AIエージェントと生成AIの違い|公式定義と7軸比較で使い分けを判断

社内でAIエージェントの検討が始まると、最初につまずくのは生成AIとの線引きです。稟議書の文面に両方の言葉が混ざり、指している中身が人によって違う。そんな状態のまま打ち合わせが進んでいきます。

目次

説明のされ方も媒体ごとに揺れています。応答型と行動型、一問一答と自律ループ。どれも間違いではありませんが、公的な文書に書かれた定義とは粒度が違います。線引きが曖昧なまま要件を固めると、期待していた働き方をしない道具が入り、使われないまま契約更新の時期を迎えます。

本記事では、公式に定義されている内容と一般に説明されている内容を分けたうえで、処理の流れ、人の関わり方、業務での使い分け、導入の難易度とリスクの差までを順に整理します。経営企画やDX推進、情報システムで選定に関わる方に向けた内容です。

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AIエージェントと生成AIの違いは出力で終わるか実行まで進むか

AIエージェントと生成AIの違いは、指示に対して出力を返して終わるか、渡された目標に向けて自分で手順を決め、外部のシステムを操作して実行まで進むかにあります。作るところまでが生成AI、片づけるところまでがAIエージェントだと考えると、輪郭がつかめます。

生成AIに依頼できるのは成果物です。文章、画像、コード。それを読み、直し、どこかへ送るのは人の仕事として残ります。AIエージェントに渡すのは目標で、手順の組み立てからツールの呼び出し、結果の確認までを自分で回します。人が受け取るのは成果物ではなく、処理が終わったという報告と、その過程の記録です。

7つの軸で並べると、どこが動いてどこが変わらないのかが見えてきます。

比較軸 生成AI AIエージェント
人が渡すもの 個別の指示(プロンプト) 達成したい目標と守らせる制約
返ってくるもの 文章・画像・コードなどの出力 処理が終わった結果と実行の記録
外部システムの操作 原則として行わない 与えた権限の範囲でAPIやSaaSを操作する
やり取りの回数 1往復が基本 完了と判断するまで推論と実行を繰り返す
完了の判定 人が出力を見て決める AI側が判定し、要所で人が承認する
人の関わり方 毎回指示を出し、出力を確認する 権限と停止条件を先に決め、節目を承認する
うまくいかないとき 人が指示を書き直す 結果を見て自分で手順を組み替える

表を見て気づくのは、変わっているのが能力の高さではなく、仕事の受け渡し方だという点です。生成AIは道具として手元にあり、AIエージェントは担当者として業務の内側に入ります。導入の難しさが変わるのも、この立ち位置の差から来ています。

立ち位置が違うため、評価の仕方も揃いません。生成AIは出力の質で判断できますが、AIエージェントは処理が最後まで通ったか、途中で止まるべき場面で止まったかまで見る必要があります。同じ物差しで比べようとすると、どちらの良さも測れないまま結論が出ないという状態に陥ります。

もう一つ、両者が競合しているわけではないことも押さえておきたいところです。多くのAIエージェントは、判断の部分に生成AIを組み込んでいます。並べて比べる目的は、置き換える対象を探すことではなく、任せられる範囲の境目を知ることにあります。

日本企業の現在地も、この境目を意識させます。総務省の令和8年版情報通信白書によると、2025年度調査で生成AIの活用方針を定めていると答えた日本企業は68.9%で、前回の49.7%から大きく伸びました。何らかの業務で生成AIを使っている割合は86.4%です。使うことは急速に広がりました。次の問いは、どこまでを任せるかに移っています。

言葉の定義が揺れたままでは、比較表の軸すら揃いません。malnaはAI導入・コンサルティングおよびIT・DX分野で累計40社以上の導入を支援し、戦略立案から実行、内製化までを伴走しています。何をどちらで進めるべきか整理する段階からでも、お問い合わせからご相談いただけます。

公式に定義されている内容と一般的な説明を分けて読む

生成AIとAIエージェントには、日本の公的文書に定義があります。総務省と経済産業省が令和8年3月31日に公表した「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」の第1部が、関連する用語を整理した箇所です。記事や製品資料の説明とは粒度が違うため、社内文書を書くならどちらを引いているのかを分けておきましょう。

生成AIの公式定義は何を生成できるかで決まる

ガイドラインは生成AIを「文章、画像、プログラム等を生成できる AI モデルにもとづく AI の総称を指す」と定義しています。出力できるものの種類で線を引く書き方で、自律性や動き方には触れていません。

つまり公式定義における生成AIは、成果物の性質を指す言葉です。指示を受けて答える形で使われることが多いという実態はありますが、それは定義の中身ではなく現在の使われ方の説明にあたります。この区別を持っておくと、生成AIは受け身のAIだという言い方が理解のための比喩だと分かります。同じ生成AIでも、外部の情報を検索して参照する仕組みを足せば振る舞いは変わりますが、定義そのものは変わりません。

AIエージェントの公式定義は目標に向けて自ら行動するかで決まる

同じガイドラインは、AIエージェントを「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動する AI システムとする」と定義しています。第1.2版で新しく加わった定義で、脚注には自律について「高度な自律状態だけを指しているのではなく、ある程度の自律性を持つものも含む」という補足が付いています。全部を任せられる状態だけがエージェントではない、という含みです。

注目したいのは、モデルではなくシステムとして定義されている点です。ガイドラインはAIシステムを「活用の過程を通じて様々なレベルの自律性をもって動作し学習する機能を有するソフトウェアを要素として含むシステム」としており、モデルの外側まで含む言葉として使っています。

参考として併記されたISO/IEC 22989:2022の定義も「自動化された主体であり、環境を感知して応答し、自らの目標を達成するために行動を取るもの」となっており、感知と行動が要件に入っています。生成AIは出力の種類で、AIエージェントは動き方で定義されているという非対称が、公式文書にそのまま表れます。

二つは別の軸で定義されているため対立概念ではない

定義の軸が違うため、生成AIかAIエージェントかという二者択一の問いは、公式定義の上では成り立ちません。文章を生成できるモデルを使いながら、目標に向けて環境を感知して行動するシステムは、両方の定義に当てはまります。

一般の記事に出てくる応答型と行動型という対比は、初めて聞く人に違いをつかませるための説明です。理解の入口としては有効ですが、要件定義の根拠には使えません。社内の用語集には公式定義を置き、対比の説明は補足として添える。この形が無理のない収め方でしょう。

なお、分類や予測を得意とする従来型のAIと生成AIの違いは、別の論点です。この記事で扱っているのは生成AIとAIエージェントの間の線引きに限られます。従来型AIとの対比から確認したい場合は、生成AIそのものを解説した記事をあわせてご覧ください。

周辺の言葉がまだ固まっていないことも、押さえておきたい事情です。複数のエージェントが連携する形態を指すエージェンティックAIについて、ガイドラインは脚注で「複数の AI エージェントにより自律的に意思決定を下しアクションを起こす目標主導型の AI システム」と触れるにとどめています。更新内容を示した資料には、本年度は脚注補足に留め、次年度以降に定義とリスクを追記していく想定だと明記されています。定まっていない言葉を断定して使わないほうが、後の手戻りは少なくなります。

参考:AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編

参考:AI事業者ガイドラインの令和7年度更新内容

AIエージェントは生成AIを内側で部品として使う

AIエージェントと生成AIは、並列に置かれた二つの選択肢ではなく、入れ子の関係にあります。エージェントという仕組みの内側に、判断を担う部品として生成AIが置かれる構造です。この関係が見えていないと、生成AIを導入したのだからエージェントも入っているはずだ、という取り違えが起こります。

生成AIはエージェントの判断部分を受け持つ

エージェントの内側で生成AIが担うのは、次に何をするかを決める部分です。ガイドラインの別添は、AIエージェントの便益として「単なる指示実行にとどまらず、複数のシステムやアプリケーションと連携し、状況に応じた判断や最適化を行うことで、従来は人手に依存していた調整・分析・意思決定を自動化することが可能となる」と記しています。判断と連携が組み合わさって、はじめて実行まで届きます。

別添に載っているサービス例も、この構造をそのまま示しています。エージェント作成サービスの例では、利用者が業務プロセスに沿ったワークフローを組み、そのワークフローに従って自律的に動くエージェントを作る形が説明されており、そこで使われるモデルは別の事業者が開発してAPIで呼び出されるものだと書かれています。判断を担うモデルと、それを動かす仕組みは、提供元からして別物です。製品を比べるときも、この二階建てのどちらの話をしているのかを確かめる必要があります。

生成AIを使っていればエージェントとは限らない

内側に生成AIがあることは、エージェントである条件を満たしません。OpenAIが公開しているエージェント構築のガイドは、エージェントをユーザーに代わって自律的にタスクを達成するシステムと定めたうえで、LLMを組み込んでいてもワークフローの実行制御をLLMに任せていないものはエージェントではないと明言しています。単純なチャットボット、1往復で終わる利用、感情分類のような使い方が例に挙がっています。境目はモデルが賢いかどうかではなく、進め方を決める役をモデルが握っているかどうかにあります。

線引きはベンダーによっても揺れます。Anthropicは、あらかじめ決めたコードの経路でLLMとツールを動かすものをワークフロー、LLMが自分の処理とツールの使い方を動的に決めるものをエージェントと呼び分け、その両方をまとめてエージェント的なシステムとして扱っています。この整理に照らすと、ガイドラインが例示したワークフローに従って自律的に動作するものは、ワークフロー寄りに分類される余地があります。

同じ製品が、参照する文書によって呼び名を変える。この状況を前提にすると、社内で交わすべき言葉は名称ではありません。手順を誰が決めるのか、どこまで自分で決め直せるのかを文章で書き出して共有したほうが、認識のずれは起きにくくなります。分類の細かい体系よりも、自社の業務に当てはめた一文のほうが実務では役に立ちます。

入力から結果までの流れと人の関わり方の違い

生成AIとAIエージェントの流れの違いは、往復の回数と、往復の間に人が挟まるかどうかに現れます。同じ依頼をしても、人の手が必要になる回数が変わります。この回数の差が、任せられる業務量の差にそのまま跳ね返ります。ここからは、指示を渡してから結果を受け取るまでの道筋を並べて確かめていきます。

生成AIは1往復で終わり、次の一手は人が決める

生成AIの処理は、指示を受けて出力を返したところで終わります。人が出力を読み、使えるかどうかを判断し、必要なら指示を書き直します。次の工程へ渡すのも人の仕事で、システムへの入力や送信は手元に残ったままです。

この形には、途中で暴走しないという安心感があります。出力を確認しないまま先へ進むことがなく、間違いがあれば気づける位置に人が立っているためです。裏を返せば、工程の数だけ人の手が要ります。10件の処理には10回の確認が発生し、件数が増えるほど人が接着剤として消耗していきます。

AIエージェントは完了と判断するまで往復を続ける

AIエージェントは、目標を受け取ったあと、手順の分解、ツールの実行、結果の確認、計画の作り直しを繰り返します。人の指示を待つのは、あらかじめ承認を挟むと決めた地点だけです。それ以外の判断は、進みながらAI側で埋めていきます。

この繰り返しがあるおかげで、途中でつまずいても立て直せます。参照した資料に必要な情報がなければ別の場所を探し、条件に合う候補が見つからなければ条件の解釈をやり直します。ガイドラインの別添には、希望条件から旅行先とフライトを提案し、社内外のシステムと連携して空席確認から便の選択、予約確定までを一連で実行するエージェント型サービスの例が挙げられています。従来のFAQ応答型や予約サポート型とは異なる特徴として、この一連の実行が示されています。

同じ依頼を渡したときに変わるのは人が間に入る回数

先月の問い合わせを分類し、増えている論点を関係者へ共有する、という依頼で考えてみます。生成AIに任せられるのは、貼り付けたデータの分類と共有文の下書きまでです。データの抽出、集計結果の確認、宛先の設定、送信はすべて人が持ちます。

AIエージェントの場合、権限を与えた問い合わせ管理システムを自分で参照し、分類し、資料の形に整え、宛先を選んで下書きまで用意します。人が触るのは、送信してよいかを判断する一点に絞られます。成果物の中身が劇的に変わるわけではありません。変わるのは、成果物にたどり着くまでに人が何回呼び出されるかです。ここを数えてみると、自社の業務にエージェントを当てる価値があるかどうかが見えてきます。

人の役割が指示を出す側から承認する側に移る

関わり方の変化は、責任の置き場所にも及びます。生成AIでは、出力を採用した人がその内容に責任を持ちます。AIエージェントでは実行そのものをAIが担うため、どこで人が止めるかを事前に決めておかないと、責任の所在があいまいなまま運用が始まってしまいます。

ガイドラインの別添は、AI利用者に向けた具体的手法として、出力によって重大な影響または被害が生じ得る場合に人間の判断を介在させる仕組みに基づいて判断することを挙げています。介在の要否を決める判断基準の例も並んでいます。影響を受ける人の権利や利益の性質、出力の信頼性の程度、判断に必要な時間的猶予、判断対象の要保護性など、業務の性格から考える項目です。任せる範囲を広げる作業は、止める地点を決める作業と同じ重さを持つと考えておくとよいでしょう。

現場で効くのは、承認を挟む地点を業務の言葉で書いておくことです。金額が一定額を超えたとき、社外へ出す文面を作ったとき、既存のデータを書き換えるとき。抽象的な基準よりも、担当者がその場で判断できる粒度まで落としたほうが運用に乗ります。

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どこまで生成AIで足り、どこからエージェントが必要か

判断の分岐が少なく、1往復で成果物が固まる仕事は生成AIで足ります。分岐が多く、複数のシステムを往復し、件数も多い仕事になると、AIエージェントを検討する意味が出てきます。判断の材料は業務の側にあり、製品カタログを見比べても答えは出ません。どこに線が引けるのかを、業務の性質から順に確かめていきます。

生成AIで足りる仕事の見分け方

生成AIで足りるのは、成果物の良否を人がその場で判断できる仕事です。参照する材料が手元にあり、出力を受け取ったあとの工程が短いものが向いています。逆に、出力の先に長い手続きが続く業務は、生成AIだけでは途中で止まります。

具体的には、議事録の要約、メールや案内文の作成、提案の骨子づくり、コードの下書き、翻訳の下ごしらえが該当します。件数が少なく、内容が毎回違うものほど、エージェントを組む労力は回収できません。担当者がツールを開いて指示を出すほうが早く、確実です。判断の質を上げたいなら、仕組みを組むより指示の書き方を整える投資のほうが効きます。

AIエージェントが必要になる仕事の見分け方

OpenAIのガイドは、エージェント化を検討すべき業務の条件を3つ挙げています。微妙な判断や例外、文脈に左右される決定が絡むもの。ルールが増えすぎて、更新の費用も間違いのリスクも高くなっているもの。そして、自然言語の解釈や文書からの読み取りに強く依存するもの。これらを明確に満たさない場合は、決定論的な仕組みで足りることもあると付け加えられています。

実務側の条件も重ねて見ておきたいところです。複数のシステムを行き来する必要があるか。件数が多く、人が張り付けない量になっているか。手順が毎回少しずつ違い、固定の自動化では取りこぼすか。この3つが揃うと、往復を自分で回す仕組みの価値が出ます。逆に1つしか当てはまらない場合は、既存の業務システムの設定変更で解決することも珍しくありません。

判断に迷ったときは軽い順に当てる

迷ったときは、軽い順に当てていくと外しにくくなります。まず生成AIで試し、手順が完全に固定なら既存のワークフロー自動化を検討し、分岐が残って件数も多い場合にエージェントへ進む。この順序です。

業務の例 妥当な選択 理由
議事録の要約と共有文の作成 生成AI 出力を人がその場で確認でき、1往復で終わる
定型の申請書からの転記 既存の自動化 手順が固定で、判断の分岐がない
問い合わせの一次対応と振り分け AIエージェント 件数が多く、内容ごとに参照先と判断が変わる
取引先のセキュリティ確認 AIエージェント ルールが膨れ、更新の負荷が高くなっている
新商品のコピー案づくり 生成AI 案の良否は人が決め、実行の工程がない
経費申請の内容チェック AIエージェント 例外の判断が絡み、規程の解釈が必要になる

軽い順に当てる進め方の利点は、投資の回収時期が早いことです。生成AIで足りる業務をエージェントに載せ替えても、成果は変わらないまま運用の手間だけが増えます。どこで足りなくなったかを記録しておけば、次の一段に進む根拠になります。

対象業務の切り出しと、どちらで進めるかの判断は、外から見ると単純でも社内では止まりやすい工程です。malnaは戦略立案から実行、内製化までを一貫して伴走し、業務の棚卸しから優先順位づけまでを一緒に進めています。判断材料を整えたい段階でも、お問い合わせからご相談いただけます。

参考:A practical guide to building agents(OpenAI)

混同すると起きる失敗と製品を見極める観点

生成AIとAIエージェントの混同は、期待の取り違え、過剰な設計、要件が固まらないという3つの形で表れます。どれも技術の問題ではなく、言葉の問題から始まります。裏返せば、選定の前に言葉をそろえるだけで避けられる失敗でもあります。起きやすい3つの型と、製品資料を読むときの観点を順に見ていきます。

混同が招く3つの失敗

一つ目は、期待の取り違えです。自動で回る前提で稟議を通したのに、入ったのは指示を出すたびに答えるツールだった、という食い違いが起こります。導入後も人の作業が減らず、効果を説明できないまま利用が細っていきます。効果測定の指標を工数削減で置いていた場合、数字が動かないまま次年度の予算審査を迎えることになります。

二つ目は、過剰な設計です。1往復で足りる業務にエージェントを組むと、連携先の権限管理、動作の評価、ログの確認といった運用がまとめて発生します。得られる時間の短縮より、管理の手間が上回る状態になりがちです。作った本人が異動すると誰も触れなくなる、という詰まり方もあります。

三つ目は、要件が固まらないことです。社内で言葉の意味がずれていると、比較表の軸が揃わず、候補製品の優劣を判定できません。検討が長引き、担当者が入れ替わって振り出しに戻る例も見かけます。用語をそろえる作業は、選定の前ではなく選定の一部だと考えたほうが実態に合っています。

製品の実態を見極める5つの観点

製品名で判断せず、資料と検証で確かめられる観点を持っておくと、名称の揺れに振り回されません。特定の製品を名指しして評価する必要はなく、次の5点を各社に同じ形で尋ねれば足ります。答えの粒度がそろうと、比較表の空欄も見えてきます。

  • 目標だけを渡して動くのか、手順を人が毎回指定する必要があるのか
  • 外部システムへの書き込みまで含むのか、読み取りと出力にとどまるのか
  • 想定と違う結果が出たとき、自分で手順を組み替えるのか、止まって人を待つのか
  • 完了の判定を誰がするのか、どの節目で人の承認が入るのか
  • 権限の範囲と操作ログを、自社の管理者が設定・確認できるのか

判定の物差しとして使いやすいのが、ガイドラインが例示した予約まで実行するエージェントです。空席の確認から便の選択、予約の確定までが一連でつながるかどうか。読み取りと出力で止まるか、実行まで届くかという一点で、資料の見え方が変わります。答えが曖昧な項目は、実態がそこまで届いていない可能性を含みます。デモを見る際も、成果物の見栄えではなく、誰が次の手順を決めたのかに目を向けてください。

導入の難易度・コスト・リスクの違い

生成AIとAIエージェントでは、始めるまでに決めることの量、費用の出方、備えるべきリスクの種類が変わります。差分を先に押さえておくと、見積もりの読み方も変わります。生成AIで整えたルールや体制がそのまま使えると考えていると、稼働の直前でつまずきます。3つの観点で、何がどう増えるのかを確かめておきましょう。

項目 生成AI AIエージェント
始めるまでに決めること 使うツール、入力してよい情報、確認の手順 連携先と権限、停止条件、評価の方法、ログの取り方
費用の出方 1往復分の推論が積み上がる 1件あたり複数回の推論とツール呼び出しが発生する
主なリスク 誤った出力、入力情報の漏えい 意図しない実行、連携経路を狙った攻撃、内部データの外部送信
見直しの頻度 指示の書き方とルールの更新 権限、停止条件、参照先、評価の継続的な調整

始めるまでの難易度

生成AIは、契約とアカウントの発行、入力してよい情報の線引き、出力を確認する手順を決めれば動き始めます。決めることの多くは運用ルールの側にあり、技術的な設計は限られます。既存の業務フローを組み替えずに、手元の作業から使い始められる点も入口を低くしています。

AIエージェントでは、そこに設計が加わります。どのシステムにつなぐのか、どこまでの権限を渡すのか、どの条件で止めるのか、うまく動いたかを何で測るのか。ガイドラインの別添には具体的な手法として、ホワイトリスト方式による連携ツールやシステムの制限と、人間の判断を介在させる仕組みの構築が挙げられています。介在させる対象は重要度に応じて整理し、適切に選び出すことが重要だという補足も添えられました。決める順番を間違えると、権限だけ広く渡した状態で本番に出てしまいます。

この設計を担える体制があるかどうかが、実際の分かれ目になります。情報通信白書の2025年度調査では、社員が生成AIを使ったアプリやAIエージェントを開発できる技術環境があると答えた日本企業は15.3%で、米国22.1%、ドイツ27.4%、中国31.1%を下回りました。日本国内では大企業16.6%、中小企業11.4%という差もついています。生成AIの利用が86.4%まで広がった一方で、組み立てる側の環境は10社に1〜2社にとどまっている構図です。

コストの出方

費用の読み方も変わります。生成AIは1往復分の推論が積み上がる形なので、利用人数と頻度から見積もりが立てられます。AIエージェントは1件の処理で推論とツール呼び出しを何度も行うため、同じ料金体系でも1件あたりの単価が上がります

Anthropicはエージェント的なシステムについて、待ち時間と費用を差し出して処理の質を上げるものだと整理し、単純な方法で足りるならそちらを優先すべきだとしています。件数の多い業務に載せる場合は、1件あたりの推論回数を試算しておくと、想定外の請求を避けられます。試算の前に、対象業務の月間件数を確かめておくと精度が上がります。

リスクの差分

リスクは、増えるというより種類が変わります。ガイドラインの別添は、AIエージェントについて自律的な動作の中で人間の意図しない商品の注文やファイル削除といった動作を行う可能性を挙げています。生成AIでは誤った出力にとどまるものが、実行を伴う仕組みでは結果として残る。ここが決定的な差です。

セキュリティ面では、入力経路と外部連携が増えることで狙われる面が広がり、データ汚染や悪意あるプロンプトによる攻撃のリスクが高まると記されています。脆弱性を突かれて挙動が不正に操作され、内部データが意図せず外部へ送信される可能性についても記述があります。構成が複雑になるためメンテナンスやトラブルシューティングの難易度が上がる場合があること、自律性が高まると人間による監視のみでは高速なAI間の相互作用に対応しきれない場合が想定されることも、脚注を含めて示されています。

運用側の備えとして、更新内容の資料では、自律性を持って行動する仕組みだからこそ定期的な操作履歴の確認と報告が重要になる旨が追記事項として挙げられています。生成AIでは入力と出力を見れば足りたところが、実行を伴う仕組みでは何をしたかの記録まで追う必要が出てきます。監視の対象が一段増えると理解しておくと、運用体制の見積もりを外しにくくなります。

対策の設計そのものは、権限設計や評価の話として別に整理すべき論点です。ここで押さえておきたいのは、生成AIの導入で作ったルールがそのままでは足りないという点です。入力してよい情報を決めるルールに加えて、何を実行させてよいかを決めるルールが要ります。既存のガイドラインを開き、実行に関する条項が一つもないなら、そこが着手点になります。

参考:AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添(付属資料)

参考:令和8年版情報通信白書 企業におけるAI利用の現状

参考:Building Effective AI Agents(Anthropic)

よくある質問

線引きの話をすると、その先の進め方についての質問が続きます。どちらから手をつけるか、既存のツールは無駄になるのか、周辺の用語はどう扱うか。検討の初期に寄せられることの多いものを、実務の観点から整理しました。

生成AIとAIエージェントはどちらを先に導入すべきですか

生成AIから始めるほうが、判断材料が早く揃います。どの業務で出力が使えて、どこで人の手が残るかが見えてくると、エージェントを当てる範囲を絞り込めます。エージェントは権限や停止条件の設計が前提になるため、業務の実態を掴む前に着手すると設計が空回りします。

エージェンティックAIはAIエージェントと何が違いますか

AI事業者ガイドライン第1.2版では、AIエージェントより包括的で進化的な概念として脚注で触れられており、複数のAIエージェントが自律的に意思決定して行動する目標主導型のAIシステムと説明されています。ただし本文の定義には至っておらず、次年度以降に定義とリスクを追記する想定と示されています。社内文書で断定して使うのは避けたほうが無難です。

AIエージェントを導入すると生成AIツールは不要になりますか

不要にはなりません。文章や資料を人が作る場面は残り、その用途では生成AIのほうが手早く済みます。エージェントは内側で生成AIを使う仕組みでもあるため、置き換えの関係ではなく、任せる範囲が違う道具として並べて使う形が現実的です。

社内で言葉の定義がずれています。どう決めればよいですか

公的文書の定義を土台に置き、自社の呼び方を1行で足す形が扱いやすくなります。AI事業者ガイドラインの定義を用語集に引用し、その下に自社で何を指すかを補記します。あわせて、手順を誰が決めるのか、どこまで実行させるのかを書き添えておくと、製品比較の軸としても使えます。

まとめ

AIエージェントと生成AIの違いは、出力を返して終わるか、目標に向けて手順を決めて実行まで進むかにあります。AI事業者ガイドライン第1.2版では、生成AIが生成できる出力の種類で定義され、AIエージェントは目標達成のために環境を感知して自律的に行動するAIシステムとして定義されており、そもそも別の軸で言葉が立てられています。

使い分けの判断は、業務の性質から入ると迷いません。1往復で成果物が固まるなら生成AI、手順が完全に固定なら既存の自動化、分岐が残って件数も多いならAIエージェント。この順序で当てていけば、過剰な設計も期待の取り違えも避けられます。

次の一手として、対象業務を1つ選び、そこで人が何回呼び出されているかを数えてみてください。回数が少なければ生成AIで足り、多ければエージェントを検討する根拠になります。数え方や線の引き方から整理したいときは、malnaへご相談ください。戦略立案から実行、内製化までを一貫して伴走します。

AIを使える人材が社内にいない場合

どちらを使うかの基準はわかった。でも、自社の業務に当てはめて線を引く人が社内にいない。そんな状態ではないでしょうか。

用語をそろえるところまでは社内で進められますが、業務ごとの線引きは、同じ検討を通った経験のある人がいると早く決まります。malnaでは、AI活用の実務経験を持つ人材をご紹介するAIタレント名鑑を運営しています。採用ではなく業務委託として、週1日から相談いただけます。

関連記事:生成AIとは?仕組み・活用事例・リスク対策まで徹底解説【2025年版】

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