の制作と並行して、機械が読める形の情報も整えておくと、集客の土台が固まります。
参考:有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成(Google)
参考:商品(Product、ProductGroup)の構造化データ(Google)
ここまでの3つの領域は、いずれも手元の商品情報がそろっていることを前提にしています。malnaでは、データの整備とツール連携を独立した工程として置いているため、商品情報が散らばった状態からでも着手できます。
商品データ・マスターを整備してツール連携の土台を作ります
商品データの整備は、EC AI活用で最も効果の差が出る工程です。AIに渡す素材が整っていれば出力の質が上がり、整っていなければ準備作業が毎回発生します。日本企業がこの工程で遅れていることは、調査でも示されています。
社内データを参照させる環境づくりで差がついています
総務省の令和8年版情報通信白書は、生成AIの活用に向けた環境整備について、米国・ドイツ・中国では「生成AIに社内データを学習させたり、生成AIが参照可能なデータベースを構築したりしている」との回答が5割を超え、日本より大幅に高い結果だったと報告しています。日本で多かったのは、学ぶ環境の用意や予算と人員の確保でした。
この差は、出力の質にそのまま表れます。自社の商品情報を参照できるAIは、型番も素材も正しく書けます。参照先がないAIは、一般論を並べるしかありません。EC事業者にとって、商品マスターの整備は文章生成の前提条件だといえます。
商品マスターにそろえる項目を決めます
商品マスターに何をそろえるかは、AIに何を書かせたいかから逆算して決めます。説明文を書かせたいなら仕様と用途、カテゴリページを書かせたいなら分類と比較軸、FAQを整備したいなら返品条件と配送条件が必要です。項目を決めたら、記入のルールも同時に決めます。
| 用途 | そろえる項目 | 記入ルールの例 |
|---|---|---|
| 商品説明文の生成 | 型番、素材、サイズ、原産国、使用上の注意 | 単位を統一し、空欄を「不明」と「該当なし」で書き分ける |
| カテゴリページの生成 | 分類、用途、価格帯、比較軸 | 分類は3階層まで、用途は最大5件 |
| FAQの整備 | 返品条件、配送日数、保証期間 | 改訂日を必ず記録する |
空欄の意味が人によって違う状態は、出力の誤りに直結します。在庫がない場合と、そもそも項目が該当しない場合を書き分けるだけでも、生成された文章の精度が変わります。
ツール連携で転記の往復をなくします
データが整ったら、次は連携です。商品管理ツール、ECカート、モールの管理画面、表計算ソフトの間で、同じ情報を何度も転記している状態は、AIを入れても解消しません。転記のたびに差分が生まれ、どれが正しいのか分からなくなります。
連携の設計では、どのシステムを正とするかを最初に決めます。正が1つ決まっていれば、そこから配る仕組みを作るだけで済みます。APIで連携できるツールかどうかは、選定時に必ず確認してください。連携できない組み合わせを選ぶと、人手による転記が残り続けます。
AIの使い方のルールを決めて社内に配ります
AI利用のルールづくりは、AI利用ポリシーの文書化、権限とアカウントの管理、確認手順の明文化の3つで構成されます。個人が手元で使っている状態から、運営の仕組みへ移すために必要な工程です。ルールがないまま件数だけ増えると、情報の持ち出しや表示の誤りが起きたときに原因を追えません。

方針を文書にして、使ってよい範囲を決めます
生成AIの活用方針を定める企業は増えています。総務省の令和8年版情報通信白書によると、「積極的に活用する方針である」と「活用する領域を限定して利用する方針である」を合わせた割合は日本で68.9%となり、前年度調査の49.7%から大きく上昇しました。企業規模別では大企業が74.0%、中小企業が58.1%です。
一方、リスク対策の取り組みでは、日本で最も多い回答が「全社的な指針やガイドラインを整備している」の41.1%にとどまります。方針を決めた企業の数に比べて、指針の整備は進んでいません。文書にして配るところまでやらないと、方針は運用に降りてきません。
文書に書く項目は、使ってよい業務、入力してはいけない情報、出力を公開する前の確認者、問題が起きたときの連絡先の4つが基本です。総務省と経済産業省が公表しているAI事業者ガイドラインは、2026年3月31日に第1.2版が公表されており、自社の指針をつくるときの参照先として使えます。
参考:令和8年版 情報通信白書 生成AIの活用方針等(総務省)
参考:令和8年版 情報通信白書 懸念されるリスク及びリスク対策のための取組状況(総務省)
アカウントの権限とAPIキーの管理者を決めます
アカウントの管理は、担当者個人ではなく組織で持ちます。誰がどのツールを使えるのか、退職時に誰が停止するのかを決めておかないと、使われていないアカウントが残り続けます。APIキーは発行した人と用途を台帳に残し、共有のチャットに貼らないという運用を最初に決めてください。
顧客の個人情報を扱う場面では、入力する情報の範囲に特に注意が必要です。個人情報保護委員会は生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しており、利用にあたって事業者が確認すべき点を示しています。問い合わせ本文をAIに渡す場合、氏名や住所を外すだけでは足りません。注文番号やメールアドレス、自由記述に紛れ込んだ第三者の情報まで対象に含めて、伏せる範囲を決めてください。あわせて、入力した情報が提供事業者の学習に使われない設定になっているかと、保存期間の条件も契約前に確かめます。
参考:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(個人情報保護委員会)
確認の手順を作業フローに埋め込みます
ルールは、読むものではなく通るものにします。商品説明文であれば公開ボタンの前に確認者の承認を挟む、広告文であれば入稿前にチェックリストを通す、というように作業フローの中に組み込みます。別文書に書いてあるだけの手順は守られません。
チェックリストには、根拠のある数値か、断定的な効果表現がないか、必須の表示事項が欠けていないか、といった項目を並べます。EC事業者の場合、表示に関わる部分は法令と直結するため、迷ったら公開を止めて確認する運用にしておくほうが安全です。
扱う商材によっては、確認する法令が増えます。医薬品や化粧品、健康食品を扱う場合は薬機法の広告規制が関わり、効果や効能の書き方に制限がかかります。モールに出店している場合、商品名の文字数や使える表現、レビューへの返信について出店先が独自の規定を設けていることがあるため、生成した文章を流し込む前に最新のガイドラインを確認してください。返品の可否や納期の確定回答のように、間違えると取引そのものに響く内容は、AIの下書きを使わず人が判断する作業として残します。
運用を続けながらルールを見直します
ルールは一度作って終わりではありません。扱う商品が変われば確認項目も変わり、使うツールが変われば入力してよい情報の範囲も変わります。四半期に一度は、実際に起きた差し戻しの内容を持ち寄って見直す場を設けます。
見直しの材料になるのは、公開前に止めた案件の記録です。何が理由で止まったのかを残しておくと、指示文の改善点とルールの不足点が同時に見えてきます。記録の書式は簡単なもので構わないので、続けられる形にしてください。
よくある質問
EC AI活用の検討でつまずきやすいのは、着手の順番、生成した文章の扱い、事業規模との関係、データが整っていない場合の進め方、社内でのルールの決め方の5点です。ここでは本文で触れた内容のうち、担当者の方から実際に質問されることの多い項目を、判断できる形に絞ってまとめました。
EC AI活用は何から始めればいいですか。
業務の棚卸しから始めます。1週間分の作業を粒度をそろえて書き出し、1件あたりの所要時間と月間の件数を実測してください。そのうえで、件数が多く判断の軽い作業を1つ選んで着手します。商品説明文の下書きと、よくある問い合わせへの回答文が最初の候補になりやすい領域です。
生成AIが書いた商品説明文をそのまま公開してもよいですか。
公開前に人が確認してください。生成された文章には仕様の取り違えや根拠のない優位性の表現が混ざることがあり、景品表示法の優良誤認表示にあたる可能性があります。効果や優位性に触れる部分は根拠を確認し、判断に迷う表現は専門家に相談する運用をおすすめします。
小規模なECでもAI活用の効果はありますか。
商品点数と問い合わせ件数が一定量あれば効果は出ます。判断の基準は事業規模ではなく、同じ形式の作業が月に何件発生しているかです。月120件の商品登録があり1件18分かかっているなら、下書きを任せるだけで月20時間前後の余地が生まれる計算になります。
商品データが整っていなくても始められますか。
整っていない状態でも着手はできますが、効果は限定的になります。AIは参照できる情報からしか書けないため、型番や素材が抜けていると一般的な表現で埋められてしまいます。まず1カテゴリだけ項目をそろえ、そこで効果を確かめてから範囲を広げる進め方が現実的です。
社内でAIの使い方をどう統一すればよいですか。
使ってよい業務、入力してはいけない情報、公開前の確認者、問題が起きたときの連絡先の4項目を文書にして配ります。そのうえで、確認の手順を作業フローの中に組み込んでください。別文書に置いたままの手順は実行されないため、公開ボタンの手前に承認を挟む形が有効です。
まとめ
EC AI活用は、商品説明文を作る、問い合わせに答える、集客のコンテンツをそろえるという3つの領域から着手すると、成果が作業時間として見えるようになります。いずれも成果物が文章なので、出来上がりを人が読んで確かめられる点が、検討を進めやすくしています。
進め方の順番は決まっています。業務を棚卸しして削減時間を実測し、件数が多く判断の軽い作業を1つ選び、商品データをそろえてから範囲を広げます。並行して、使ってよい範囲と確認の手順を文書にして配ります。この順番を守れば、担当者個人の工夫で終わらせずに済みます。
表示に関わる部分は、法令と直結します。生成された文章のうち効果や優位性に触れる箇所は必ず人が根拠を確認し、判断に迷う表現は専門家に相談してください。まずは自社の1週間分の作業を書き出し、どの作業が何件発生しているかを数えるところから着手してみてください。着手の順番や社内ルールの整え方について相談したい場合は、malnaへのお問い合わせから現状をうかがいます。
AIを使える人材が社内にいない場合
作る作業も答える作業も、AIに渡せる形は見えてきた。でも、自社の商品データに合わせて最初の1つを組み立てる人が社内にいないのではないでしょうか。
商品情報の持ち方は会社ごとに違うため、外から仕組みを借りてきても、最初の擦り合わせには人手が要ります。malnaでは、AI活用の実務経験を持つ人材をご紹介するAIタレント名鑑を運営しています。採用ではなく業務委託として、週1日から相談いただけます。
最初の1つが動いたあとに残るのは、それを毎月の作業として回し続ける仕事です。malnaでは運用マニュアルの整備までを成果物に含めているので、担当者が代わっても同じ手順で回る状態まで持っていけます。
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